製造物責任訴訟-出訴期限

製造物責任マニュアル

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製造物責任訴訟-出訴期限

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製造物責任訴訟を提起する際の出訴期限として、どのような制限があるか。

出訴期限の意義

一般に出訴期限というとき、2つの概念が混在しています。すなわち、狭義の出訴期限(以下、単に「出訴期限」といいます。)と責任期間です。
前者は、手続法上の問題とされ、「被害者は被害発生時から一定期間以内に提訴しなければならない」というものです。後者は実体法上の問題とされ、「製造業者等は製品が製造または販売されてから一定期間を経過した後は、製造物責任を免れる」というものです。
責任期間については、前章までにすでにご説明したとおりです。出訴期限という制度は、手続面から被害者の権利行使可能期間を限定するものです。実際問題、被害者が損害賠償請求権があるにもかかわらず、これをいつまでも行使しない場合、かかる請求権を保護しなければならない必要性は乏しいと言わざるを得ません。

製造物責任法の出訴期限の規定

製造物責任法は、出訴期間制限に関連する条文として次のような規定を置いています。
(期間の制限)
第5条
第3条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき。
その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したとき。
人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。
第1項第2号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

この法文の規定によりますと、我が国では製造物責任訴訟の出訴に際しての出訴期限は設けず、製造物責任の存続期間を定めるに止まっています。
したがって、後記のアメリカやECにおける規定とは異なっています。

外国の立法例

(イ)
アメリカ
アメリカで製造物責任訴訟を提起する場合、各州によって出訴期限の規定が異なっていますので、まず適用されるべき出訴期限法が決定されます。
さらに訴訟原因が過失責任か、契約責任か、あるいは厳格責任かによっても、出訴期限は異なります。
厳格責任の場合は、一般に不法行為についての過失責任の出訴期限が適用されます。通例、2~3年の州が多いといえます。被害者が死亡した場合は遺族が固有の訴訟原因をもつとする不法死亡法が多くの州で制定されており、この場合の出訴期限は、通常の不法行為とは別に被害者死亡から2~3年と定められている州が多いといえます。
出訴期限の始期は、過失責任については被害者救済の観点から、多くの州で「発見時ルール」を採用し、被害者が被害または欠陥と被害の因果関係に気づいたときとし、他方契約責任については、製品の販売がなされたときと定める州が多いようです。
(ロ)
EC指令
EC指令においても責任期間の他に、以下のような出訴期限の規定を設けています。すなわち、
第10条1
加盟国は、立法によって、本指令の規定する損害賠償訴訟手続について、3年の出訴期限を適用すべきことを定めるものとする。この出訴期限は、原告が、損害、欠陥及び製造者の身元を認識し、又は合理的に認識すべきであった日から進行を開始する。
    2
出訴期限の停止又は中断を定める加盟国の法律は、本指令によって影響を受けないものとする。

これによると、被害者が製造物責任訴訟を提起するためには、損害・欠陥及び製造者の身元を認識するか、合理的に認識すべきであった日から3年以内にしなければならないことになります。
もっとも「製造者の身元」や「合理的に認識すべきであった日」という解釈をめぐって、今後裁判上で争いになることが考えられます。

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