平成26年改正会社法の制定と株主代表訴訟

株主代表訴訟マニュアル

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平成26年改正会社法の制定と株主代表訴訟

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平成26年改正会社法では、株主代表訴訟制度に関して、どのような改正が行われたのか。

平成26年改正会社法の制定

会社法は、平成17年に「会社法制の現代化」として、それまでの改正を含めて規整を大幅に統合・整理し、片仮名・文語体で表記されている規定を平仮名・口語体としたうえで再編成されました((平成17年法86号)同年7月26日に公布)。
そして、平成26年6月20日、第186回国会(常会)において、「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号。)が成立し、同月27日に公布されました。
この改正は、コーポレート・ガバナンスの強化及び親子会社に関する規律等の整備に関する事項を中心に、会社法制全体にわたって多数の項目の改正を行ったものであり、会社実務に大きな影響を与えると考えられています。

株主代表訴訟制度の改正点

平成26年改正会社法では、株主代表訴訟制度に関して、次の事項を中心として、 様々な改正が行われています。
多重代表訴訟制度の創設
(ア)
多重代表訴訟制度とは、企業グループの頂点に位置する株式会社(最終完全親会社等)の株主が、その子会社(孫会社も含みます。)の取締役等の責任について代表訴訟を提起することができる制度をいいます(第847条の3)。
(イ)
平成26年改正会社法の前は、株式会社の株主は、当該株式会社の子会社の発起人等に対して代表訴訟を提起することができませんでした。
しかし、平成9年の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の改正により持株会社が解禁され、また平成11年の商法改正により株式交換・株式移転の制度が創設されたことにより、持株会社形態や完全親子会社関係にある企業グループが多数形成されるようになりました。
他方で、株式会社の発起人等が株式会社に対して責任を負っている場合でも、当該発起人等と当該株式会社の完全親会社の取締役との間の人的関係や仲間意識から、当該完全親会社が当該株式会社の株主として代表訴訟を提起する等して当該発起人等の責任を追及することを懈怠するおそれが類型的かつ構造的に存在します。
そこで、平成26年改正会社法では、このような地位におかれる完全親会社の株主を保護するために、いわゆる多重代表訴訟制度を創設し、完全親会社の株主が訴えによりその完全子会社の発起人等の損害賠償責任等を追及することができるとしました。
旧株主による責任追及等の訴えの制度の創設
(ア)
旧株主による責任追及等の訴えの制度とは、株式会社の株式交換もしくは株式移転または株式会社が吸収合併消滅会社となる吸収合併の効力が生じた日において当該株式会社の株主であった者(旧株主)は、当該株式会社の株主でなくなった場合であっても、一定の場合には、当該株式会社または吸収合併存続会社(これらを併せて「株式交換等完全子会社」と定義しています。)に対し、責任追及等の訴えの提起を請求することができることとし、株式交換等完全子会社が当該訴えを提起しないときは、当該旧株主らが当該訴えを提起することができることとするものです(法第847条の2)。
(イ)
平成26年改正会社法制定前は、株主が代表訴訟提起前に株式交換等が行われたことにより株式を失った場合、当該元株主は原則として代表訴訟を提起することはできないと解されていました。
しかし、このような株主は、当該株式交換等が行われなければ、一定の要件の下、当該株式会社の取締役等の責任等について代表訴訟を提起し得たのであり、自らの意思で株主たる地位を失ったわけではありません。また、株式交換等の効力の発生が代表訴訟の提起前に生じたか、提起後に生じたによって代表訴訟による責任追及の可否を区別するのは相当ではありません。
そこで、平成26年改正会社法は、株式会社の株主が、株式交換等によって、当該株式会社の株主等でなくなった場合であっても、その株式交換等によって、当該株式会社等の完全親会社の株式を取得したときは、当該株主(旧株主)は、元々株式を保有していた株式会社の取締役等その他一定の者に対し、当該株式交換等が効力を生ずる前に発生していた責任を追及する訴えを提起することができるとしました。
特定責任の一部免除に係る特則
利益供与の禁止、経過措置等
利益供与の禁止における「株主の権利の行使」(改正前の第120条第1項)には、責任追及等の訴え、すなわち、代表訴訟の提起も含まれます。
平成26年改正法では、旧株主による責任追及等の訴え(第847条の2)および最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え(第847条の3)の各制度を創設することにより、適格旧株主または最終完全親会社等の株主は、当該株式会社の株主でなくても、当該株式会社の取締役等に対して責任追及等の訴えを提起することができることとしています。
その結果、当該株式会社の取締役等が、適格旧株主または最終完全親会社等の株主による責任追及等の訴えが提起されないようにするために、当該責任追及等の訴えの提起等に関して、利益の供与をするおそれがあること、また、株式会社が当該責任追及等の訴えの提起等に関して利益の供与をした場合に、当該権利の行使の適正が害されるおそれがあることは、株式会社が株主による責任追及等の訴えの提起に関し、財産上の利益の供与をした場合と同様です。
そこで、第120条第1項を改正し、株式会社は、適格旧株主または最終完全親会社等の株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならないとした。
同様に、970条第1項を改正し、株式会社の取締役等が、適格旧株主または最終完全親会社等の株主の権利の行使に関し、財産上の利益を供与する行為についても、利益供与罪の対象とすることとしました。
また、利益供与罪と同様の理由から第970条第3項を改正し、適格旧株主または最終完全親会社等の株主の権利の行使に関し、財産上の利益を供与することを要求した者を同項の規定による処罰の対象に加えることとしています。