法定後見の内容4

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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法定後見制度のQ&A

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法定後見の内容4

Q:
法人も成年後見人となることができると聞きましたが、どういう意味があるのでしょうか?
A:
1.
法人による後見
民法は成年後見人となる者が法人であるときを想定しています(民843条4項、876条の2第2項、876条の7第2項)。したがって、成年後見人等には、個人だけでなく、法人もなることができます。現実に、これまで裁判所で法人後見人に選任された例には、司法書士で組織された社団法人や、社会福祉協議会、福祉公社等があります。
2.
法人後見人の利点
法人が成年後見人等になることの利点は、その団体の組織力を発揮できる点です。法人が成年後見人になる場合でも、現実にその職務行為を行うのは、その法人で働く個人です。法人で働く個人は、一つの組織化された集団の一員として、連携協同することが期待できます。したがって、職務の内容が広範にわたる場合等にも、組織化された複数人により対応することが可能と考えられるのです。これが、法人が成年後見人になることの利点といえます。また、その他のメリットとして、法人はその性質上、個人のように健康上の理由で職務が停滞することもなく、その寿命に限度がないことも挙げられます。通常、万一成年後見人等が死亡すれば、成年後見開始事由が継続する限り、裁判所に申し立てをして新たに成年後見人の選任してもらう必要があります。しかし、法人後見人の場合は、仮に法人で働く担当者個人が病気になったり死亡したりしても、同一法人で働く他の個人が替わって対応できますから、法人後見人自体の職務執行が不可能となることはないのです。もちろん、法人も破産等により解散することがありえますが、そういう特別な事態を別にすれば、一般には、個人より長期的な職務の執行が可能といえます。

Q:
同居することになった成年被後見人の自宅を売却するにあたり、家庭裁判所の許可が必要となるのはなぜですか?
A:
成年後見人は、成年被後見人本人の財産に関する法律行為について代理権を付与されることで、原則として、自己の判断により本人の財産の処分を行うことができます。
しかし、居住環境は本人の精神へ多大な影響を与えるものと考えられ、居住用不動産の処分は、本人の日常生活、精神を含む健康にも大きな影響を与えるため、身上監護の観点から、後見人等の法律行為による権限を制限し、家庭裁判所の許可が必要とされたものです(民859条の3)。
「居住の用に供する」とは、生活の本拠として現に居住の用に供しており、または居住の用に供する予定があるという趣旨です。なお、すでに同居していても、同居前に居住していた不動産は「居住用」不動産に該当し、後見人等が本人に代わって処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要なのです。

Q:
自分自身を成年後見人の候補者として推薦しましたが、別の人が成年後見人に選任されました。私はこれに対して不服申立てができますか?
A:
後見開始の審判に対しては、本人、配偶者、4親等以内の親族などの者が不服申立をすることができます。
しかし、成年後見人の選任のみについて不服申立てをすることはできません。なぜなら、家庭裁判所は後見開始の審判をする場合に職権で成年後見人を選任しますが、この選任は後見開始の審判に付随するものであって、後見開始の審判自体に対する不服と切り離して、不服申立ての対象とならないからです。
ご質問の場合も、ご自身が選任されないことのみに対する不服であれば、不服申立てはできません。

Q:
保佐の制度を利用した事例を教えてください。
A:
本人が中程度の認知症で、長男が保佐開始の審判を申立て、保佐人になった次のような事例があります。 本人は1年前に夫を亡くしてから一人暮らしをしていました。以前から物忘れが見られましたが、最近症状が進み、買物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか、分からなくなることが多くなり、日常生活に支障が出てきたため、長男家族と同居することになりました。隣県に住む長男は、本人が住んでいた自宅が老朽化しているため、この際自宅の土地、建物を売りたいと考えて、保佐開始の審判の申立てをし、併せて土地、建物を売却することについて代理権付与の審判の申立てをしました。
家庭裁判所の審理を経て、本人について保佐が開始され、長男が保佐人に選任されました。長男は、家庭裁判所から居住用不動産の処分についての許可の審判を受け、本人の自宅を売却する手続を進めました(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より)。

Q:
保佐人の職務にはどのようなものがありますか?
A:
保佐人の職務
保佐人の職務は、被保佐人本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に対し、適切に同意を与えたり、本人に不利益な行為を取り消したりすることです。また、特定の行為について代理権を行使することもあります。そして、それらの内容について定期的に裁判所に報告することも含まれます。
具体的には、被保佐人が重要な財産行為を行う際にその内容を判断して同意することや、被保佐人が保佐人の同意を得ないで重要な財産行為をした場合にはこれを取り消したりします。
また、別途代理権の付与の申立が認められれば、被保佐人の財産に関する法律行為のうち、審判で認められた代理権の範囲内で被保佐人の財産の管理権を行使します。
家庭裁判所との関係
保佐人は、行った職務を定期的に家庭裁判所に報告し、必要があれば事前に家庭裁判所に相談するなど、家庭裁判所や保佐監督人の監督を受けることになります。

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