前記(2)(イ)の関係は、事実的因果関係といわれています。この事実的因果関係の問題は従前あまり問題とされず、裁判でも争点となることが多くありませんでした。しかし、近年、医療過誤、公害、薬害訴訟、科学的に複雑な事件が増加するに伴い、実務上、事実的因果関係の立証という問題がクローズアップされてきました。
因果関係について立証責任は被害者たる原告にありますが、一般的に複雑な科学知識に乏しい被害者にはこの立証はたいへん困難なものとなります。このため、判例、学説において事実的因果関係の立証負担を軽減する努力がなされてきました。
最判昭50.10.24(民集29巻9号1417頁)は、医療過誤の事案で因果関係の立証は、「経験則に照らし全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつそれで足りる」と判示しています。
同様に、札幌地判昭54.5.10(判時950号53頁・札幌スモン事件)は、上記最高裁と同様の一般論を述べ、
を総合して、キノホルム剤服用とスモンの発症との間に事実的因果関係を認めました。