法定後見制度の知識2|保佐

成年後見ガイド

第2

法定後見制度

2

新しい法定後見制度(補助、保佐、後見の制度)

(2)

保佐

(イ)
準禁治産制度との違い
(a)
対象となる人
準禁治産制度では、判断能力が足りない人のほか、浪費者も対象でした。しかし、保佐では特に浪費者を対象者とするとはされていません。浪費者であっても、判断能力が十分にあれば、補助、保佐、後見を受けることはありません。もっとも、判断能力が足りないという理由から、補助、保佐、後見が始まることはあるでしょう。浪費者という理由で一律に保護されるわけではないという考えがあったため、法改正により「浪費者」は削除されました。
(b)
保佐人の権限
また、準禁治産では保佐人は同意権だけが与えられ、取消権を持っていませんでした。そこで、同意を無視して本人が契約をしてしまった場合に、肝心の取消権を行使できるのは当の準禁治産者本人だけであったのです。このように保護の実効性が欠ける点が大きな問題でした。この点は、新しい保佐の制度では改められ、保佐人は取消権も与えられることになっています。
さらに保佐人の権限ということでは、代理権も与えることができるようになりました。これは、補助と同じく、申立てによって、与えられるかどうか、与えるとしても、どの範囲かを、家庭裁判所が判断します。こうして、本人や関係者の選択の幅があるので、本人の状態を見ながら、柔軟に保護の方法や程度を決めることができるようになっています。
(ロ)
保佐の対象となる人
精神障害により判断能力が著しく不十分な人です(11条)。「精神上の障害」が原因となって判断能力が不足する人という点は、補助の対象者と同じです。そして判断能力の足りない度合いが、補助よりも大きい人が対象となります。後見の対象者は保佐の対象とはならないので、保佐と後見を重複して受けることはありません(11条但書)。
(ハ)
保佐開始のための手続き
(a)
保佐も、補助同様、本人やその周りの人たちの意思を尊重する必要があるため、申立て権者の申立てに基づき家庭裁判所が、保佐の必要があると判断した上で保佐開始の審判をして始まります(11条)。
(b)
保佐開始の申立て権者
申立て権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人、検察官と民法で決められています(11条)。
1)
本人
本人は、自らの意思で自分の保佐を申し立てることができます。
2)
配偶者、四親等内の親族
配偶者、四親等内の親族といった身近にいる人々も、保佐を申し立てることができます。四親等内の親族の説明につきましては、第2の2(1)(ハ)(b)2)配偶者、四親等内の親族をご参照下さい。
3)
後見人、補助人など
後見を受けていた人の状態が回復して、保佐の保護の程度で足りるようになったときは、あるいは、補助を受けていた人の状態が悪化して、保佐の保護が必要になったときは、後見人や補助人などが保佐を申し立てることもできます。
4)
未成年後見人など
未成年後見を受けている人がさらに保佐を受けることもできるので、こうしたときには未成年後見人も保佐を申し立てることができます。
5)
検察官
本来は本人や身近にいる人たちからの申立てがあるのが望ましいのですが、保佐が必要と思われるのに関係者から申立てがされないときには、公益的な見地から検察官も申立てができることになっています。ただ、実際には検察官が申し立てることはほとんどないようです。
6)
市町村長
補助の場合と同様の理由から、行政機関(市町村長)が保佐を申し立てることが可能となっています。
(c)
本人の同意(本人以外の人の申立ての場合)
保佐は、補助の場合と異なり、本人保護の要請が強いため、本人の同意を得なくとも、保佐開始の申立てを行うことができます。
もっとも、保佐開始の審判の申立てと同時にあるいは保佐開始の審判確定後に保佐人に代理権を付与する旨の審判を申立てる際には、本人の意思尊重の観点から、本人の同意を得る必要があります(876条の4第2項)。なぜなら、被保佐人は、判断能力が不十分な状態ではありますが、後見人の場合と異なり、全く判断能力が欠けているわけではないので、保佐人に代理権を付与しなければ本人の保護が十分に図れないというわけではないからです。
(d)
申立先、費用、登記制度
申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
申立てにかかる費用は、申立収入印紙代800円、登記印紙代4000円、郵券4300円(東京家庭裁判所の場合は4300円ですが、申立てをする家庭裁判所により異なりますので、事前に金額をご確認ください。また、郵券の内訳も決まっておりますので、その点についてもご確認ください。なお、東京家庭裁判所では、500円5枚、80円20枚、10円20枚となっております。)、及び原則として鑑定費用がかかります。なお、保佐開始の申立と同時に別途代理権付与の申立を行う場合、別途収入印紙800円が必要となります。
保佐開始の審判が確定すると、家庭裁判所の書記官の嘱託により、東京法務局後見登録課が、保佐に関する登記を行います。従前は、後見制度に関する審判が確定するとその旨が戸籍に記載されて公示されていましたが、平成12年4月1日以降、本人のプライバシー保護の観点から新しい公示制度として成年後見登記制度が設けられたため、戸籍に保佐開始の審判がなされた旨の記載がなされることはなくなりました。また、本人のプライバシー保護の観点から、保佐登記事項証明書の交付申請者は、本人・本人の配偶者・四親等内の親族、成年後見人等に限られておりますので、誰でも保佐登記事項証明書の交付を請求できるわけではありません。
