法定後見の終了

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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法定後見制度のQ&A

(4)

法定後見の終了

Q:
成年後見人等の職務はどんな時に終了するのですか?
A:
1.
絶対的終了原因
絶対的終了原因に該当すると成年後見等の職務は終了します。絶対的終了原因とは簡単にいえば後見が不要な状態になる場合で、次のものがあります。
(1)
本人の死亡(失踪宣告を受けた場合も含みます)
(2)
能力回復による後見開始の審判の取消し(保佐、補助、任意後見に移行した場合も含みます)
2.
相対的終了原因
相対的終了原因に該当する場合もその成年後見人等の職務は終了します。相対的終了原因とは、後見は必要であるものの、それまでの成年後見人との関係は終了する場合です。次のものがあります。
(1)
成年後見人の死亡
(2)
成年後見人の辞任
(3)
成年後見人の解任
(4)
成年後見人が欠格事由に該当

Q:
成年後見人が選任されているのですが、最近、辞任したいと言い出しました。どのような場合に成年後見人は辞任できるのですか?
A:
成年後見人等は家庭裁判所によって成年被後見人本人を保護する適任者として選任されている者であり、勝手に辞任することは本人に不利益を与えることになりかねません。また、成年後見人等が負っている本人に対する注意義務(管理者としての注意義務)違反になる可能性もあります。
そこで、民法は後見人が辞任できるのは正当な理由があって家庭裁判所の許可を得たときであると定めています(884条)。
正当な理由とは裁判所が一切の事情を考慮して判断します。たとえば成年後見人等の病気や、成年後見人等が仕事の都合で遠隔地に住居を移転し、職務の遂行に支障が生じるような場合、さらに本人またはその親族と不和が生じたような場合が想定されます。
いずれにしても、このような具体的な事情から家庭裁判所が正当であると判断して許可しない限り、成年後見人等は辞任することはできません。

Q:
成年後見人等が解任されるのは、どのような場合ですか?
A:
解任事由
成年後見人等に不正な行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときに解任されます。
具体的に「不正な行為」とは、違法な行為や社会的に非難されるに相当な行為であり、「著しい不行跡」とは、品行ないし操行が甚だしく悪いことであり、「その他任務に適しない事由」とは、後見人としての権利の濫用や管理失当、任務懈怠などを指します。
これらは、成年後見人等が成年被後見人を保護する上で、重大な責務を負い、ある程度の権限を付与されるため、その濫用により成年被後見人自身に被害が及ばないよう、適格性を保つために挙げられています。

Q:
成年後見が終了した場合、どのような手続きが必要になりますか?
A:
1.
後見の計算 法定後見が終了したとき(成年後見の終了事由についてはQ 成年後見人等の職務はどんな時に終了するのですかを参照ください)は、成年後見人(またはその相続人)は、2ヶ月以内にその管理していた財産等の計算をしなければなりません(民法870条)。計算の結果を元に、就任時と同様に財産目録を作成し、家庭裁判所に提出します。
財産等の計算は、後見監督人があるときは、その立会いを得て行う必要があります。成年後見人が計算の終了前に死亡したときは、成年後見人の相続人が財産等の計算をすべき義務を負います。
2.
成年後見登記 辞任や解任など、家庭裁判所の審判によって成年後見人の任務が終了した場合には、家庭裁判所の書記官から東京法務局に対して変更の登記が嘱託されます。
一方、本人の死亡によって成年後見人の任務が終了した場合は、成年後見人は後見終了の登記を法務局に申請しなければなりません。
3.
報酬付与の審判の申立て 家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができます(民法862条)。成年後見人はそのため報酬付与の審判の申立てを行います。特に親族等が成年後見人である場合、報酬を与えるかどうかおよびその金額は家庭裁判所の裁量に委ねられます。
4.
財産の引渡し 成年後見人は保管財産を引き渡す必要がありますが、終了原因によって引き渡す相手が異なります。
(1)
本人死亡により法定後見が終了した場合
遺言がある場合は、原則的には、遺言執行者または受遺者に財産を引き渡します。これに対し、遺言がないときや、遺言の対象となっていない財産があるときは、原則として相続人に引き渡すことになります。また、遺言がなく相続人もいない場合、成年後見人が利害関係人として相続財産管理人選任の申立てをし、選任された相続財産管理人に引き渡します。
(2)
成年後見人の辞任、解任によって法定後見が終了した場合
後任の成年後見人等に引き渡します。
(3)
能力回復により成年後見開始の審判が取り消された場合
本人に引き渡します。
5.
家庭裁判所への報告 財産を引き渡し、全ての事務が終了した後、成年後見人は家庭裁判所に後見終了の報告書を提出します。

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