管理委託会社の選定・変更

不動産投資・運用マニュアル

第2

不動産のバリューアップ

集合写真

管理委託会社の選定・変更

(1)

管理委託会社の選定・変更の目的

賃貸用不動産の日常的な管理は、人的管理と物的管理に大きく分かれます。
前者は入居者募集、賃貸借契約締結、入居者クレーム対応、集金、滞納対応、契約更新・解約・退去対応、等の入居者に対する管理全般をいい、一般的に「管理代行業務」と呼ばれています。後者は清掃、エレベーターメンテナンス、設備保守点検、機械警備、修繕等の建物の維持に関する管理全般をいい、一般的に「建物管理業務」と呼ばれています。
購入した不動産の前所有者がこの両者の管理業務をどのような形態で行なってきたかは物件により千差万別で、必ずしも最良の形で行なわれているとは限りません。全て地元の周旋屋に任せていたケースや、エレベーターメンテナンス、設備保守点検等、技術者でしか出来ない部分のみ個別に外注して他は全て自己で行なっているケースもあります。下記の理由から、管理委託会社については、運用開始に際して抜本的な見直しを行なう必要があります。
(イ)
管理に要するコストは、賃貸用不動産の年間支出において大きなウエイトを占めます。支出総額のうち、30~50%を占め、これは売上(賃料収入)の10~15%に相当します。また、支出の他の部分は、固定資産税、水道光熱費等ですので、削減の余地が殆どありません。従いまして、コストパフォーマンスに優れた管理委託会社を選定することがネット収入の増加に大きく寄与します。
(ロ)
テナントのクレーム対応等をおろそかにしたために、早期退去や滞納などのトラブルに発展するケースが多く見られます。24時間体制はもちろんのこと、積極的にテナントへのサービスを実施している管理会社を選定するべきです。
(ハ)
日常のメンテナンスの良否によって、建物の耐用年数は大きく変わってきます。
ここでいう耐用年数には、使用に耐えるという意味以外に、美観等の賃貸物件としての性能も含みます。良くメンテナンスされた建物とそうでない建物では、建築後10年経ても新築同様のものもあれば、築20年程度に見えるものもあり、20年程度の差が生じることとなります。建築後20年経てばその差はさらに広がります。管理会社によって日常メンテナンスの良否は著しく異なりますので、実績を十分確認して、慎重に選定する必要があります。
(2)

