保 険

製造物責任マニュアル

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保 険

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製造物責任保険にはどのような種類があるか。どのような内容となっているか。

はじめに

企業の製造物責任を担保する保険として、国内製造物責任保険(生産物賠償責任保険)と海外製造物責任保険の2種類があります。両者は、クレームの発生と損害賠償責任に関する訴訟の提起の場所で区分されます。原則として、日本国内で発生したクレームで日本国内で提起されたものが適用対象となるのが、国内製造物責任保険で、それ以外のものは海外製造物責任保険の対象となります。

国内製造物責任保険(国内PL保険)

(イ)
被保険者
製品を生産、販売、またはサービスの提供を行う企業が被保険者となります。
(ロ)
てん補される損害
被保険者が生産または販売した生産物が他人に引き渡された後、その生産物に起因して発生した偶然な事故ないしは被保険者が行った仕事の終了の後のその仕事の結果に起因して発生した偶然な事故により、他人に身体の障害を与えたり、他人の財物を損壊した場合に、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害がてん補されます。
(ハ)
支払いの対象となる損害、費用
(a)
損害賠償金
被保険者が被害者に支払うべき損害賠償金
(b)
損害防止軽減費用
事故発生後、他人に対する求償権の保全や損害を防止軽減するために必要な費用
(c)
応急手当費用等
(b)の損害を防止軽減するために必要な手段を講じた後、損害賠償責任のないことが判明した場合でも、応急手当等の緊急措置に要した費用やあらかじめ保険会社の同意を得た費用
(d)
保険会社への協力費用
被害者からの損害賠償請求に対して保険会社による解決を行う場合に被保険者が保険会社の要求に従い、協力するために直接要した費用
(e)
争訟費用
被保険者が、保険会社の書面による同意を得て支出した訴訟、仲裁、和解、調停、その他争訟に関する費用(弁護士費用を含みます)
(ニ)
てん補されない主な損害
(a)
次の事由によって生じた事故による損害
1)
保険契約者または被保険者の故意
2)
戦争、変乱、暴動、労働争議、騒じょう
3)
地震、噴火、洪水、津波などの天災
(b)
特約を付帯した場合を除き、被保険者が次の損害賠償責任を負担することによって被る損害
1)
被保険者と世帯を同じくする親族の身体の障害に対する損害賠償責任
2)
被保険者と世帯を同じくする親族が所有等をする財物の損壊に起因する損害賠償責任
3)
被保険者の使用人が被保険者の業務に従事中に被った身体の障害に起因する損害賠償責任
4)
被保険者と他人との間に損害賠償に関する特別の約定がある場合においてその約定によって加重された損害賠償責任
5)
被保険者が所有等をする財物の損壊について、その財物に対し正当な権利を有するものに対して負担する損害賠償責任
6)
排水又は排気に起因する損害賠償責任
(c)
被保険者が次の損害賠償責任を負担することによって被る損害
1)
生産物又は仕事の目的物の損壊自体に基づく損害賠償責任
2)
被保険者が故意又は重大な過失により法令に違反して生産、販売若しくは引き渡した生産物又は行った仕事の結果に起因する損害賠償責任
3)
被保険者が仕事の行われた場所に放置又は遺棄した機械、装置若しくは資材に起因する損害賠償責任
(d)
回収費用
生産または仕事の目的物の回収、検査、修理、交換等に要した費用及びこれらに関して被保険者の被る損害
(ホ)
対象生産物
保険の対象とする生産物や仕事の範囲を特定します。特定の製品や仕事のみを対象とすることもできます。また、既に市場に出荷した製品も保険の対象とすることができます。なお、被保険者や追加被保険者が行う製品の取付、修理、メンテナンスの作業も保険の対象に含むことができます。
(ヘ)
追加被保険者
被保険者の生産又は販売した保険証券記載の財物若しくは被保険者の行った保険証券記載の仕事に関する業務に起因して損害賠償の請求をされる可能性のある企業を追加被保険者とすることができます。
具体的には、製品製造メーカーが被保険者の場合の部品・原材料メーカー、OEMメーカー、販売業者等が挙げられます。
(ト)
保険適用地域
日本国内で発生したクレームで、日本国内で提起されたものが対象となります。ただし、土産品などとして海外に持ち出され、海外でクレームが発生する場合も特約により対象とすることができます。
(チ)
保険期間
(a)
保険期間は原則として1年です。
(b)
保険期間中に、事故が発生したものが保険金支払対象となります。したがって対象生産物であれば、保険期間以前に製造・販売されたものでも、PL事故が保険期間中に発生したものであれば対象となります。
(リ)
てん補限度額
てん補限度額を対人、対物別に次のように定めます。
(a)
対人
1)
1名当たり
2)
1事故当たり
3)
保険期間中総てん補限度額
(b)
対物
1)
1事故当たり
2)
保険期間中総てん補限度額
(ヲ)
免責金額
対人、対物別に1事故当たりの金額を定めます。免責金額を0とすることもできます。なお、保険事故におけるてん補限度額、免責金額の適用に当たり、同一の原因又は事由に起因する事故は、発生時間又は発生場所が異なる場合であっても1事故とみなされます。
(ワ)
保険料
保険料は年間売上高や領収金などにスライドして決定されます。
契約時には見込売上高等に基づく概算保険料を支払い、保険期間終了後に、確定売上高等に基づいて算出した確定保険料と過不足の精算を行います。なお、保険料は税務上、全額損金として取り扱われます。
(カ)
その他
保険会社は必要と認めたときは、被保険者に代わって自己の費用で被害者からの損害賠償請求の解決に当たることができることになっています。

