製造物責任の責任事由-欠陥

製造物責任マニュアル

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製造物責任の責任事由-欠陥

集合写真
欠陥とは何か。欠陥の判断基準。

欠陥の意義及び判断基準の重要性

製造物責任は、製造物の欠陥に起因して人の生命、身体、財産に損害が生じた場合に、製造業者等の過失の有無を問わずに、製造物の欠陥を要件として製造業者等に損害賠償責任を課そうとする制度です。したがって、製造物の「欠陥」とは、具体的には何を指すのか、さらには欠陥の有無を認定する際の判断基準は、どのようなものかが極めて重要な問題となってきます。
これらの点については、古くから我が国及び諸外国において議論がなされ、実務上も、「欠陥」を明確かつ具体的に定義づけようとする試みがなされてきました。米国の判決例には、欠陥の意義や判断基準を詳しく摘示しているものが多く、EC指令やEC諸国の製造物責任法も、「欠陥」の定義規定を置いています。我国の製造物責任法も、このような趨勢に沿って「欠陥」の定義を規定しました。

我国の製造物責任法の規定

(イ)
欠陥の定義と判断基準
製造物責任法2条2項は、「欠陥」とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいうと規定しました。
すなわち、同条項は、欠陥とは、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいうものと規定し、これに該当するか否かを判断する基準として、
(a)
当該製造物の特性
(b)
その通常予見される使用形態
(c)
その製造業者等が、当該製造物を引渡した時期
(d)
その他の当該製造物に係る事情

を掲げています。
上記の(a)から(c)の事情は、上記(d)の「当該製造物に係る事情」の例示であり、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いている」か否かは、「当該製造物に係る事情」を総合的に考慮して判断するということになります。
国会審議においては、上記(a)から(c)の事項の意味内容について相当議論されており、これに関する政府委員の説明によると、
(a)
「当該製造物の特性」を考慮するとは、本来的には製造物自体が有する固有の事情を考慮するということであり、右固有の事情には、製造物の表示、製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間等が含まれる。
(b)
「通常予見される使用形態」を考慮するとは、製造物の使用に際しての事情を考慮するということであり、その際には、製造物の合理的に予期される使用(製造業者が本来予定するものだけではなく,使用者が予定するであろう使用形態を含む)、製造物の使用者による損害発生防止の可能性も考慮の対象とされる。
(c)
「製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」を考慮するとは、引き渡した時期にかかわる事情を考慮するということであり、その際は、製造物が引き渡された時期、あるいは技術的実現可能性が考慮の対象となる。

とされています。そして、このような諸要素を総合的に勘案して、欠陥の判断がなされることになると説明されています。このような審議の経過から見ますと、実務上は、上記(a)から(c)の事項が欠陥の存否を判断する際の重要な判断基準となります(製造物責任法施行前の事例ですが、乳児が手にしていたポテトチップスの袋の角が目に当たり負傷した事故につき、通常予想される使用形態でなかった事故として「欠陥」が否定された事例として、東京地判平7.7.24 判タ903・168)。
(ロ)
欠陥の存否の判断の基準時
前述のとおり、製造物責任法が、欠陥の存否の判断基準の一つとして「その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」を挙げていることからすると、欠陥の判断基準時は、製造業者等によって製造物が流通に置かれた時と解されます。
すなわち、「製造業者が当該製造物を流通過程に置いた時点で、当該欠陥が存したか否か」が立証課題となります。
製造物責任の法理が、現代社会において大量生産・販売される工業製品を消費者が日常生活の各方面で利用・消費していることを背景に、ひとたび安全性に欠けた製品が市場に流通すると、消費者、利用者は、たちまち事故発生の危険にさらされることを考慮して、安全性に欠けた製造物から事故が生じた場合の消費者被害の救済を図ることを目的として発達してきた考え方であることに照らすと、この結論は当然のことであると思われます。
(ハ)
輸血用血液製剤に関する特別の配慮
製造物責任法の立法過程において、輸血用血液製剤を「製造物」に含めるか否かが相当議論されました。輸血用血液製剤は、生命の危機に際して使用されるものであり、他に代替する治療方法がなく、極めて有用性が高い反面、技術的に世界最高水準の安全対策を講じても、ウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない(加えて、一般に輸血用の血液製剤には、これら副作用の危険があることの警告表示がなされています)という特性があります。
このような本来的な特性をもつ輸血用血液製剤についての加工、製造業者ないし輸入業者に無過失責任を課すと、血液事業に支障を生じさせ、ひいては血液の安定供給が阻害されるのではないかという問題意識が、この議論の背景にあるものといえます。
この点については、製造物責任法の審議において、政府委員は、おおむね次のような見解を述べています。
(a)
輸血用血液製剤には、全血製剤、血液成分製剤、血漿分画製剤の3種があり、これらはいずれも「加工された動産」として「製造物」に該当する(なお、前二者は血液に保存液や抗凝固剤を加えて作られるもの、後者は血液を原料として、これに高度な加工を加えたものです)。
(b)
現在の科学技術の水準のもとで、技術的に排除できないウイルス等の混入や、免疫反応による副作用は、「欠陥」に該当しない。

