法定後見制度の知識3|後見

成年後見ガイド

第2

法定後見制度

2

新しい法定後見制度(補助、保佐、後見の制度)

(3)

後見

(イ)
禁治産制度との違い
後見は、これまでの禁治産制度が改められた制度ですが、成年後見制度全体の改正の中で名称などは変わりましたが、制度自体が大きく改められたわけではありません。後見人にどのような権限が与えられるのかは、禁治産制度と同じです。もっとも、保護される本人の意思をできる限り尊重しようという今回の改正の全体の流れの中で、取消権の範囲が若干狭められるという改正はありました。
(ロ)
後見の対象になる人
精神障害によって、判断能力を欠く「常況」にある人、と法律に規定されています(7条)。「脳血管性痴呆」のように、一時的に判断能力が戻ることがあっても、一日のほとんどの時間は判断能力がない人も含まれます。その原因である「精神上の障害」という点は、補助、保佐の場合と同じなので、補助、保佐の対象となる人よりも判断能力を欠く度合いがさらに大きい人ということになります。
(ハ)
後見開始のための手続き
(a)
後見も、保佐・補助同様、本人やその周りの人たちの意思を尊重する必要があるため、申立て権者の申立てに基づき家庭裁判所が、後見の必要があると判断した上で後見開始の審判をして始まります(7条)。
(b)
後見開始の申立て権者
申立て権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、と民法で決められています(7条)。
1)
本人
本人は、自らの意思で自分の後見を申し立てることができます。
2)
配偶者、四親等内の親族
配偶者、四親等内の親族といった身近にいる人々も、後見を申し立てることができます。四親等内の親族の説明につきましては、第2の2(1)(ハ)(b)2)配偶者、四親等内の親族をご参照下さい。
3)
保佐人、補助人など
保佐あるいは補助を受けていた人の状態が悪化して、後見の保護が必要になったときは、保佐人や補助人などが後見を申し立てることもできます。
4)
未成年後見人など
未成年後見を受けている人がさらに後見を受けることもできるので、こうしたときには未成年後見人も後見を申し立てることができます。
5)
検察官
本来は本人や身近にいる人たちからの申立てがあるのが望ましいのですが、後見が必要と思われるのに関係者から申立てがされないときには、公益的な見地から検察官も申立てができることになっています。ただ、実際には検察官が申し立てることはほとんどないようです
6)
市町村長
補助の場合と同様の理由から、行政機関(市町村長)が後見を申立てることが可能となっています。
(c)
本人の同意(本人以外の人の申立ての場合)
後見は、補助の場合と異なり、本人保護の要請が強いため、本人の同意を得なくとも、後見開始の申立てを行うことができます。
また、後見は、保佐の場合と異なり、後見開始と同時に、当然に後見人に代理権が付与されるため、代理権付与の申立てという制度は存在しません。従いまして、代理権付与に関する本人の同意も不要となります。
(d)
申立先、費用、登記制度
申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
申立てにかかる費用は、申立収入印紙代800円、登記印紙代4000円、郵券4300円(東京家庭裁判所の場合は4300円ですが、申立てをする家庭裁判所により異なりますので、事前に金額をご確認ください。また、郵券の内訳も決まっておりますので、その点についてもご確認ください。なお、東京家庭裁判所では、500円5枚、80円20枚、10円20枚となっております。)、及び原則として鑑定費用がかかります。
後見開始の審判が確定すると、家庭裁判所の書記官の嘱託により、東京法務局後見登録課が、後見に関する登記を行います。従前は、後見制度に関する審判が確定するとその旨が戸籍に記載されて公示されていましたが、平成12年4月1日以降、本人のプライバシー保護の観点から新しい公示制度として成年後見登記制度が設けられたため、戸籍に後見開始の審判がなされた旨の記載がなされることはなくなりました。また、本人のプライバシー保護の観点から、後見登記事項証明書の交付申請者は、本人・本人の配偶者・4親等内の親族、成年後見人等に限られておりますので、誰でも後見登記事項証明書の交付を請求できるわけではありません。
後見登記事項証明書の交付請求先や登記に関する業務の取扱い先については第2の2(1)(ハ)(e)申立先、費用、登記制度をご参照ください。
(e)
鑑定、鑑定費用
後見・保佐の申立ての場合には、原則として裁判所において判断能力の鑑定をすることになっております(家事審判規則24条・30条の2)。もっとも、療育手帳の判定が最重度または重度の場合や明らかに判断能力を欠く状態にある場合には、鑑定が不要とされる場合があります。
鑑定費用につきましては、第2の2(1)(ハ)(f)鑑定、鑑定費用をご参照ください。
(ニ)
後見人の持つ権限
(a)
総論
後見人は取消権と、代理権を与えられています。同意権は与えられていません。たとえ後見人が同意をしたとしても、本人は判断能力がほとんどないので、同意通りの行為を1人でできないと考えられているからです。取消権、代理権ともに、法律の規定によって与えられることになっているので、補助、保佐の場合のように、これらの権限を与えるための審判というものはありません。
(b)
後見人の取消権
原則的に、本人のした全ての行為について、後見人は取り消すことができます(9条)。
ただ、今回の改正で、「日用品の購入、その他日常生活に関する行為」については取消権の対象から除かれることになっています(9条但書)。このような行為についてまで後見人が取り消せるとすると、本人の生活に干渉しすぎであり、本人の意思尊重という理念に反するからです。
(c)
後見人の代理権
補助、保佐の場合と違って、代理権を与えるための審判をしなくても、後見人は全ての行為について法律によって代理権が与えられています。法的には「包括的代理権」という言い方もします。ただし、結婚、離婚、遺言などの身分行為を代理できないことは、補助、保佐と同じです。
(ホ)
取消しの審判
本人の状態が回復するなどして後見を受ける原因がなくなったときは、家庭裁判所は申立てによって後見開始の審判を取り消します(10条)。ちなみに、本人の状態が回復して保佐や補助で足りる程度になったときも、後見の原因がなくなったと言えるので、後見開始の審判を取り消すことができます。
(ヘ)
後見の終了
後見開始の審判が取り消されるか、本人が死亡すると、後見は終了します。
後見人が辞任したり、解任されたり、死亡すると、その後見人による後見は終了しますが、後見制度による本人の保護が終わるわけではありません。新たな後見人が選任されることになります。

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