海外製造物責任保険(海外PL保険)

(イ)
はじめに
海外PL保険は、日本の企業が海外に輸出する製品についての製造物賠償責任を担保するための保険です。この保険は、事故の発生場所が海外であることから英文約款が使用されています。保険料は税務上、全額損金として取り扱われます。
(ロ)
海外PL保険の概要
(a)
保険契約者、追加被保険者
完成品メーカー、部品メーカー、OEMメーカー、資材納入先メーカー、販売代理店、商社などが保険契約者となります。これらの保険契約者に追加して関連する企業を追加被保険者とすることができます。
(b)
てん補される損害
被保険者が製造・販売した商製品に起因して、日本国外で発生した事故により、他人に身体の障害を与え又は他人の財物を損壊した場合に被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害がてん補されます。
(c)
支払いの対象となる損害・費用
1)
損害賠償金
2)
訴訟費用
3)
上訴ボンド差押解除ボンドの保険料
4)
協力費用
5)
応急手当費用
(d)
てん補されない主な損害
1)
労働災害補償法、失業保険法若しくは身体障害福祉法又はこれに類し た法律によって被保険者に課せられた賠償責任
2)
被保険者の従業員が業務中に被った身体障害に対する賠償責任
3)
生産物の故障、不調、不具合等により、損壊は生じていないにもかかわらず、財物が使用不能となった場合の賠償責任
4)
生産物又はこれにその一部から生じた当該生産物それ自体の損壊に起因する賠償責任
5)
生産物又はこれに生産物と一体をなす財物に「瑕疵」があることが判明した場合、又はこれにその疑いがある場合のリコール措置に関する賠償責任
6)
契約により加重された賠償責任
7)
土地、大気、公共水域等への液体、気体の排出・流出に関する賠償責 任
8)
罰金、違約金、懲罰的賠償金(保険会社により対応が異なります)
9)
原子力事故に起因する賠償責任
10)
地震に起因する賠償責任
11)
アスベスト(石綿)に起因する賠償責任など
(e)
保険適用地域
保険の対象となる地域を約定します。保険適用地域を限定する場合には国名を特定します。
(f)
保険期間 ( Policy Period )
1)
保険期間は1年とします。
2)
賠償請求ベース ( Claims made basis policy )
保険の対象となる身体障害又は財物損壊の事故が、あらかじめ設定する遡及日 ( Retroactive Date ) 以降に発生したもので、保険期間内に賠償請求を受けたものが、保険金の支払対象となります。
(g)
保険対象製品
原則として保険契約者(記名被保険者)が輸出する全製品が対象となりますが、特定の製品のみを対象とすることもできます。
(h)
保険料
輸出金額にスライドして、個別事情を勘案して決定されます。
(i)
てん補限度額の設定 ( Limit )
原則として、対人・対物別に、1事故 (Each Occurence) 、期間中 (Aggreg-ate ) のてん補限度額を一致させてUSドル建てで設定します。
(j)
免責金額 ( Deductible )
原則として、設定しません。
免責金額を設定する場合は、Deductible特約を付帯します。
(k)
その他
この保険は一般的に示談代行保険のため、弁護士の手配、被害者との示談代行などを保険会社が行います。

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