以上のような審議の経過を受けて、国会は、製造物責任法に関し、次のような附帯決議をなしています。
(a)
衆議院商工委員会
1)
本法は、製造物の欠陥によって生じる責任のあり方を基本的に改めるものであり、その内容について、一般消費者、中小企業者等に的確に周知を図り、被害者救済を適切に実現するため、当委員会の審議を通じて明らかにされた立法の趣旨、条項の解釈等につき、関係者に十分周知徹底されるよう各般の方法による広報に努めること。
特に、輸血用血液製剤については、その特殊性にかんがみ、審議における政府見解の周知徹底を図ること。
2)
日本赤十字社の血液事業について、現場の業務手順の作成等により、同社の職員が安心して業務ができるよう措置するとともに、献血者の問診等が献血者にとって煩雑なものとならないよう配慮し、必要な協力が得られるようにすること。
(b)
参議院商工委員会
1)
輸血用血液製剤の欠陥については、その使用が緊急避難的なものであること、副作用等についての明確な警告表示がなされていること、世界最高水準の安全対策が講じられているものであること等、当委員会の審議を通じて明らかにされた製品の特殊性を考慮して総合的に判断されるものであることを周知徹底すること。
2)
輸血用血液製剤による被害者の救済については、その特殊性にかんがみ、特別の救済機関等の設置に努めること。
(ニ)
行政上の製品安全基準の位置づけ
特定の製造物に関しては、行政庁が製品の種類ごとに各種の製品安全規制を定め、そのなかで各種の製品安全基準が設けられています。
このような安全基準をクリアーした製造物に起因して、事故ないし損害が生じた場合、当該製造物には「欠陥」があるといえるのかどうかが問題となります。この点に関し、製造物責任法の審議過程においては、政府委員は要旨次のように答弁しています。
「行政上の安全基準は、一般的に、製品が製造・販売に際して充足すべき安全性に関する最低基準を定めた行政上の取締規定であり、副次的には、企業の製品安全対策あるいは消費者の購入及び使用にかかわる評価のガイドラインとしての意味も持っている。これに対し、製造物責任は、製造業者が欠陥のある製品を製造して流通させて、その欠陥に起因して被害が生じた場合に、そのような製造物を製造して市場に流通させたところに帰責性を認める制度であり、上記取締規定とは趣旨、目的を異にする。行政上の安全基準をクリアーした製造物であっても、これを市場に流通させるか否かは、製造業者の判断によるものであり、このような製造物から事故が生じた場合には、製造物責任の問題は依然として残る。
ただし、このような安全基準に適合しているか否かという点は、当該製造物から事故が生じた場合に、その事故に係る損害賠償訴訟において、欠陥判断における重要な考慮事項の一つになる。
なお、行政庁の定める規制に従って製品を製造したことによって欠陥が生じた場合の国の責任については、国家賠償法1条が適用され、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失」があれば、国も損害賠償責任を負う可能性がある。」

