居住用定期建物賃貸借参考モデル契約

定期借家実務マニュアル

第3

定期借家参考モデル契約

集合写真

居住用定期建物賃貸借参考モデル契約








(注)
(イ)
従来からの普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約は、 併存しますので、 その違いを明確にするため、 契約書のタイトルも「定期建物賃貸借契約」 とする方が良いと思われます。
(ロ)
契約の更新がないというのが、 定期建物賃貸借契約の最大の特徴ですから、 契約書では必ず明記する必要があります。 また、 再契約をする場合には、 改めて再度、契約内容の通知、 契約書作成を行う必要があります。
なお、 旧建設省の定期賃貸住宅標準契約書 (以下 「住宅標準契約書」 といいます。) では、 再契約に関する条項 (第14条)を設けていますが、 ここで注意すべきことは、 賃借人に再契約に対する過度の期待を抱かせないということです。
再契約に対する過度の期待を抱かせることは、 かえって、 後日、 再契約できないことを理由としたトラブルを惹き起こすことになりかねません。 このような誤解に基づくトラブルを少なくするため、 再契約に関する条項を置かず、 契約終了の際の明渡義務の猶予、 原状回復義務の猶予や敷金、 保証金に関する取り扱い等については、 賃貸人賃借人間で後日再契約が現実化した時点で協議することにしておくというのも一つの方策かと思われます。
(ハ)
借地借家法第38条第2項により、 定期建物賃貸借契約をしようとするときは、 賃貸人は予め賃借人に対し、 契約の更新がなく、 期間満了により賃貸借が終了することを記載した書面を交付して、 説明しなければならないことになっています。 この手順を履践したことを契約書上でも確認した条項です。
(ニ)
賃貸借期間は必ず定める必要があります。 期間は当事者間で自由に定めることができ、 1年未満でも20年以上でも構いません。
(ホ)
定期建物賃貸借の場合、 賃料の改定に関する特約は有効です。

(例)
月額賃料=
{(従前の賃料の年額-従前の賃料決定時の公租公課の年額)×変動率+賃料改定時の公租公課の年額}÷12月
(ヘ)
従来の借家契約においては、 契約に際して礼金、 権利金、 敷金、 保証金などの金銭の授受がなされることが一般的です。
不返還の約束のもとに授受される金銭 (礼金、 権利金)は、 従来の借家契約において貸した建物が返ってこない等の不透明性、 不確実性を事前に担保する性質を有しますから、 一定期間経過後確実に明渡を受けることができる定期建物賃貸借契約において、 このような性質の金銭の授受は控えるべきといえます。
これに対し、 賃料の支払いその他の債務の履行の担保としての性質を有する敷金、 保証金は、 定期建物賃貸借契約においても従来どおり授受されることは何ら問題はないと考えられます。
なお、 住宅標準契約書では、 原則として敷金全額を返還することとしていますが、 関西地方ではいわゆる敷引という慣行が存在するため、 参考モデル契約ではそれに添った条項を記載しています。
(ト)
定期建物賃貸借契約では、 契約期間内に当事者から中途解約を申し入れることは原則としてできません。 但し、 居住用の定期建物賃貸借で、 賃貸物件の床面積が200㎡未満である場合において、 転勤、 療養、 親族の介護、 その他やむを得ない事情により賃借人が自己の生活の本拠として使用することができなくなったときには、 賃借人からの解約が認められます (借地借家法第38条第5項)。 この場合、 解約申入れから1か月を経過した日に契約が終了します。 特約によって、 解約の要件を緩和することなどは可能ですが、 賃借人に不利な特約は無効です。
(チ)
期間が1年以上である場合、 賃貸人は、 期間満了の1年前から6か月前までの間に、 期間満了により終了する旨の通知を賃借人に行う必要があります (借地借家法第38条第4項)。 万一、 賃貸人が上記期間内に通知をしなかった場合、 賃借人は、 契約期間満了後も賃貸借契約が終了していないことを主張することができます。 この場合、 賃貸借契約が存続していることになりますから、 当然賃借人はその間の賃料を支払わなければなりません。 無論、 これは賃借人保護の規定ですから、 賃貸人からの契約終了通知が来なかったとしても、 期間満了時に賃借人から契約終了を主張することは可能です。
また、 上記期間内に通知しなかった場合でも、 賃貸人が通知した日から6か月を経過したときは、 賃貸借契約は終了します。 この期間満了の通知につき、 法律上は、 書面による通知は要求されていませんが、 書面による方がよいでしょう。
これに対し、 期間が1年未満である場合には、 本条の定めは不要です。
(リ)
(ハ)で述べたとおり、 定期建物賃貸借契約を締結しようとする場合、 賃貸人は予め、 賃借人に契約の更新がなく期間満了により賃貸借が終了する旨を記載した書面を交付しなければなりません。 「契約内容の説明」 のうち、 一項が法律上要求されている事項で、 この内容が遺漏していると契約の更新がないという定めが無効となってしまいます。
これに対し、 二項から五項までは法律上要求されているものではありませんが、 契約上のトラブルを少なくするためには、 記載しておいた方が望ましいといえます。
(ヌ)
後日、 賃借人との間で、 法律が要求している説明義務を履行したか否かが争いとなった場合を想定し、 賃借人に交付した書面 (契約内容の説明書)と同じものとその書面の交付及び説明を受けたことの確認書を、 賃貸借契約書とともに保管しておく必要があります。
参考モデル契約では、 賃貸人が 「契約内容の説明書」 と 「確認書」 が一枚の書面となったものを保管しておく書式を掲載しています。 なお、 住宅標準契約書第6の 「定期賃貸住宅契約についての説明」 では、 借地借家法第38条第2項に基づく説明を受けたことの確認のみを記載していますが、 同条項は単なる説明のみならず、 契約の更新が無く、 期間満了により賃貸借が終了する旨を記載した書面を交付して説明することまで要求しています。 従って、 参考モデル契約のように書面を交付したことの確認まで行っておいた方がよいと思われます。
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