製造物責任の免責事由-部品、原材料製造業者等の免責事由

製造物責任マニュアル

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製造物責任の免責事由-部品、原材料製造業者等の免責事由

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ある製品の欠陥が、その製品を構成する部品や原材料の欠陥に起因している場合に、その部品や原材料の製造業者は責任を負うか。責任を負わないことがあるとすれば、それはどのような場合か。

部品、原材料の製造業者の責任についての基本的な考え方

ある製品(完成品)の部品や原材料も、それ自体が「製造物」、すなわち「製造又は加工された動産」にあたることは多いといえます。このような場合に、当該部品や原材料に欠陥があり、それが製品(消費者に届く最終製品)の欠陥の原因となっているときは、製品の製造業者とともに、当該部品や原材料の製造業者も、理論上当然に製造物責任を負うことになります。
しかし、我国においては、製造業者のほとんどは、いわゆる中小企業であり、これら中小企業の多くは、完成品の製造業者の注文を受けて、部品や原材料を製造してこれを完成品の製造業者に納入しており、これら部品や原材料の製造業者は、納入先から設計に関する指示を受け、これにそのまま従って部品や原材料を製造して、これを納入していることが往々にしてあります。
このように、納入先の指示どおりに部品や原材料を製造してこれを納入した場合に、その部品や原材料の欠陥に起因して、完成品に事故が生じたときに、その部品や原材料の製造業者が常に責任を負うとすれば、中小企業にとっては甚だ酷な結果となります。特に零細企業にとっては、製造物責任にもとづき多額の損害賠償を請求された場合、資金的にも応訴活動の面においても、大企業に比べてはるかに対応能力が劣るうえ、もし多額の損害賠償義務を課せられれば、たちまち企業の存続自体が危うくなる事態となります。
したがって、このような中小企業たる部品または原材料の製造業者の存在を念頭に置くと、何らかの救済規定を設けなければ、中小企業の業務意欲を削ぐ結果となり、ひいては国民経済の発展を阻害することにもなりかねません。
そこで、製造物責任法は、以下に述べるように、一定の要件のもとに部品、原材料の製造業者の免責を認める規定を設けました。

製造物責任法の規定

製造物責任法4条は、「当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がない」場合は、当該部品ないし原材料の製造者は、このことを証明したときに限って免責されると規定しました(4条2号)。
この規定は、EC指令7条(f)とほぼ同趣旨のものであり、イギリスの消費者保護法(4条(1)(f))及びドイツの製造物責任法(1条(4))にも同様の規定があります。
ところで、実際上、「設計に関する指示」には、
(イ)
設計図を交付される場合
(ロ)
指示書や依頼書等の書面により行われる場合
(ハ)
口頭で行われる場合

等、さまざまな形態があります。したがって、部品や原材料の欠陥に基づく事故が生じた場合に、この規定の適用の可否が争われる局面においては、製造物責任法4条2号の「設計に関する指示」があったといえるか否かが争点となります(自衛隊のヘリコプター墜落事故が発生し、その製造物責任が問題となったが、免責が認められなかった事例として、東京地判平24.1.30)。
この場合、部品や原材料の製造業者が免責されるためには、「設計に関する指示」があったことを自力で証明しなければなりません(製造物責任法4条)。
したがって、部品または原材料の製造業者としては、納入先から設計に関する指示や依頼を受けている場合は、普段からできる限りこれを書面化してもらったり、部品や原材料の納入時に検査を受け、その経過を記録に残しておく等の対策を打っておくことが極めて有用であるといえます。
なお、国会は中小企業たる製造業者も製造物責任法4条2号の部品製造業者の免責事由を自ら立証しない限り製造物責任を負うことにかんがみ、その負担の軽減を図る趣旨で、次のような付帯決議を行っています。
(a)
衆議院商工委員会
中小企業の負担軽減のため、製品安全対策、クレーム処理等についての相談、指導体制の充実を図るとともに、安全な製品を供給するための各種の活動につき積極的支援を図ること。
また、下請事業者に不当な負担を及ぼすこととならないよう十分な配慮を払うこと。
(b)
参議院商工委員会
中小企業者の負担を軽減するため、製品安全対策、クレーム処理等について相談・指導体制の充実を図るとともに、製品安全対策の推進のための積極的な支援を行うこと。
また、下請事業者に不当な負担を及ぼすこととならないよう十分配慮すること。

完成品の製造業者との間の法律関係

部品や原材料の欠陥に起因して、完成品から事故が発生したときは、通常の場合、その完成品にも「欠陥」があったことになりますから、被害者は当然完成品の製造業者に対しても製造物責任を問うことができます。この場合において、部品又は原材料の製造業者が製造物責任法4条2号により免責され、完成品の製造業者のみが被害者に対して製造物責任を負担することになったとしても、この完成品の製造業者は、後日部品や原材料の製造業者に対して、被害者に賠償した金額の全部又は一部の求償を請求することができます(民法442条1項)。
なお、部品性の抗弁を主張して争った事例(ピアノ用防虫防錆剤につき、東京地判平16.3.23 判時1908号143頁)もありましたが、納入された製品を化粧箱に入れて商品化するだけであるから、「製造」にも「加工」にも該当しないとして、部品性を否定してその主張を排斥しました。

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