諸外国の実務

(イ)
米国
1963年にカリフォルニア州最高裁判所のグリーンマン事件の判決が、製造物の「欠陥」から生じた損害賠償責任につき、いわゆる厳格責任理論(製造物の「欠陥」による損害については、製造者の過失の有無を問うことなく責任を認めるという考え方)を承認して以来、厳格責任理論は、その後の多数の判例の集積により発展してきました。
厳格責任理論においては、「欠陥」の存否の認定こそが重要であり、欠陥の存否を判断する基準に関し、次のような考え方が発展してきました。
(a)
欠陥の分類
欠陥をその発生過程の観点から次の3種に分類し、欠陥判断基準定立の一助とするという考え方があります。
1)
設計上の欠陥
製造物の開発、設計段階で発生する欠陥であり、この段階において十分に安全性に配慮しなかったために、製造される製造物全体が安全性に欠けるに至った場合をいいます。
2)
製造上の欠陥
製造物の製造段階において発生する欠陥であり、製造物の製造過程で粗悪な材料が混入したり、製品の組立に誤りがあったなどの原因により、製造物が設計・仕様どおりに作られず安全性を欠くに至った場合をいいます。
3)
警告上の欠陥
製造物の設計や製造に欠陥は存在しないが、その製造物が適切な警告や指示を伴っていないことによって、製造物そのものが欠陥を有するものと評価される場合をいい、とくに有用性ないし効用を維持するために、どうしても除去しえない一定の危険性が存在する製品について、多く問題となるものです。
欠陥の判断基準の観点から、欠陥を上記のような3種類に分類する実益は、次の点にあると解されます。
イ.
製造上の欠陥については、当該製造物が設計、仕様どおり作られたか否かという事実の認定が、欠陥の判断に当たって重要となります。そして、製造上の欠陥では、原因のいかんを問わず、結果的に製造物が安全性に関する面で設計仕様どおり製造されていなければ、欠陥があると強く推認されることになります。
ロ.
設計上の欠陥及び警告上の欠陥については、製造物の設計や警告書作成の段階で、製造業者が製造物の効用、安全性、経済性、消費者の嗜好などさまざまな要素を勘案しながら、多数の選択肢の中から選んだ一定の選択が適切であったか否かという価値判断が、欠陥の判断に当たって重要となります。この場合、最終的には裁判官が、「通常人」の立場に立って通常有すべき安全性の基準を探究し、当該設計や指示・警告がこの基準に適合しているかどうかを評価することになります。
(b)
欠陥判断基準としての公式
欠陥の存否を判定するための公式として、以下のような考え方があります。
1)
標準逸脱基準
標準逸脱基準とは、製造業者の意図した設計や仕様から製造物が逸脱していた場合において、欠陥の存在を認める考え方です。前記欠陥類型のうち、製造上の欠陥に関して、この標準逸脱基準はまさに妥当なものとして機能します。
しかし、設計上の欠陥、指示、警告上の欠陥においては、製造物は製造業者の意図した設計や仕様に合致しており、標準逸脱基準をもって欠陥の認定基準とすることはできません。
2)
消費者期待基準
消費者期待基準は、不法行為第2リステイトメント402条Aの注釈iにおいて示されている欠陥認定基準であり、米国においてもっとも広く適用されています。消費者期待基準では製造物が通常の消費者の期待する安全性を欠くものであった場合、すなわち、通常の消費者の予期する以上に危険なものであった場合において欠陥を有するものと判断されます。しかし、ここにいう消費者とは、具体的にはその製品についてどのような知見をもつ者を想定しているのか、また一般的にどのレベルの者を指しているのか、また、そのような者が正当に期待することができる安全性とはどういうものなのか、判定基準としては著しく不明確で、実際に判定する段になると、あまり役に立たないと考えられます。そこで、消費者期待基準というのは、欠陥の有無を判定する基準というよりも、さまざまな要素を考慮する過程で、各要素の評価を消費者の立場にたって行うという、評価の基本的立場を示したものと考えるのが妥当であるといえます。
3)
危険効用基準
危険効用基準は、製造物の有する危険性と有用性とを比較、衡量し、危険性が有用性を上回る場合に、欠陥の存在を認めるという考え方であり、米国において消費者期待基準と並んで広く用いられています。
この危険効用基準において最も重要なのは、製造物の危険性と有用性を比較衡量するに当たって、どのような要素を考慮すべきかということです。
危険効用基準において考慮すべき要素については、それぞれの事例によって異なっており、これを一般的に提示することはとても困難です。しかし、この危険効用基準における判断要素を最も一般的な形で示した試みとして、ウェード教授の見解があります。
これによれば、
イ.
当該製品の有用性と望ましさ
ロ.
同一の需要を満たすより安全な代替製品の利用可能性
ハ.
被害の重大性と蓋然性
ニ.
危険の明白さ
ホ.
危険についての共通した知識と通常の一般人の予期
ヘ.
製品を使用する際、使用者の注意によって被害を回避できる可能性
ト.
製品の有用性を著しく阻害し、又は過大な費用を掛けることなく 危険を除去できる可能性

という7要素を比較衡量すべきものとしています。我が国においても、輸入された医薬品の欠陥の有無を判断する上において、名古屋地判平16.4.9 判時1869・61、判タ1168・280は、(イ)当該医薬品の効能、(ロ)通常予見される処方によって使用した場合に生じうる副作用の内容及び程度、(ハ)副作用の表示及び警告の有無、(ニ)他の安全な医薬品による代替性の有無、(ホ)当該医薬品を引き渡した時期における薬学上の水準等の諸般の事情を総合考慮して判断するのが相当であるとして、当該医薬品の欠陥を認めた事例があります。
危険効用基準は、設計段階における欠陥を判定するのに最も適しています。複数の設計の可能性の中から効用が大きく危険のより少ないものを選択することが望ましいからです。警告上の欠陥の判定に際しても危険効用基準を利用することはできますが、その際には、製品の効用と危険の比較ではなく、危険の大きさに応じてそれを消費者に認識させ、回避措置をとらせるに足るだけの明白、かつわかりやすい表示がなされているかどうかが重要です。
(ロ)
EU諸国
(a)
EC指令
EC指令6条1項は、
製造物は、次の各号を含むすべての事情を考慮した上、正当に期待されるべき安全性(Safety)を提供しない場合において、欠陥を有するものとする。
1)
製造物の形相(presentation)
2)
合理的に予期しうる製造物の使用
3)
製造物が流通過程に置かれた時期

