任意後見監督人

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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任意後見制度のQ&A

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任意後見監督人

Q:
任意後見監督人には資格が必要ですか?
A:
任意後見監督人になるための資格については、法律上の定め特にありませんが、任意後見監督人となることができない者として、次の者を排除しています。したがって、次のいずれにも該当しないことが任意後見監督人になるための資格ということができます。
(1)
任意後見受任者または任意後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹
(2)
未成年者
(3)
家庭裁判所で過去に後見人・保佐人・補助人の地位を解任されたことのある者
(4)
親権喪失・管理権喪失の宣告を受けたことのある者
(5)
破産者
(6)
本人に対して訴訟をし、またはした者及びその配偶者並びに直系血族
(7)
行方不明者
上記(1)以外は法定後見人の欠格事由と同様です。

Q:
任意後見監督人となるべき者を家庭裁判所に対して推薦することができますか?
A:
任意後見監督人選任の申立てにおいて、候補者を推薦することができます。しかし、推薦された候補者が必ずしも家庭裁判所から選任されるとは限りません。任意後見監督人は、家庭裁判所に代わって、任意後見人の不正を防止し、財産管理等が適正に行われているかを監督する重要な役目を担います。したがって、家庭裁判所は、その役割を担える人を選任しますので、推薦には必ずしも拘束されません。
なお、任意後見監督人の選任に際し、家庭裁判所は、本人の心身の状態並びに生活および財産の状況を考慮し、任意後見監督人となる者の職業および経歴並びに本人との利害関係の有無を考慮し、さらに、本人の意見その他一切の事情を考慮することになっています。したがってこのような観点から適任と思われる人物がいる場合は推薦することは有益であるといえます。

Q:
任意後見監督人選任の申立はどのようなタイミングで行うのでしょうか?
A:
任意後見制度は任意後見監督人が選任されなければ効力を生じません。そこで、任意後見制度をスタートさせるためには任意後見監督人選任の申立をするタイミングが重要になります。
任意後見契約に関する法律第4条1項は、このタイミングについて「任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき」は家庭裁判所が任意後見監督人を選任するとされています。
これは法定後見制度でいう補助人の能力の程度と同じです(補助は民法15条1項によると「事理を弁識する能力が不十分である者」について開始できます)。

Q:
本人以外の者が任意後見監督人の選任申立をする場合、本人の同意を得る必要がありますか?
A:
任意後見監督人の選任申立は本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者(任意後見契約における受任者)においてすることができます。
任意後見契約が発効すると任意後見人に代理権が与えられることになり、本人以外のものが契約を締結したり財産を管理したりすることになります。
そこで、この申立を本人以外の者がする場合は本人の意思を尊重するために本人の同意が必要とされています。これは補助開始の審判の際に本人以外の者の申立による場合は本人の同意が必要であることと同じ趣旨の規定です。
ただし、任意後見の場合は、本人の判断能力が同意の意味を理解できない状態になっていたり、意思表示ができない程度まで進行している場合があるので、そのような場合は同意は不要であるとされています(法定後見であればこのような場合は保佐や後見の開始の審判とすることで本人の同意が必要なくなります)。

Q:
任意後見監督人の職務について教えてください。
A:
任意後見監督人の職務については任意後見契約に関する法律第7条で次のように定められています。
(1)
任意後見人の事務を監督すること。
任意後見人の不正や権限の濫用が行われないように事務を監督することです。
(2)
任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告すること。
裁判所の指示による一定の期間ごとに報告書を提出します。
(3)
急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
任意後見人が事務をなしえない場合などに、必要な措置をとることです。
(4)
任意後見人またはその代表する者と本人(被後見人)との利益が相反する行為について本人を代表すること。
任意後見人と本人の利益が対立する場合に任意後見人にかわって本人の代理人となることです。

Q:
任意後見監督人の報酬はどのように決まるのですか?
A:
任意後見監督人には任意後見人とは異なり、必ず報酬を支払う必要があります。 報酬は、本人(被後見人)の財産から支出されます。その報酬額は、任意後見監督人が報酬付与の申立を行い、家庭裁判所が事案に応じて決定しますが、本人の財産の額(報酬を支払う余裕の有無)、監督事務の内容(複雑かどうか)、任意後見人の報酬額(報酬の有無やその水準)その他の諸事情を総合して、本人の将来の生活を脅かさない水準で決定されています。

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