契約書における留意点は次のとおりです。
登記簿謄本の甲区に記載された不動産の所有権者が売主となりますが、不動産の賃貸借契約等において売主以外の第三者が貸主となっている場合には賃貸借契約の承継、預かり保証金の承継のためにその貸主を売主に含めることが必要です。
売買代金に占める土地建物価額が明確に区分されていないときはその内訳は、固定資産税評価額比率や売主の帳簿価額等を参考にして売主、買主が協議して決定します。
前述しましたように、土地建物の価額比率によって相続税の軽減効果等が大きく異なってきますので、シミュレーションに基づいて売主側に提案していく必要があります。
また、建物消費税については居住系建物の場合、還付対象となりませんし、事業用建物であっても買主が既に消費税の課税事業を行っていて、かつ課税事業者に該当しない場合は還付を受けられないこともありますので消費税還付の有無による経済効果も考慮してシミュレーションを行うことが必要です。
土地の境界には公道、河川等との境界である官民境界と隣地等との境界である民々境界があり、それぞれ官民境界明示指令書、隣地境界立会確定書等の押印書面が必要です。
これらの書類がないと買主に次の不利益があります。
出来るだけ早い段階で境界確定書等の作成を買主に申し入れ、所有権移転時にそれらの書面の交付が間に合わない場合の定めを契約書に明記する必要があります。
境界越境物についても隣地所有者との間で越境物の相互確認と、解消の時期についての取り決めを売主に求めることが必要です。
売買代金の5~20%程度を手付金として契約時に支払うのが通例ですが、売主の経済状況等、手付金の保全に不安がある場合は、手付金の授受は行わない方向で協議する必要があります。
売買代金の支払(以下、決済といいます)と同時に所有権移転登記に必要な書類の交付を受けます。所有権移転登記を行えば当然に所有権が移転するわけではありませんので契約書において所有権移転期日の定めが必要になります。
決済時に、設定されている抵当権等が同時抹消できるように抹消関係の書類の交付を受けますが、これらの書類については不備がないように事前にコピー等の交付を受け、買主側の司法書士が書類のチェックを行わなければなりません。
また、契約から決済までの間に売主から第三者への所有権移転登記が行われると買主は第三者へ対抗出来なくなりますのでその禁止を条項に加える必要があります。
中古建物の場合、デューデリジェンスを行っても瑕疵を全て発見することは非常に困難です。売主が意図的に隠蔽しているときはなおさら困難となります。
そのため、隠れたる瑕疵があった場合は損害賠償や契約解除が求められるように条項を定める必要があります。
空調設備等、四季を経過しないと確認できない部分もありますので、最低1年間の瑕疵担保請求期間を設ける必要があります。
契約から決済までの間に地震、火災等で建物が滅失・毀損する可能性は皆無とはいえませんので、その場合に買主に不利益が生じないように条項を定める必要があります。
収益(賃料、共益費収入等)と費用(維持管理費、固都税、水道光熱費、保険料等)は決済日(所有権移転日)の前日までが売主の帰属、当日からが買主の帰属とするのが一般的です。
固都税については、1月1日の所有者(売主)に対して1年分が課税されますので年の中途で売買を行った場合は買主・売主間で精算することになります。法律上、固都税の課税対象期間は定められていませんので、買主・売主間で起算日を決める必要があります。固定資産税等の課税期日である1月1日とするか、不動産取得税等の固定資産税評価額を課税標準とする税額の区分日となる4月1日とするかのいずれかが一般的です。いずれを起算日にするかによって買主の初期費用が異なってきます。また、固都税の精算金は税務上売買代金として取り扱われますので建物の固都税精算金には消費税が課されます。
実務上は、賃料、固都税等、決済日に金額が確定できるものは売買代金と相殺して精算しますが、光熱費、修繕費等、後日金額が確定するものは確定した時点で精算をおこないます。
法律上、所有者が変わっても賃貸借契約は当然に引き継がれますが、賃借人と不要なトラブルとならないように、事前に売主から賃借人に賃貸人の変更通知を行い、賃借人から承諾を得た上で、書面にて変更通知書・承諾書を取り交わすことを契約に定めます。
この通知には預かり保証金、敷金、建設協力金等の預かり金の取り扱いについても明記することが必要です。預かり金を買主が引き継ぐ場合は売買代金と相殺し、買主が引き継がない場合は、売主と賃借人とで精算した上で、新たに買主と賃借人間で授受を行うことになります。
契約を買主・売主のいずれかの違反により解除する場合について違約金を取り決めます。通常は売買代金の2割相当です。
止むを得ない事情で解除となった場合に違約金が発生して多大な不利益を被ることがないように、想定される事情について違反解除にならない特約を設けます。
多額の抵当権が付いている不動産の場合は抵当権抹消同意が得られない可能性がありますので、抵当権が抹消できなかったときは解除が行えるように定めます。
賃貸借契約が更新時期を迎えている場合は退去により賃料収入がなくなる可能性や賃料収入が改訂される可能性がありますので、同条件更新ができなかったときは解除が行えるように定めます。
また、投資資金を借入金で調達する場合は融資実行が出来ない可能性がありますので、融資実行ができなかったときは解除が行えるように定めます。