と規定し、同6条2項は、
製造物は、より良い製造物が後に流通過程に置かれたことのみを理由として、欠陥を有するものとはみなされない。
と規定しています。
(b)
イギリス
イギリス「消費者保護法」は、欠陥の意義につき、次のように規定しています。
製造物は、一般に人が正当に期待すべき安全性(safety)を欠く場合において、欠陥(defect)を有するものとする。ここにおいて、「安全性」とは、製造物に関し、死亡又は身体傷害の危険性という意味における安全性のみならず、その製造物に付合された製造物の安全性及び物的損害の危険性という意味における安全性をも含むものである(3条1)。
また、同法は、「製造物について一般に人が正当に期待すべき」安全性の存否を判断する基準として、下記のものを挙げています(3条2)。
1)
製造物の販売方法及び販売目的、製造物の形状(get-up)、製造物に関する標章の使用並びに製造物に関する行為及び行為の禁止に関する指示又は警告
2)
製造物に関して合理的に予期しうる行為
3)
製造物が製造者から他の者に供給された時期
(c)
ドイツ
ドイツ製造物責任法は、欠陥の意義及び判断基準につき、次のように規定しています。
製造物は、特に次の各号を含むすべての事情を考慮した上、正当に期待し得る安全性(Sicherheit)を提供しない場合において、欠陥を有するものとする(3条)。
1)
製造物の形相(Darbietung)
2)
当然に予期しうる使用
3)
製造物が流通過程に置かれた時期

製造物責任法の下において「欠陥」の存否が問題となると予想される事故類型

(イ)
製造物の欠陥から製品事故が発生し、人の生命、身体、財産に損害が生じた事例は、我が国の判例に現われているものだけでも、極めて多数にのぼります。
米国やEC諸国で生じた製品事故の事例は、無数に存在します。
製造物責任法施行前の、これら過去の裁判例に現れた各種の製造物の欠陥に起因する事故の中で、問題となった「製造物の欠陥」を分析することは、製造物責任法で定める「欠陥」に該当するかどうかを判断する上においても、大いに参考になる方法であります。特に、製造物責任法が施行されてからの裁判例の蓄積もそれほど十分であるとはいえない現状において、「製造物の欠陥」の判断基準を深化させるためには、過去の裁判例の検討は不可欠であり、極めて有用な手段であると思われます。
そこで、過去の判決例において問題となった各種製造物の欠陥が、製造物責任法2条2項にいう「欠陥」に該当するか否かという観点から、過去の主な判決例を分類することとします。さらには、製造物責任法施行後の裁判例も加えることによって、実際の裁判例では、どのような製造物の「欠陥」が認定されたか、あるいは認定されなかったかが明確になっていくものと思います。
(ロ)
判決例の分類
(a)
医薬品
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
キノホルム(副作用としてスモン病発生)
金沢地判昭53.3.1 判時879号26頁
東京地判昭53.8.3 判時899号48頁
福岡地判昭53.11.14 判時910号33頁
広島地判昭54.2.22 判時920号19頁
札幌地判昭54.5.10 判時950号53頁
京都地判昭54.7.2 判時950号87頁
静岡地判昭54.7.19 判時950号199頁
大阪地判昭54.7.31 判時950号241頁
前橋地判昭54.8.21 判時950号305頁
ロ.
クロロキン製剤(副作用により眼障害発生)
東京地判昭57.2.1 判時1044号19頁
東京地判昭62.5.18 判時1231号3頁
ハ.
グアノフラシン(点眼薬で使用の結果.睫毛.目瞼縁白変症となったケース)
東京地判昭30.7.14 下民集6巻7号1440頁
ニ.
ストレプトマイシン(肺結核治療薬品で副作用により全聾)
東京地判昭53.9.25 判時907号24頁
東京高判昭56.4.23 判時1000号61頁
ホ.
ミオブタゾリシン(筋肉痛治療薬品で、副作用として劇症肝炎により死亡)
福岡地小倉支判昭55.11.25 訟月27巻4号661頁
ヘ.
グレラン注射財(筋肉注射剤で、副作用として筋短縮症)
名古屋地判昭60.5.28 判時1155号33頁
ト.
漢方薬に含まれるアリストロキア酸(副作用による腎機能障害)
名古屋地判平14.4.22 判時1866号108頁
名古屋地判平16.4.9 判時1869号61頁
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
コレステロール低下薬(メバロチン及びベザトールの併用投与による健康被害)
東京地判平22.5.26 判時2098号69頁
ロ.
抗がん剤イレッサ(副作用による間質性肺炎)
最判平25.4.12 判時2189号53頁

