製造物責任の主体-役務提供者

製造物責任マニュアル

製造物責任の主体-役務提供者

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製造物の設計業者、設置業者、修理業者、梱包業者、運送業者、倉庫業者等は製造物責任を負うか。

役務提供者の製造物責任についての基本的な考え方

製造物責任は、現代における製造物の大量生産、大量流通を背景に、欠陥ある製造物が一度流通過程に置かれると、消費者や利用者の身体や財産が危険にさらされることを考慮して、欠陥ある製造物を市場への流通過程に置いた者に対する無過失責任を問う制度です。したがって、製造物責任の主体となり得る者は、製造物の欠陥を作り出し又は製造物を流通過程の最初の段階に置いた者ということになります。製造業者や輸入業者は、製造物を流通過程の最初の段階に置いた者として、まず責任主体に挙げられます。また、販売業者や賃貸業者は製造物の流通過程において製造業者と密接な関係があるという点に鑑み、これを製造物責任の主体に含めるという立法例が多くなっています(ただし、我が国の製造物責任法は販売業者や賃貸業者を責任主体には含めていません)。
これに対し、設計業者、情報提供者、設置業者、修理業者は、製造物の欠陥の作出に対する寄与の程度は一般に低く、かつ、製造物を流通の過程に置く者でもありません。また、梱包業者、運送業者、倉庫業者は、製造物の流通に関与するものの、流通過程の最初の段階に関与する者ではありません。さらに別の面からみると、これらの者は製造物の欠陥の作出や流通に関与はしますが、その業務の本質は、ある者の依頼に基づく役務の提供にすぎないといえます。したがって、これらの者を製造物責任の主体とするのは、制度の趣旨からみて無理があると解されます。

我国の製造物責任法の規定と諸外国の実情

製造物責任法は、上記の理由により、これら役務提供者を製造物責任の主体には含めていません。
外国においても、役務提供者の製造物責任を否定する例が圧倒的に多いといえます。
EU諸国において役務提供者の製造物責任を認める立法例は見当たらず、米国においても、同様にこれを否定する判決例が大勢を占めています。例えば、1985年のいわゆるマーフィー事件において、カリフォルニア州最高裁判所は、処方箋薬の調剤及び販売を行った薬局につき、製造物責任(厳格責任)を否定しています。

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