責任防御対策(PLD)-事故処理、製品回収(リコール)

製造物責任マニュアル

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責任防御対策(PLD)-事故処理、製品回収(リコール)

集合写真
製造物責任事故が起った場合の事故処理及び製品回収はどのように行うか。

事故処理

製造物責任事故が発生した場合、製造業者等は製造物責任を問われ、場合によっては訴訟を起こされることにもなります。
本項では、事故発生から訴訟までの責任防御対策としての必要事項と留意事項を説明します。
事故が発生した場合には、将来の賠償請求にそなえ、まず顧問弁護士か製造物責任事故に堪能な弁護士に連絡をとり、今後の対応を相談することが必要です。
そして、弁護士と相談しながら事実関係の調査をすぐに開始しなければなりません。事実調査の内容は、事故の内容、損害の状況、製品とその環境等に及びます。
事故内容の調査については、事故の状況を図面、写真で残しておくほか、事故の目撃者からの事情聴取や、警察、消防署等の関係機関の調査結果の聴取等が必要です。
損害の調査については、人損と物損に分けた損害の査定、とりわけ人損については入院期間、休業期間、治療費、後遺症の程度、被害者の収入等の調査が必要です。
製品及びその環境の調査については、事故時の製品の状態、製品の修理やクレーム歴、流通経路などの調査が必要です。以上の調査結果は文書にして記録保存しておく必要があります。

製品回収(リコール)

(イ)
製品回収の検討
製造業者等は、製品中に事故に結びつく可能性のある潜在的な危険のあることが判明した場合、ユーザーから製品の不安全な状態についての苦情があった場合、製品が国の法律、規則、基準等から逸脱していることが判明した場合等には、すみやかに製品回収を検討すべきです(リコール後の修理点検にもかかわらず、走行中炎上した輸入高級車の製造物責任が認められた事例として、東京地判平15.5.28 判時1835号94頁)。
(ロ)
製品回収の決定
製品回収を行なうか否かの決断は、早期に行なう必要があります。しかし、現実には、製品回収には(a)企業イメージの低下、(b)売り上げへの影響、(c)係争中の訴訟への影響、(d)回収費用の負担等重大な問題を伴うために決断が遅れ、事態が悪化するケースがよくあります。製品回収を行うか否かの決断を早期に下すため、製品回収を検討すべき事態が生じた場合の対応マニュアルを作成し、製造物責任対策組織を確立し、日頃の情報の収集に心がけ、さらに緊急事態発生時点での対応計画、発生後の復旧運営計画、代替計画等を事前に確立しておくことが必要です。
(ハ)
製品回収の実施
(a)
通知
まず製品回収するに際し、通知を発することが必要です。製品回収の通知の相手方は消費者、販売店、リース会社、修理・アフターサービス業者、原材料・部品メーカー等です。その方法には、リコールレターの送付、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等のマスメディアの利用、電話・ファックス、直接訪問などがあります。通知に際しては、被害の緊急性等を考慮に入れ、最も効果的な手段を選択することが必要です。
また、回収通知は、前記顧客のほか、社内関連部、関連官庁、保険会社等にも適切な形で送付することが望ましいといえます。
(b)
製品回収
回収の方法には、製品の回収、交換部品の供給、警告レターの送付等、欠陥製品の被害の程度に応じたいくつかの方法があります。
製造業者等は製品回収に備え、回収ルートの検討、ユーザー等の顧客リストの維持管理、製品回収基準の設定等の準備をしておく必要があります。
(c)
製品回収記録の保存
製品回収努力をしたという事実は、製造物責任訴訟において有利に斟酌される事情となる場合もありますので、送付先のリスト、送付の日付、レターサンプルなどは整理して保存しておくことが必要です。
(d)
製品回収費用対策
製品回収に要する費用は、製造物責任保険の対象とはなりません(リコール費用につき特約を締結している場合は別となります。)。
このため、企業は回収費用を定期的に積み立てたり、また販売店、部品・原材料メーカーとの間で、製品回収費用の分担についての取り決めをしておくなどの準備も必要となります。

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