任意後見契約1

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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任意後見制度のQ&A

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任意後見契約

Q:
任意後見契約を結べば任意後見制度は開始されますか?
A:
任意後見制度では、任意後見契約を締結することが不可欠ですが、契約を締結しただけでは開始されません。任意後見制度は、本人の判断能力が衰えた段階で、家庭裁判所において、任意後見人を監督する任意後見監督人が選任されてはじめて開始されます。任意後見監督人は、本人の判断能力が衰えた段階で、本人・配偶者・4親等内の親族または任意後見人が家庭裁判所に選任を申立てます。この任意後見監督人が選任された時点で、任意後見人は後見人として正式に就任し、任意後見契約に基づく任意代理権が有効に成立します。任意後見監督人はこの任意後見人の代理権の行使を監督するのです。つまり、後見監督人は、自ら監督できない本人に代わって、任意後見人を監督することになります。

Q:
任意後見契約の締結には、公正証書が必要だとききましたがなぜ公正証書でなければならないのでしょうか?
A:
任意後見契約は、法律上、公証人の作成する公正証書によらなければなりません。(任意後見契約に関する法律第3条)。任意後見契約は、任意後見人に委任する内容を定める契約で、その当事者は委任者である本人と受任者となる任意後見人です。
公証人は公証役場にいる法律の専門家(裁判官を退官した人などが多い)であり、任意後見契約は、この公証人に本人の判断能力と意思を確認させて、この契約の有効な成立を確認させているのです。
仮に、この契約に公正証書によることを要求しないとすると、後になって、この任意後見契約が無効だといった紛争が多発しかねないので、公証人による公正証書の作成はそのような紛争防止のためであるといえます。

Q:
任意後見契約の締結は公正証書によるそうですが、どこかに出向かなけれなりませんか?
A:
任意後見契約は、全国にある公証人役場において公正証書によって契約書を作成します。この場合、契約の当事者である本人と委任をうける予定である任意後見人は、最寄りの公証人役場に出向いて契約書を作成してもらうのが通常です。
しかし、高齢のために外出がままならない人や身体が不自由な人が契約の当事者となる場合、当事者の依頼により、公証人が本人の自宅や入所施設または任意後見受任者の事務所等に赴いて公正証書を作成することもできます。

Q:
任意後見契約にはいくつかの類型があると聞きましたが、その違いについて教えてください。
A:
任意後見制度は、本人の判断能力が低下した場合に任意後見人が代理権を行使することになりますが、任意後見人が代理権を行使するまでの関わり方によって3つの利用の類型(将来型・移行型・即効型)に分けられます。
(1)
将来型
将来型は、十分な判断能力を有する本人が任意後見契約締結時の時点では、特別に将来任意後見人になる人(受任者)に後見事務を委託せず、将来自己の判断能力が低下した段階で初めて任意後見人による保護を受けようとする契約形態です。この類型では、任意後見監督人が選任されるまでの間、受任者に委任事務はありません。法律がもっとも一般的な類型として予定しているものといえます。
(2)
移行型
移行型は、本人の判断能力低下前は、受任者に財産管理等の事務を委託する委任契約を締結し、本人の判断能力低下後は、任意後見契約にもとづき任意後見監督人の選任時から任意後見人が代理権を行使するものです。つまり、本人の判断能力低下前の委任契約の受任者が、本人の判断能力が低下した段階で任意後見人として受任内容を変えながら継続して担当する類型です。
(3)
即効型
即効型は、契約締結後ただちに任意後見受任者や本人の親族の申立てにより、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、任意後見契約の効力を発生させるものです。契約締結の当初から任意後見人による保護を受けることができます。前提として、任意後見契約の締結時には本人に契約を締結できるだけの判断能力(意思能力)が必要です。

Q:
任意後見契約ではどのような事項について契約するのですか?
A:
任意後見契約は委任契約の一種で、本人が委任者として将来任意後見人になる人(受任者)との間で委任する事項を定め、受任者に代理権を付与する契約です。
委任する事項は代理権を付与して契約等の法律行為を行ってもらうための事務に限られます。したがって、後見人が日常の介護をするというような委任は任意後見契約ではできません。
本人が委任する事項としては次のものが一般的です。
(1)
財産管理に関する法律行為たとえば、預貯金の払い戻し、不動産の管理・処分、遺産分割などです。
(2)
日常生活や療養看護等に関する法律行為たとえば、介護契約の締結、要介護認定の申請、施設への入所契約などです。
なお、任意後見人が弁護士である場合には、(1)(2)の事務に関して生じる紛争についての訴訟の委任をすることもできます。

Q:
任意後見人に弁護士を選ぶ場合とそうでない場合で、任意後見契約に違いが生じることがありますか?
A:
任意後見契約は委任契約の一種で、本人が委任者として将来任意後見人になる人(受任者)との間で委任する事項を定め、受任者に代理権を付与する契約です。
委任する事項は、代理権を付与して契約等の法律行為を行ってもらうための事務に限られますが、任意後見人が弁護士である場合には、委任した事務に関して生じる訴訟についても委任することができます。
たとえば、任意後見契約に不動産の管理・処分、遺産分割などがあった場合、それに関して生じる第三者や親族との紛争について、任意後見人が訴訟を含めて対応することが可能になります。また、任意後見の場合にかかわらず、一般に弁護士等に訴訟を委任する場合は、訴訟代理人による代理権濫用の防止や事後的に訴訟が無効になることを防止するために、訴訟代理権の範囲を明確にすることが必要ですが、任意後見の場合は家庭裁判所や後見監督人がいるので、訴訟代理権が任意後見人に濫用されるおそれが低いといえます。そして、任意後見契約において「前記各事項に関して生ずる紛争についての訴訟行為の一切」などと規定しておけば、あえて事件や訴訟の対象を特定する必要はありません。
これに対し、弁護士以外の人が任意後見人になる場合は、原則として(その任意後見人が法務大臣に認定をうけた司法書士であれば簡易裁判所において管轄する事項については訴訟を行うことができますが)、訴訟代理人となることはできません。この場合は、訴訟については別途弁護士に委任することが必要になります。

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