「医薬品は,人体にとって本来異物であるという性質上,何らかの有害な副作用が生ずることを避け難い特性があるとされているところであり,副作用の存在をもって直ちに製造物として欠陥があるということはできない。むしろ,その通常想定される使用形態からすれば,引渡し時点で予見し得る副作用について,製造物としての使用のために必要な情報が適切に与えられることにより,通常有すべき安全性が確保される関係にあるのであるから,このような副作用に係る情報が適切に与えられていないことを一つの要素として,当該医薬品に欠陥があると解すべき場合が生ずる。そして,前記事実関係によれば,医療用医薬品については,上記副作用に係る情報は添付文書に適切に記載されているべきものといえるところ,上記添付文書の記載が適切かどうかは,上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む。),当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力,当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して,上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断すべきものと解するのが相当である」とし、指示・警告上の欠陥があるとはいえない旨判示している。
(b)
食料品
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
ひ素ミルク
最判昭和44.2.27 判時547号92頁
ロ.
卵豆腐
岐阜地大垣支判昭48.12.27 判時725号19頁
サルモネラ菌に汚染されていた卵豆腐(製造過程で殺菌措置をとっていない)を食べて死亡したケース。
ハ.
カネミ油
福岡地判昭52.10.5 判時866号21頁
福岡地小倉支判昭53.3.10 判時881号17頁
食用油製造に使用される熱媒体である塩化ジフェニール(PCB)を主成分とするカネクロール400という液状の合成化学物質が油のなかに混入したため、これを食用にした利用者が皮膚、内臓、神経等の疾患を伴う被害を受けたケース。
ニ.
異物が混入したジュース
名古屋地判平11.6.30 判時1682号106頁
ホ.
ボツリヌス菌が存在していた瓶詰めオリーブ
東京地判平13.2.28 判タ1068号181頁
ヘ.
シガテラ毒素が含まれたイシガキダイ
東京地判平14.12.13 判時1805号14頁、判タ1109号285頁
ト.
加工あまめしば
名古屋高判平21.2.26
チ.
塩蔵マッシュルーム
東京地判平25.12.5 判時2215号103頁
「・・・原料に使用した食品に異臭を生じさせるような商品はそれ自体として商品価値が全くないものである上に、・・・マッシュルーム製品から検出されたクロロフェノール類の量が健康に対して有害な影響が現れる量ではないという検査結果が出ているとしても、異臭を発生させるに足りる分量のクロロフェノール類が付着した食品には人体に対する十分な安全性が担保されているものとはいえない。そうであるから、このような異臭を発生させた食品の原料であり、異臭の発生原因であるクロロフェノール類を生成する前駆物質であるフェノール類が付着した・・・塩蔵マッシュルームには、人体に対する十分な安全性が欠けていたものといわざるを得ない。」と判示し、欠陥を認定している。
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
馬刺し(その一部からO157が検出)
東京地判平16.8.31 判時1891号96頁
輸入後に加工して販売した馬肉からO157が検出されたが、どの時点で細菌に感染したかのが不明であることから、輸入業者の製造物責任を否定したケース。
ロ.
こんにゃくゼリー
大阪高判平24.5.25
指示・警告上の欠陥を否定。
(c)
自動車
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
背もたれの異常
東京高判昭52.7.4 判時863号47頁
軽4輪自動車の後部座席に同乗していた人が急停車の際、手を掛けていた助手席の背もたれが前方に倒れ、それによってフロント部分に顔面を打ちつけて傷害を負ったケース。
ロ.
ブレーキ故障
東京高判昭48.5.30 判時707号59頁
ハ.
フォグランプ配線火災
浦和地判平元.8.30 判タ721号195頁
自動車にフォグランプを取付け、これを運転していたところ、アクセルリンケージ付近から出火したというケース。
ニ.
フロントサイドマスクによる受傷
仙台地判平13.4.26 判時1754号138頁
ホ.
運転中にアクセルレバーが全開となる異常発生による事故
札幌地判平14.11.22 判時1824号90頁
ヘ.
走行中エンジンルームから出火し全焼
東京地判平15.5.28 判時1835号94頁
ト.
エアバッグが暴発して、運転者が負傷した事故
東京地判平21.9.30 判タ1338号126頁
車両が停車中に何らの衝撃がないのに運転席側のエアバッグのみが作動して暴発したのは、製造物責任法3条にいう欠陥に該当すると判断した。
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
