制度の概要

株主代表訴訟マニュアル

1

制度の概要

集合写真
株主代表訴訟とは、どのような制度か。

株主代表訴訟の制度趣旨

株主代表訴訟とは、株式会社が発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(会社法第423条1項に規定する役員等)若しくは清算人(以下、本マニュアルにおいて「取締役等」という。)の株式会社に対する責任を追及する訴えの提起を怠っている場合に個々の株主が自ら株式会社のために取締役等の責任を追及する訴訟のことをいいます。
取締役等の株式会社に対する責任は、本来的には株式会社自身が追及すべきものです。しかし、取締役間の同僚意識等により株式会社による積極的な役員等の責任追及が期待し得ない場合があり(このことを「提訴懈怠可能性」といいます。)、その結果、株式会社の利益が害されひいては株主の利益が害されるおそれがあります。
そこで法は、株主代表訴訟の制度を設け、個々の株主が、株式会社のために取締役等の責任を追及する訴えを提起できるものとしています。

株主代表訴訟の対象

株主代表訴訟によってなしうる訴えは次のとおりですが(会社法847条1項)、株主代表訴訟の中心を占めるのは取締役の責任を追及する訴えです。
発起人・設立時取締役・設立時監査役、役員等(取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人)・清算人の責任を追及する訴え(会社法423条1項等
仮装払込(会社法102条の2第1項、同法212条第1項、同法285条1項)
違法な利益供与がなされた場合に、利益供与を受けた者に対し利益の返還を求める訴え(会社法120条3項)
不公正価額での株式・新株予約権引受けの場合に、出資者に対し差額支払い若しくは給付を求める訴え(会社法213条の2第1項、同法286条の2第1項)

手続

原告適格(提訴権者)
公開会社の場合
公開株式会社(会社法1条5号)の場合、定款で短縮しない限り6箇月前から引き続き株式を有する株主であることが株式会社に対する提訴請求や代表訴訟提起の要件とされています(会社法847条1項本文)。
非公開会社の場合
非公開株式会社(公開株式会社以外の株式会社)の場合、保有期間の要件はありません(会社法847条2項)。
株式交換・株式移転等と株主代表訴訟の原告適格
原告として株主代表訴訟を提訴した株主が、株式交換や株式移転等により当該株式会社の株主でなくなった場合でも、当該株式会社の完全親株式会社の株主となるなど一定の場合には、当該株主は株主代表訴訟の原告適格を失いません(会社法851条)。
提訴前の手続
株主が株式会社に対し役員等の責任を追及する訴えを提起することを請求し、 原則としてその請求の日から60日以内に株式会社が訴えを提起しないときにはじめて株主代表訴訟を提起することができます(会社法847条3項)。
株式会社が株主から提訴請求を受けたにもかかわらず、役員に対する訴えを提起しない場合には、株式会社は不提訴理由を株主等へ通知しなければなりません(会社法847条4項)。
例外として、回復できない損害が株式会社に生じるおそれがあるときは、株主は直ちに株主代表訴訟を提起できます(会社法847条5項)。
請求できない場合
株主の請求が当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に   損害を加えることを目的とする場合は、株主代表訴訟を提起できません(会社法847条1項ただし書、同条5項ただし書)。
管轄裁判所
株主代表訴訟は、株式会社の本店所在地の地方裁判所に提起しなければなりま せん(会社法848条)。
手数料の納付
一般に、訴えを提起するには、訴訟の目的の価額に応じて所定の手数料を裁判所に納めなければなりません。法は、株主代表訴訟の提起を容易にするため、株主代表訴訟を提起するための手数料については、当該訴訟において役員等に請求しようとする額を基準としないで算定することとし、現在、一律13,000円としています(会社法847条の4第1項、民事訴訟費用等に関する法律第4条2項前段、同法別表第一の1)。
訴訟告知
株主は、株主代表訴訟を提起したときは、遅滞なく株式会社に対し訴訟告知をしなければなりません(会社法849条4項)
補助参加の利益(民事訴訟法42条)がなくても株主や株式会社が株主代表訴訟に補助参加できることを明らかにするなどして上記の問題を立法的に解決しています。
判決内容と株主の権利、責任
(a)
勝訴株主の権利
原告株主は、株主代表訴訟に勝訴しても、役員等に対して株式会社に支払うことを要求できるだけであって、自分に支払うことを要求することはできません。しかし、当該株主は株主代表訴訟をするために要した必要費用(調査費用等)及び弁護士報酬のうち相当額を株式会社に請求することができます(会社法852条1項)。
(b)
敗訴株主の責任
株主代表訴訟に敗訴した株主は、悪意があった場合に限って株式会社に対して損害賠償の責任を負うこととなります(会社法852条2項)。
馴合い訴訟の防止
原告株主と被告取締役との間で馴合い訴訟が行われる危険があるため、その弊 害防止の手段として、①他の株主又は株式会社による訴訟参加(会社法849条1項)と②再審の訴え(会社法853条)が認められています。