保佐登記事項証明書の交付請求先や登記に関する業務の取扱い先については第2の2(1)(ハ)(e)申立先、費用、登記制度をご参照ください。
(e)
鑑定、鑑定費用
後見・保佐の申立ての場合には、原則として裁判所において判断能力の鑑定をすることになっております(家事審判規則24条・30条の2)。
鑑定費用につきましては、第2の2(1)(ハ)(f)鑑定、鑑定費用をご参照ください。
(ニ)
保佐人の持つ権限
(a)
総論
保佐人は、同意権、取消権、代理権を与えられます。同意権と取消権は、法律の規定で与えられることが決められています。さらに、同意権の範囲は、法律で決められたものを減らすことはできませんが、当事者が必要と思えば申立てによって増やすこともできます。これに対して代理権は、申立てがあれば与えられることもあり、申立てがなければ与えられません。同意権と代理権がともに申立てによって与えられる補助ほどではないにしても、一定の範囲で本人、関係者の意思が反映されていると言えます。
(b)
同意権
同意の対象となる行為について、同意がなくて本人が行為をしてしまうと、これは取り消しうるものになります。この点は補助の場合と同じです。その行為については、本人の行為能力が制限されているということです。
(c)
取消権
これまでの準禁治産制度における保佐人は取消権を与えられておらず、保護の実効性が問題となっていましたが、同意をすることができる人は取消権も与えられるというように法改正がされましたので(120条)、同意権を与えられている保佐人は取消権も与えられています。その範囲は、同意権の範囲と同じです。
(d)
同意権を与えるための手続き
法律に決められたものについては保佐が開始されれば自動的に同意権が与えられるので、そのための審判などはありませんが、さらにそれ以外の行為についても同意権の対象として追加したいときは、申立てにより審判がされることになります(13条2項)。
(e)
保佐人の同意に代わる家庭裁判所の許可
同意権の対象とされた行為について、本人の利益を害するおそれがないのに保佐人が同意をしないときは、本人の申立てによって家庭裁判所は保佐人の同意に代わる許可をすることができます(13条3項)。同意権が与えられると本人の行動が制約されるわけですから、その制約が不当な場合には家庭裁判所が許可をすることができるということです。この点は補助人に同意権が与えられたときと同じです。
(f)
同意権の対象となる行為
重要な取引行為については、軽率にされると本人に不利益ともなりかねないことから、保佐人に同意をしてもらって慎重にするべき行為が、法律に9つのグループに分けて書かれています(13条1項1号から9号)。
1)
元本を領収し、利用すること
利息などを生み出している元となっている財産を受け取ることです。たとえばお金を貸して利息を取っている場合はその元金を受け取ること、土地を貸して地代を取っている場合はその土地を受け取ることです。
2)
借財、保証をすること
3)
不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
一般的に高額な不動産や、不動産でなくても重要な財産についての取引はより慎重に扱うため、同意の対象として保佐人の判断が必要とされます。
4)
訴訟行為
5)
贈与、和解、仲裁合意
6)
相続の承認、放棄、遺産分割
相続の承認も、借金などの負債を相続することもあるので、同意が必要です。
7)
贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承認、負担付遺贈の承認
負担付の贈与、遺贈も、負担の内容が大きければ本人に不利益になります。また負担のない贈与であっても例えば管理・処分に多額の費用が必要とされる物であればやはり本人の不利益になりますので、同意の対象とされています。
8)
新築、改築、増築、大修繕
9)
短期賃貸借を超える賃貸借
土地は5年、建物は3年を超える期間の賃貸借をすることは重要な取引行為なので、同意が必要です。
さらに前述のように、これらの法律で決められたもの以外の行為でも、申立てがあれば、家庭裁判所は同意権を与える審判をすることができるので、そうした行為も同意権の対象となる行為です(13条2項)。
(g)
保佐人の代理権
法改正により、従前(準禁治産制度)は後見人には代理権が与えられていませんでしたが、現行法では保佐人は代理権も与えられることになりました(876条の4)。これにより、本人の生活に必要な難しい取引行為を保佐人に代わってしてもらうことができるようになって、本人の保護に役立つようになりました。
なお、代理権の対象は、同意権のような法律の規定はありません。代理権が与えられても本人の自由は制約されないからです。ただし、結婚、離婚や遺言といった身分行為は代理できないことは、補助の場合と同じです。
(ホ)
取消しの審判
保佐においては、開始の審判、同意権の対象を法律に決められたものよりさらに増やす審判、代理権を与える審判の3つの審判がありますが、本人の判断能力低下の状態が回復したり、同意権、代理権の対象の範囲を変更したりするときは、申立てにより家庭裁判所はこれらの審判を取り消します(14条1項、2項、876条の4第3項)。
(ヘ)
保佐の終了
保佐開始の審判が取り消されるか、本人が死亡すると、保佐は終了します。
保佐人が辞任したり、解任されたり、死亡したときも、その保佐人による保佐は終了しますが、保佐開始の審判自体が終わるわけではありません。新しい保佐人が選任され、本人の保護は継続することになります。

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