吸収分割の効果

株式交換・移転、会社分割マニュアル

第2章

会社分割

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第3

吸収分割の実務

吸収分割の効果

(1)
対価柔軟化
平成17年改正前商法では,吸収分割に際して分割会社の株主に対して交付される財産は,原則として,承継会社の株式に限定されることを各種の規律が設けられていました。
しかし,近年,事業の再構築の必要性の高まり等を背景として,経済界を中心として,金銭その他の財産をもその対価とすることができるようにし,いわゆる三角合併やキャッシュ・アウト・マージャー等の選択肢を増やしたいという要望が強くなっています。
会社法は,このような状況を踏まえて,吸収合併における存続会社や吸収分割における承継会社の株式を交付することなく,金銭その他の財産を交付することや,対価を交付しないことができることとしています。これを「対価柔軟化」といいます。
(2)
会社の支配関係
分割会社は分割後も存続します。この点は合併と異なるところです。
典型的には,分割により,承継会社の新株その他の財産が分割会社に交付され,分割会社が承継会社の株式の交付を受けた場合は,分割会社は承継会社の株主となります。
分割と同時に,又は分割後に,分割会社は交付を受けた対価(例えば承継会社の株式)を分割会社の株主に交付することができますが,これは剰余金の配当であり,一定の条件を満たす場合を除いて,剰余金配当規制に服します。
(3)
株式の交付と分割比率
分割によって承継会社に承継される資産(債務を含む)との関係で分割により交付される対価が定められ(「分割比率」といいます),それに応じて分割会社に承継会社の株式等が交付されます。
承継会社の株式を交付する場合には,新株・自己株式のいずれを交付することも可能です。
(4)
事業に関して有する権利義務の移転
分割により,吸収分割契約で定められた「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」を承継会社が承継します。
債務も債権者の同意がなくても原則として承継会社に移転します。
合併と異なり,分割会社は分割後も存続するので,資産の移転については第三者対抗要件の具備が必要です。
なお,分割により移転するものは実質的な資産であって,計算上の数字である資本金や準備金が移転するわけではありません。

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