製造物責任の責任期間

製造物責任マニュアル

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製造物責任の責任期間

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製造物責任の責任期間はどのように定められているか。

製造物責任法の定め

製造物責任法は5条に以下のような規定を置いています。
(期間の制限)
第5条
第3条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき。
その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したとき。
人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。
第1項第2号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

これは、製造業者等の責任期間を定めた規定で、製造業者等の責任を期間的に制限し、救済することを目的としています。すなわち、製品が市場で使用されている限り、いつまでも責任追及されるとすれば、製造業者等は証拠の散逸等により一方的に不利となることを回避しようというのがその立法趣旨です。
ところで、アメリカやECでは、製造物責任の期間制限に関して出訴期限と責任期間という2つの制度が存在します。
出訴期限は、手続法上の問題として訴えそのものを期間的に制限するもので、ここでいう責任期間とは異なります。

製造物責任法5条の解釈

民法724条は、不法行為の損害賠償請求権の消滅時効に関し、次のように定めています。
第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
不法行為の時から20年間行使しないとき。
(イ)
製造物責任法5条1項1号の規定は、民法724条1号の規定と同内容となっています。
したがって、この規定の解釈をする際には、民法724条1号の解釈がそのまま当てはまります。
まず「被害者」とは、直接的被害者だけではなく、その遺族や近親者等の間接的被害者も含まれます。
次に「損害を知る」とは、損害の程度や数額を具体的に知ることまでは不要ですが、加害者の行為が違法であること及びそれによって損害が発生したことを知らなければなりません。また「賠償義務者を知る」とは、その姓名まで知ることは不要とされています。
民法724条では「加害者」と規定されており、これが不法行為者を指すのか、損害賠償義務者を指すのか争いのあるところでしたので、製造物責任法では、この点を「賠償義務者」と規定しています。
(ロ)
ところで、本条1項2号は、長期の責任期間の制限について規定しています。
民法724条2号が「不法行為の時から20年」と規定しているのに対し、製造業者に有利な規定となっています。これはEC指令が、製品が製造業者等によって流通過程に置かれた日から10年間の期間制限を定めていることの他、(a)製品の合理的な耐用期間とそのためのコストの決定、(b)製造業者等の書類保存の負担の目安の必要性、(c)法律関係の早期安定化、(d)保険等でカバーするリスクの明確化などの理由によるものとされています。
もっとも、期間の長さについては、製品によって耐用年数や危険度が異なることから、民法の原則を修正することに対しては反対意見もあり、これらの点を考慮して、同条3項が特則を規定しています。
なお、10年という責任期間の終了した後も、故意・過失を立証して製造業者の不法行為責任を追及することは可能です。
同期間について、従来は除斥期間と解されていましたが、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号。
以下「民法改正整備法」といいます。)に基づく製造物責任法の一部改正により、時効期間であることが明記されました(なお、経過措置として、改正前の製造物責任法5条1項後段に規定する期間(製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年)が、民法改正整備法の施行(2020年4月1日)の際、既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による(除斥期間と解される)とされています。)。
(ハ)
また、同条1項1号の3年の時効期間に関し、人の生命又は身体という利益は、財産的な利益に比べて保護すべき度合いが強く、権利行使の機会を確保する必要性が高いことから、同条2項は以下のとおり規定しています。
「人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。」
同項の規定は、民法改正整備法に基づく製造物責任法の一部改正により追加されたものであり、民法724条の2の規定と同内容となります(なお、経過措置として、改正前の製造物責任法5条1項前段に規定する時効(被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から3年)が民法改正整備法の施行(2020年4月1日)の際、既に完成していた場合については、改正後の製造物責任法5条2項の規定は適用しないとされています。)。

外国の立法例

(イ)
アメリカ
アメリカでは、製造業者等の責任を期間的に制限する制度として、出訴期限と責任期間の2種類があります。
後者の責任期間は、出訴期限が「発見時ルール」を採用しているため、被害者が被害発生に気づくまで進行しないことによる製造業者等の負担を軽減するために設けられたものです。
すなわち、責任期間は、 製品が市場に流通している限り、いつまでも製造業者等に製造物責任を負わせることを防止するための制度です。
したがって、責任期間の始期は製品の製造・販売の時点とされます。そして州によって異なりますが、責任期間を10年とする州が多いようです(もっとも、責任期間を採用していない州も半数くらい存在しています)。
(ロ)
EU
EC指令では、責任期間に関連して以下の条文を置いています。
第11条
加盟国は、立法によって、被害者がその期間内に製造者に対する訴訟手続を開始しない限り、損害を惹起した製造物が製造者によって流通過程に置かれた日から10年の期間を経過した場合において、本指令に従って被害者に与えられた権利が消滅すべきことを定めるものとする。

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