自動車電動装置
福岡地判昭50.3.11 判時791号105頁
前方走行車(大型トラック)の自動車伝導装置(ピローブロック)の一部が脱落し、これに乗り上げた後続車がガードロープに激突してその運転者が死亡したケース。装置に構造上の欠陥はないと判断。
ロ.
高速走行中の安全性欠如
福岡地判昭52.2.15 判時869号91頁
高速走行中安定性を失い、蛇行した結果、事故が発生したケース。
ハ.
安全ベルト取付金具
京都地判昭48.11.30 判時738号89頁
自動車の安全ベルト取付金具によって傷害を負ったケース。
ニ.
ダンプカーの荷台の落下
福岡地判昭50.5.20 判時801号76頁
ダンプカーの荷台が下がらなかったので、これを運転していた被害者が荷台と車体フレーム間に頭部を突込み装置を点検していたところ、荷台が落下し頭部をはさまれて死亡したというケース。本判決は、事故前9か月間の使用中に同様の干渉故障が起こったことがないこと、設計上は右干渉故障を生ずる可能性がないこと及び使用中にある程度構造上の完全性が損なわれることは当然であることの3点を根拠に、製造当時から事故時にみられた欠陥が存在していたとはいえないと判示するとともに、また他の同型車(約440台製造されていた)について同様の干渉故障が生じたという苦情を被告が受けたことがない点を根拠に、通常の使用によって右干渉故障を生じる可能性があるような設計上又は構造上の欠陥が潜在していたともいえないと判示し、欠陥の存在を否定。
ホ.
タイヤ破裂
東京地判昭53.3.27 判タ369号242頁
タイヤに空気を注入していたところ、タイヤのチューブ内縁が全周破裂し、ホイールを締めつけていたボルトが破断してホイールがはじき飛ばされ、これが身体に当たり傷害を負ったというケースで、タイヤの空気圧が異常に高かったと推認し、ボルト、タイヤないし自動車の欠陥を否定。
ヘ.
走行中自動車の左前が沈み込む異常発生による事故
大津地判平8.2.9 判タ918号187頁
「自動車事故について、いわゆる製造物責任を追及する原告としては、第一次的に、当該自動車の合理的な使用期間中に、通常の使用方法で使用していたにもかかわらず、身体・財産に危険を及ぼす異常が発生したことを主張・立証することで一応の「欠陥」の主張・立証として足りると解すべきである。」とした上で、「原告らが主張するような異常が本件自動車に生じたとは認められ」ないとして原告の主張を排斥した。
ト.
中古自動車が走行中に発火し焼損した事故
大阪地判平14.9.24 判タ1129号174頁
「製造時から相当期間を経過した後中古車として本件車両を取得し、さらに約1年半後本件事故が発生したが、その間、被告以外の第三者による整備・点検が繰り返された事案においては、原告らの主張するように、製造段階における「欠陥」の存在を前提として、「欠陥」の特定の程度を緩和し又は「欠陥」の存在を一応推定することはできないものと解するのが相当である。」と判示し、「欠陥」を根拠付ける主張立証がないとして原告の主張を排斥した。
チ.
坂道に停車中の車が後退し、車外にいた運転者が死亡した事故
東京地判平21.10.21 判時2069号67頁
運転者が行ったトランクの開閉作業その他の原因による衝撃を受けて車両が後退を始め、本件事故に至ったと推測することが不合理とまではいえないことから、車両の欠陥を否定した。
リ.
RV車が下り坂で横転した事故
高松地判平22.8.18 判タ1363号197頁
取扱説明書にセダン車よりも重心が高いためバランスを崩し易くなる危険性がある旨が記載されていなくても、指示・警告上の欠陥があるとはいえないとし、さらに、事故自体が、重心が高く横転しやすいという車両の特性により引き起こされたとまではいえないとした。
ヌ.
安全装置の不作動による事故
東京地判平23.3.29 判タ1375号164頁
衝突時にシートベルトテンショナー及びエアバッグが作動しなかったのは、衝突の際の衝撃が、装置が作動する基準値(閾値)に達しなかったためである可能性があることから、欠陥の存在を否定した。
(d)
器 具
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
バドミントンラケット
神戸地判昭53.8.30 判時917号103頁
遊戯中、ラケットの握り手から柄が抜けて飛び出してきたため、負傷。
ロ.
アーチェリー玩具
大阪地判昭61.2.14 判時1196号132頁
アーチェリーの矢が眼に突き刺さり失明(矢の先に付いているゴム製の吸盤が、発射前にはずれていた)。
ハ.
暖房機スイッチ
東京地判平2.2.23 判時1364号45頁
スイッチ製造業者が、スイッチの絶縁体にアークより炭化しやすいベークライトを使用しながら、固定接点と絶縁体の間隔をアークによる炭化を避けられない狭さにしたためにスイッチの毀損を生じ、火災が発生。
ニ.
潜水具
鹿児島地判平3.6.28 判時1402号104頁
空気残量計が空気の残量を正確に表示していなかったというケース。
ホ.
足場台
京都地判平18.11.30 判時1971号146頁
足場台の天板の上に立って作業をしていたところ、突如、足場台の脚が変形し、使用者が負傷したケース。
ヘ.
電気ストーブ
東京地判平20.8.29 判タ1313号256頁
電気ストーブから有害な化学物質が発生し、健康被害が生じた事案において、欠陥を認定した。
