法定後見制度の知識4|取引の相手方の保護

成年後見ガイド

第2

法定後見制度

2

新しい法定後見制度(補助、保佐、後見の制度)

(4)

取引の相手方の保護

(イ)
催告権
これまでに述べたように、判断能力の足りない本人を保護する方法として、本人がした不適切な契約を、保護する人が事後に取り消すという取消権が、補助、保佐、後見に共通してありましたが、取引の相手方からすると、その行為が取り消されるまでは有効である一方、取り消されると遡って無効になるという、不安定な立場に置かれてしまいます。そこで、このような状態を相手方から解消できるようにするための権利が認められており、これを「催告権」といいます。この催告権には、誰に対して催告するかといういくつかのパターンに応じて効果が決められています。
(a)
回復した本人に対しての催告
本人の精神上の障害が回復して法定後見制度を受けなくなるなどして、1人で完全に有効な行為ができるようになったときは、過去に自分のした取り消しうる行為を追認することにより、事後的に完全に有効な状態にできます。
そして、本人が、健常者と同じように法的に1人で完全に有効な行為ができるようになったときには、自ら進んでその行為を追認できることはもちろんですが、相手方がこのような追認を求めることもできます。すなわち、本人に対して、1か月以上の期間を決めて、この期間内に行為を追認するかの返事をするようにという内容の催告をすることができることとされています。そして、この期間内に追認や取消しがあれば、原則どおりその内容の通りの効果が生まれるのは当然ですが、さらに、この期間内に返事がないときでも、追認があったものとして処理されることになっています(20条1項)。
(b)
後見人、保佐人、補助人に対しての催告
回復した本人に対する催告と同じ内容、効果の催告が、後見人、保佐人、補助人に対してもできます。つまり1か月以上の期間を決めて追認するよう催告し、この期間内に返事がなければ追認したものとして処理されます(20条2項)。
(c)
本人に対して、後見人などの追認をもらうように請求する催告
回復していない本人に対して、その保護する人(後見人、保佐人、補助人)の追認をもらうように、との内容の催告をすることができます。期間は同じく1か月以上です。この期間内に追認をもらったという返事がないときは、他の催告と違って、取り消されたものとして処理されることになっています(20条3項)。
(ロ)
詐術による取消権の制限
補助、保佐、後見があくまで本人の個人の利益を守るための制度である以上、「補助、保佐、後見を受けていない」と相手方をだまして契約するような本人は保護する必要はありません。そこでこのような「詐術」を使った本人は、その行為を取り消すことができないことになっています(21条)。「詐術」というのは、単に補助、保佐、後見を受けていることを黙っていただけではこれにあたりませんが、黙っていることと本人の他の言動が合わさることで相手をだましたと言えるような場合は「詐術」にあたる、という判例が出ています。

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