管理委託会社の選定

(イ)
AM、PMとBM
不動産運用における管理の委託先としてAM(アセット・マネジメント)会社とPM(プロパティ・マネジメント)会社とBM(ビルメンテナンス)会社があります。
AM会社は、個別不動産の管理ではなく、複数の物件を同時に、かつ、購入から運用、売却まで総合的に管理(総括管理)します。AM会社の目的は、不動産投資全体で運用成績を上げることにありますので、個別不動産の日常運用は、PM会社に委託して、指図を行ないます。一般的には、不動産ファンドなど、多くの物件の購入、運用、売却を同時並行的に行なっている会社に対して、投資資金の総括運用代行を行ないます。
PM会社は、個別不動産の運用実務一切を引き受ける会社です。行なう業務の具体的内容は、ほぼ管理代行業務に該当します。BM会社を管理・監督・指導する立場でもあります。
BM会社は、個別不動産の建物作業管理(清掃、設備保守、警備等)を行なう会社です。行なう業務の内容は、ほぼ建物管理業務に該当します。
個別不動産の管理委託を検討する場合の対象会社としては、AM会社は適当でないものと考えられます。AM自体は有用ではありますが、個別不動産単体での対費用効果を考えると得策ではありません。また、管理代行業務をPM会社、建物管理業務をBM会社に分離して別会社に委託した場合は、PM会社とBM会社の相互間の連絡や、責任の範囲について、不明確な部分が生じる可能性があります。
PMが主体でBMも行なっている会社(関連会社が行なっている場合も含む)、または、BMが主体でPMも行なっている会社(関連会社が行なっている場合も含む)に、管理代行業務と建物管理業務を一括委託する方法が最も好ましいと考えられます。
(ロ)
見積書の徴収
管理委託会社の選定については、出来るだけ多くの会社から見積書を徴収します。その際、見積内容(項目)を予め指定して、見積もりに含まれる項目・仕様に差異が生じないようにするのと同時に、提出された見積書の比較検討を容易に行なえるようにします。現行の管理委託会社(売主が契約した管理委託会社)がある場合は、管理委託会社変更を検討している旨を告げて、要望があれば見積に参加させます。
(a)
管理代行業務の見積書に明記させる内容
1)
契約期間
契約期間は原則1年とし、契約期間満了の3ヶ月前までに双方、更新しない旨の書面による通知がなかった場合には更に1年間、自動更新する契約とします。見積参加会社がこの内容と異なる契約期間を希望する場合は、明記させます。
2)
委託業務
管理代行業務は次のとおりとします。見積参加会社がこれと異なる内容を希望する場合は、明記させます。
入居者の募集に関する業務
入居の申込・審査に関する業務
入居者との賃貸借契約の締結及び更新に関する業務
テナント工事・入居スケジュール等の確認調整業務
近隣及び他テナントとの入居時調整業務
賃料・共益費・水道光熱費・保証金・その他費用(以下「賃料等」という)の代理受領・送金に関する業務
賃料等の催促に関する業務
入居者からのクレームの受付、対応に関する業務
定期巡回、共用部分(必要に応じ専有部分を含む)の使用状況の調査、是正指導業務
官公庁届出、各種立会い、各種申請、近隣への対応業務
専有部分の修繕費用負担の調整業務
上記修繕の見積、手配、立会いに関する業務
上記修繕代金の支払い、精算に関する業務
退室時の専有部分の点検業務
退室時の原状回復費用負担の調整業務
原状回復工事の見積、手配、立会いに関する業務
原状回復工事代金の支払い、精算に関する業務
明渡時の確認、鍵等の受領業務
賃料等の精算に関する業務
代行管理業務全般の定期及び随時報告業務
3)
契約の解除
委託者は1ヶ月前、受託者は3ヶ月前に書面により解約を申し入れた場合は、解約できるものとします。委託者について1ヶ月前とするのは、不動産売却時には、管理会社の変更が条件となる場合が多いので、その場合に契約を早期に解約できるようにするためです。見積参加会社がこれと異なる条件を希望する場合は、明記させます。
4)
管理代行費用
管理代行費用は下記の項目とし、それぞれの金額(もしくは金額の算定基準)を提示させます。それぞれの項目の支払期限、支払方法も提示させます。見積参加会社が下記と異なる項目を希望する場合は、明記させます。
下記のうち、月額代行料については、定額の場合と、賃料収入×○%という形の収入連動型の場合が一般的です。
収入連動型の場合は、収入の変動に伴って割合が変化する契約(たとえば入居率100%で月額賃料×7%、入居率90%で月額賃料×5%、入居率80%で月額賃料×3%といった形で取決めを行います。)とした方が、管理代行会社にとっても入居率UPのインセンティブとなりますし、委託者にとっても収入減少時のコストが抑えられますので双方にメリットがあります。
月額代行料(下記以外の経常報酬)
広告料(入居成約時の報酬)
更新事務手数料(契約更新時の報酬)
振込手数料の負担区分
(b)
建物管理業務の見積書に明記させる内容
1)
契約期間
契約期間、更新方法は管理代行契約と同じとします。見積参加会社が管理代行契約と異なる契約期間等を希望する場合は、その理由とともに明記させます。
2)
委託業務及び報酬
建物管理委託業務は一般的には下記の項目となります。それぞれの項目について、作業内容、頻度及び費用等を明示させます。項目は建物の用途、仕様等によって異なってきますので、見積徴収の先立って、必要な項目について専門家のアドバイスを受けることが必要となります。建物の見積参加会社がこれと異なる内容を希望する場合は、明記させます。


3)
契約の解除
解除予告の期間等は、管理代行契約と同じとします。見積参加会社が管理代行契約と異なる期間等を希望する場合は、その理由とともに明記させます。
(ハ)
見積書の精査とヒアリング、実地調査
見積参加会社から提出された見積書を精査し、項目ごとの内容や費用の比較を行い、値交渉を行なって、場合によっては二次見積、三次見積を提出させます。
その上で、最終的に2~3社に絞り込みます。絞り込む際は、会社の規模や見積金額だけでなく、提出された見積書と付属説明書の内容を分析して信頼性と経済性の両面から審査する必要がありますので、専門家の意見を聞くことが必要です。
書類審査で選定した2~3社について、面談を行い、管理方針、管理体制、協力会社とのタイアップ体制等をヒアリング審査します。通常、一社について一時間から一時間半かけて行い、各社にプレゼンテーションを行なわせた上で、各社に同じ質問を行ないます。面談には、責任者と担当者を出席させます。また、第一印象も重要ですので、印象を比較しやすいように、出来れば各社とも同日に行ないます。
ヒアリングの中で、見積参加会社が実際に受託管理している物件の名称、所在等を確認して、当該物件の管理状況を実地調査します。場合によっては、当該物件の現地案内を依頼します。
(ニ)
管理委託会社の決定と引継ぎ
書類審査、ヒアリング審査、実地調査の結果に基づき、一社に絞り込んだ時点で再度値交渉を行ないます。管理委託報酬を確定させた後、委託契約書の中で、委託条件の詰めを行ないます。この時点で他社の見積書や説明書を参考にしながら好条件を盛り込んでいきます。また、見積書や説明書で記載されていた内容が契約書に反映されていないケースが多々ありますので、十分チェックします。
現行の委託会社がある場合は、管理委託契約書締結後、実務の引継ぎをスタートします。
現行の委託会社の責任者との面談や、現場担当者との書類引継ぎなど、実務の引継ぎの要所は、専門家に同席を依頼します。