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
幼児用防護柵(ベビーガード)
神戸地尼崎支判昭54.3.23 判時942号87頁
1年3か月の女児が、父母らが眼を離した際に2階部屋と階段踊場との境に設置された幼児用防護柵に頚部をはさんで窒息死。
ロ.
金槌
京都地判昭58.3.30 判時1089号94頁
釘抜作業中、釘抜の頭部に金槌を打ちつけたところ、金槌の角縁部先端の微小片が欠けて左眼に飛び込み失明(使用方法に問題あり)。
ハ.
ガスストーブ
東京地判昭59.3.26 判時1143号105頁
ガス回路部に綿ぼこりが付着していたため異常燃焼を起こし、着衣に引火し火傷を負った。
ニ.
遊戯用そり
富山地高岡支判平2.1.31 判時1347号103頁
ホ.
ガスファンヒーター付近から発生した火災
大阪高判平13.11.30 判タ1087号209頁
本件火災の原因につき、「控訴人の供述や本件意見書は、全面的に信用することができるというものではなく、他方、スプレー缶の爆発の可能性も否定できないことからすると、結局、本件火災の原因が本件ガスファンヒーターからの出火によるものであると認めることはでき」ないとして、欠陥を認めなかった。
へ.
石油ストーブから発生した火災
甲府地判平24.5.22
本件石油ストーブはリコールが実施されていた製品であったが、その公表されている火災発生のメカニズムと、本件火災の状況が明らかに異なることから、石油ストーブの欠陥に起因して火災が発生したとは考え難いとした。
(e)
機 械
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
複写機
横浜地判昭49.1.25 判時747号93頁
複写機のニクロム線に傷があったため、複写機使用中にニクロム線が切断され、漏電が発生し、家人が感電死。
ロ.
石材カッター
高松地判昭55.11.28 判時1015号109頁
石材切断用ダイヤモンドカッターを使用中、ダイヤモンドの歯の1枚が折損して飛散し、右眼球破裂の傷害。
ハ.
除雪機(ドーザ)
長野地判昭61.3.27 判時1191号107頁
除雪作業中、方向転換のためにドーザを後退させようとして足をすべらせ、後方に転倒してドーザの下に巻き込まれ傷害を負った(このドーザには、グリップが取り付けられていなかった)。製造業者は、ドーザの用途に除雪作業も含めているのに、設計製造の段階においてグリップを取り付けると、疲労の原因や作業の遅れを生じさせ、あるいは半身の姿勢をとれないなどかえって危険であると判断して、グリップを取り付けないこととしたものであり、また取扱説明書では、ドーザの特長の一つとして除雪作業を掲げながら、危険なため使用すべきでない場所として狭い場所、足場の悪い場所、起伏の激しい場所とのみ表示し、除雪作業で足元の滑りやすい場所での使用が禁止されているかどうか使用者に判断しがたい記載をしていたというケース。
ニ.
テレビ
大阪地判平6.3.29 判タ842号69頁
事務所内に設置していたテレビが発煙、発火し、これによって発火した火災により事務所が全焼したというケース。
ホ.
プラスチック製の食品容器を裁断して自動搬送する機械
東京高判平13.4.12 判時1773号45頁
荷崩れが生じた場合の機械の処理について、原審と高裁の判断が分かれ、結論を異にしたものである。高裁判決では、「機械を停止せず、作業効率を犠牲にせずに、しかも安全に荷崩れ品を排除することは、十分に可能であったものと認められる。(中略)そうすると、まず、このような適切な排除策が講じられていなかった点で、本件機械は、通常有すべき安全性を備えていなかった、すなわち欠陥があったものと認めるのが相当である。又、仮にそうでないとしても、本件のような不適切な排除策を前提に本件機械を設計しておきながら、リフト上に手や身体が入ったときに本件機械が自動的に停止するような対策が講じられていなかった点で、本件機械には欠陥があったものと認めることができる。」と判示した。
へ.
携帯電話の発熱による火傷
仙台高判平22.4.22
携帯電話をズボンのポケットに収納したまま、こたつで居眠りをしたところ、太腿に火傷を負ったという事案で、「控訴人は,本件携帯電話をズボンのポケット内に収納して携帯するという、携帯電話機の性質上、通常の方法で使用していたにもかかわらず、その温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し、それが相当時間持続する事象が発生し、これにより本件熱傷という被害を被ったのであるから,本件携帯電話は、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているといわざるを得ず、本件携帯電話には、携帯使用中に温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し、それが相当時間持続する(異常発熱する)という設計上又は製造上の欠陥があることが認められる。」と判示した。
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
オイル・コンプレッサー
東京高判昭52.11.28 判時882号51頁
