定期借家権制度の導入が、 ライフスタイルや社会現象などに大きな影響をもたらすことはこれまで検討してきたとおりですが、 これらが定期借家に関連する種々の事業や事業者にも大きな変化をもたらすと予想されます。 それは一面では新たなビジネスのチャンスを作り出すことにもなりますし、 又、 貸し方での工夫が必要とされる場合もあるでしょうし、 又、 一面では賃貸物件市場での供給過剰により、 魅力のない賃貸物件の淘汰がすすむことも予想されます。 新しいビジネスのチャンスが生まれる局面は次のように予想されます。
次にこれまでとは違う賃貸契約での様々の工夫の可能性として、
などが挙げられます。
コンセプトマンションとは、 次のようなテーマやコンセプトにニーズを絞り込み、 そのニーズに積極的に対応することを目指した 「専用」 マンションと意義づけられます。
こうしたコンセプトマンションは現代社会の多様なニーズに応えるために必要となってきたものですが、 これらのコンセプトマンションに定期借家制度を活用することで不良入居者を排除でき、 マンション全体の質の向上を図ることが可能になると予想されます。
一般定期借地権での土地賃貸は期間50年以上と長すぎるため、 事業に踏みきれない多くの土地所有者がおられます。 このような土地所有者の土地活用の一方法として、 スケルトン方式での賃貸物件の提供と定期借家権の活用を組み合わせた方法が出現すると予想されます。 この方法によりオーナーは一定期間の安定収入が可能になると予想されます。
また、 賃借人は長期 (20~30年) の定期借家契約により、 内部造作等を自ら行うことで、 自分の好みやライフスタイルに合わせた住居に居住が可能となります。
定期借家権制度の導入により、 サブリース事業はこれまで以上に発展する可能性が考えられます。 大きな要因として、 賃貸物件の供給過剰などにより、 一般のオーナーが賃貸事業を行うことの困難性が増大することがあげられます。 家賃収入を確保するため、 サブリース業者に定期借家契約により一括して賃貸するケースが増加すると予想されます。 サブリース業者はできるだけより大きな収益が得られるよう、 創意工夫をこらして転貸先と定期借家契約を結んでいくと予想されます。
一定期間内における収益の確定と、 賃貸期間の終期を予想し得る定期借家契約は、 不動産証券化にも大きく寄与し、 不動産証券化事業が大きく発展する基礎となると予想されます。
不動産証券化事業では、 投資家に収益や安全性においていかに魅力のある商品を提供できるかがキーポイントになりますが、 定期借家制度の導入により、 そのうちの重要な収益性と投資回収期間について予測可能となり、 不動産証券化事業の発展が期待されます。
P.F.I.とは簡略化して述べると、 民間資金を公共施設の設置や維持管理に導入し、 公共サービスの充実を図ることと言えます。
例えば、 地方自治体等が所有している土地にP.F.I.により公共施設を設置し、 その施設を定期借家契約により事業者に賃貸し、 運営を任せるというような方法が、 きわめて容易になったと考えられます。
このように、 P.F.I.の普及に定期借家権制度が大きく寄与すると考えられます。
賃貸物件をテナントにとって魅力ある物件として維持するためには、 リニューアル工事は欠かせません。 物件のライフサイクルを想定し、 小規模修繕、 大規模修繕、 建替の時期を定め計画し、 この計画に沿って定期借家契約によりテナントとの賃貸期間を定めますと、 スムーズに計画の実行が可能となります。
定期借家契約では短期間の賃貸契約も可能ですので、 短期間しか賃貸できない事情のある場合にも賃貸物件とすることができます。
定期借家契約では、 空室対策として短期間のみいったん家賃を下げるとか、 当初1年のみ家賃を下げ、 2年目以降は通常の家賃を再契約の条件とするといった様々の工夫が可能となります。
定期借家権制度の導入・普及により、 不動産賃貸事業もこれまでとはうってかわって、 鋭いビジネス感覚が要求される時代が到来すると予想されます。
一方では、 持家指向が薄らぎ、 それぞれのライフスタイルに合った賃貸物件に対しての需要が大きく増加すると予想されますが、 他方では、 それらの需要にジャストフィットした賃貸物件の供給が増加すると予想されます。
このような時代や社会の動きの中で、 これまで賃貸事業を行ってきたオーナーにあっては、 自己の賃貸物件を借り手にとってより魅力的にするための努力が不可欠となります。 今後、 賃貸事業を始めるか、 新たに賃貸物件を建築しようとしている土地所有者は、 対象地の立地分析を十分に行い、 どんなテナントのニーズにし、 どれくらいの需要が見込まれ、 競合物件との関係でどうなるかを十分に予測したうえで、 事業や建築をすすめるかどうか、 どのようなニーズに合致した物件を供給するか等の判断をすることが必要と言えます。