取締役の責任-違法な剰余金分配等

株主代表訴訟マニュアル

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取締役の責任-違法な剰余金分配等

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違法な剰余金分配等を行った取締役は、株式会社に対してどのような責任を負うか。
違法な剰余金分配等につき取締役に過失がなかった場合でも、当該取締役は責任を負うか。

違法な剰余金分配を行った取締役の責任

株式会社は、会社法461条所定の分配可能額の範囲内でなければ剰余金の配当及び 自己株式の取得(以下剰余金の分配といいます)をすることができないのが原則です。そして、分配可能額を超えて剰余金の分配を受けた株主は、株式会社に対してこれを返還しなければなりません(不当利得返還義務。民法704条、同法703条)。
しかし、多数の株主に対し返還請求の訴えを提起することは、訴訟技術的にも費用の面からも困難です。そのため、結局株式会社が違法な剰余金分配額に相当する損失を被ることになってしまいます。
そこで、次に述べるとおり、取締役は、違法な剰余金分配が行われた場合に、株式会社に対して一定の支払義務を負うこととされています。

違法分配額の支払義務

株式会社が、分配可能額を超えて剰余金の分配をした場合には、その行為に関する職務を行った業務執行者に該当する取締役、及び株主総会や取締役会に剰余金分配議案を提案した取締役(会社法462条1項各号に定める一定の取締役)は、分配額の支払義務を負います(会社法462条1項)。
当該職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した取締役は、支払義務を免れます(会社法462条2項)。
平成17年改正前商法では、違法配当を行った取締役の責任は無過失責任とされていました。しかし、これについては経済界等から厳格に過ぎるとの批判を寄せられていたため、会社法は、違法分配額の支払義務を過失責任化したのです。
総株主の同意によっても、分配可能額を超える部分についての支払義務を免除することはできません(会社法462条3項)
責任を果たした取締役が株主に求償する場合は、善意の株主は当該取締役に対して求償義務を負いません(会社法463条1項)。

期末の欠損填補責任

分配可能額規制を守っていた場合でも、期末に欠損が生じたような場合には、業務執行者に該当する取締役は、株式会社に対し連帯してその欠損を填補する義務を負います(会社法465条1項本文)。
当該職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した取締役は、義務を免れます(会社法465条1項ただし書)。
この義務は、総株主の同意がなければ免除できません(会社法465条2項)。