任意後見契約3

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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任意後見制度のQ&A

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任意後見契約3

Q:
任意後見契約を締結したいと考えていますが、本人の判断能力がすでに低下しており任意後見契約を締結できるか微妙です。このような場合任意後見契約はむすべないのでしょうか?
A:
任意後見契約も契約ですから、契約を締結できる判断能力がないと契約は無効になってしまいます。特に即効型の場合は本人の判断能力が低下している状態ですから、契約が無効となってしまう可能性も高いといえます。
このような無効の任意後見契約が結ばれると任意後見制度による本人の保護が図れません。また、そのような事態とならないように、公証人は任意後見契約の締結に関与し、本人が任意後見契約を締結する能力をもっているか十分検証するはずです。
しかし、現実には本人に契約を締結する能力が備わっているかどうかの判断は難しい場合があります。そのような場合、公証人は医師の診断書の提出を求めたり、本人の生活状況についての書面を資料として求めたりすることがあります。
それでも公証人が本人に契約を締結する能力を認める事ができない場合は、公正証書の作成をしないこともあります。そして、公証人は法定後見制度の利用を勧めるでしょう。

Q:
任意後見契約を途中で変更することはできますか?
A:
1.
任意後見人となる予定の者、任意後見人の変更
任意後見契約は変更することができますが、その場合、変更する契約を公正証書にしてその内容を登記しなければなりません。
しかし、任意後見人となる予定の者や任意後見契約が発効したあとの任意後見人を変更する場合は、契約当事者の変更ですから、当初の契約の一部変更ではなく、いったん契約を解除し、新たに任意後見契約を締結する必要があります。
もっとも、任意後見監督人が選任され、契約の効力が生じている場合は、本人の判断能力が低下している状態ですから、新たな契約を結ぶことが困難なケースが予想されます。この場合は、法定後見への移行を検討すべきでしょう。
2.
代理権の範囲を拡大または縮小する変更
任意後見人の現在の代理権の範囲に不足があって代理権を追加したい場合は、現在の任意後見契約を解除し、新たに任意後見契約を締結するか、追加部分だけ、新しい契約を締結することが可能です。本人の判断能力の低下により新たな契約を結ぶことが困難なケースは、法定後見を検討すべきことは1と同じです。
3.
管理すべき財産の範囲の変更
契約時に管理を委任した財産の範囲に財産を追加したい場合や除きたい場合は、それぞれ代理権の範囲を拡大または縮小する変更と同様の扱いとなります。
4.
その他の契約の変更
その他の契約条項変更契約は、契約発効の前であれば公正証書による変更契約で可能であるとされています。一方、契約発効後は、本人の判断能力の低下しているため、任意後見契約の変更は困難が予想されます。

Q:
ある人と任意後見契約を締結しましたが、わけあって契約を解消したいと思っています。どうすれば可能でしょうか?
A:
1.
任意後見監督人が選任される前
任意後見契約は委任契約の一つであり、委任契約はいつでも当事者の双方が解除できる契約です(民法第651条)。そのため、任意後見契約の当事者も解除ができます。ただし、本人(被後見人)保護の見地から、解除するためには公証人の認証を受けた書面によることが必要です。当事者双方の合意による合意解除書に公証人の認証を受ければすぐに解除の効力が発生します。当事者の一方からの解除の場合は、解除の意思表示のなされた書面に認証を受け、これを相手方に送付してその旨を通告することが必要です。
2.
任意後見監督人が選任された後
任意後見監督人が選任された後は、正当な理由があるときに限り、かつ、家庭裁判所の許可を受けて、解除することができます。
なお、任意後見人について任務に適しない事由が認められるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。

Q:
任意後見人の義務は任意後見契約で定められたことだけですか?
A:
任意後見人のなす義務として本人(被後見人)との委任契約(任意後見契約)によって委任された事項があります。
しかし、任意後見人の義務は本人と締結した契約のみに留らず、「任意後見契約に関する法律」や民法に定められた義務もあります。具体的には次の内容などです。
1.
財産調査・財産目録の作成
成年後見人の場合には、民法第853条に被後見人の財産調査・目録作成の義務が定められていますが、任意後見人には直接的な義務規定はありません。しかし、任意後見契約に定めがなくても、任意後見人は受任者として一般に要求されている注意義務を果たす義務があります(任意後見契約に関する法律第7条4項、民法第644条)。そして、任意後見人が職務を適切に遂行するには財産状況を確認しておくことは重要ですから、一般的には、財産調査・目録作成は任意後見人の義務であると考えられます。
2.
本人の意思の確認および心身の状態・生活状況の確認
任意後見人には本人の心身の状態や生活状況に配慮する義務があります(任意後見契約に関する法律第6条)。したがって、医療や介護サービスの内容を確認する義務があります。
3.
報告義務
任意後見監督人は任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告する職務があることが規定されています(任意後見契約に関する法律第7条1項2号)。ということは、裏を返せば、任意後見人は任意後見監督人に事務について報告の義務があると考えられます。

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