工場の動力源として使用されているオイル・コンプレッサー運転中に布切れ等をもってファン近くに接近し、巻き込まれて、手指に傷害(被害者側に異常な使用方法あり)。
ロ.
コンクリートカッター
浦和地判昭57.2.12 判タ474号178頁
コンクリートカッターを使用中、ダイヤモンド製ブレードが折損し、小破片が眼に入り、傷害を負った(ブレードは金属性ブレードカバーで覆われ、さらにブレードの斜め後方で金属性ブレードカバーに接着して水よけカバーが付けられていた)というケース。
ハ.
コンビット(コンクリートに釘を打込む機械)
福岡地判昭59.6.19 判時1125号146頁
取扱説明書には、動力源として圧縮空気を用いる旨及び使用時には火花が飛散することがあるので引火しやすいものや爆発しやすいものは遠ざけるべき旨の記載があった(ただし、動力源として圧縮酸素を使用してはならない旨の記載はなかった)というケース。
(f)
装置
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
サウナ風呂
東京地判昭55.4.25 判時975号52頁
サウナ風呂のベンチの木材部分が漸次炭化し、無炎着火したことにより火災が発生し、使用者が死亡。
ロ.
キューポラ(熔銑炉の一種)
大阪高判昭59.1.25 判時1113号80頁
キューポラが突然爆発。キューポラの溶接部が開放容器としての強度を具備していなかったことも爆発の一因。
ハ.
呼吸回路機器及び気管切開チューブ
東京地判平15.3.20 判タ1133号97頁、判時1846号62頁
いずれも設計上の欠陥を否定したが、いずれも指示・警告上の欠陥があったとして、製造物責任を認めた。
ニ.
カーオーディオ製品に用いられたスイッチ
東京地判平15.7.31 判時1842号84頁、判タ1153号106頁
設計上の欠陥について、「本件FTスイッチは、本件保証範囲の範囲内で本件短絡事故を発生し、その原因は銀マイグレーション現象によるものであって、銀マイグレーション現象自体は、よく知られた現象であり、接点の銀メッキを金メッキにするなどすれば、本件短絡事故は発生しなかったのであるから、本件FTスイッチは設計上の欠陥のために、通常有すべき安全性を有していなかったものと認められる。」と判示し、設計上の欠陥を認容し、被告の製造物責任を認めた。
ホ.
手術に用いられる超極細のカテーテル
東京地判平15.9.19 判時1843号118頁、判タ1159号262頁
カテーテルの欠陥について、「本件破裂箇所は、術者が、注入の際に注射器に経験上感知しうる過剰な圧力を感じているのにあえて注入を続けるなど、術者が経験上体得した通常予想される使用形態を越えて、あえて過剰な加圧でもしない限り、破損しないような強度を備えていなかったと推認される。したがって、本件カテーテルには欠陥が存在していたと認められる。」と判示し、カテーテルの設計上・製造上の欠陥を認定したものである。
ト.
磁気活水器による養殖ヒラメの死滅
徳島地判平14.10.29
磁気活水器から発生した効果により養殖ヒラメが死滅したと認められることから、磁気活水器の設計上の欠陥及び指示・警告上の欠陥を認定した。
チ.
美容機器
岡山地判平17.10.26
エステサロンにおいて美容機器を用いた施術を受けた者が受傷した事案で、指示・警告上の欠陥を認定した。
リ.
焼却炉のバックファイヤーによる火災
名古屋高判平19.7.18
焼却炉の販売時に,取扱いに特別な資格のいらない焼却炉として紹介・説明をしていたのであり,そのような者に対して,バックファイヤーの危険性があることを指示・警告すべきであったとして,指示・警告上の欠陥を認定した。
ヌ.
日焼けマシン
大阪地判平22.11.17 判時2146号80頁
日焼けマシンを、長時間・継続的に使用したことにより皮膚障害が発生した事案で、指示・警告上の欠陥を認定した。
ル.
熱風循環式乾燥装置からの出火
東京地判平21.8.7
「・・・本件火災の出火場所が本件乾燥機内部と思われること,本件証拠上,他に,放火等の本件火災の原因となった事実を窺うべき証拠がないことからすれば,本件火災は,本件乾燥装置内部が設定温度を超えて高温となり,本件乾燥装置内部のワニス(蒸散しているものを含む。),ノーメックスペーパーに引火する等したため発生したと見るのが自然かつ合理的である。・・・してみれば,本件乾燥装置の温度制御プログラムが異常を生じ,過昇温防止装置・・・が正しく作動しなかったか,若しくはその信号によりヒーター電源が遮断されなかったため本件乾燥装置内部が高温となり,その状態が相当時間継続したと考えるほかはなく,その余の原告指摘の諸点の当否を検討するまでもなく,本件乾燥装置は,通常有すべき安全性を欠いていたというべきである。」と判示し,欠陥を認定している。
ヲ.
フレキシブルメタルホースの破損
東京地判平25.9.26
地下のオイルタンクから灯油を流すために設置されたフレキシブルメタルホースが破損し、灯油が周辺の土地に流出した事故について、フレキシブルメタルホースには欠陥があると認定されたケース。
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
温風機による火災
名古屋地判平7.5.19 判タ903号138頁
製品の瑕疵を理由に製造物責任を求めたのに対し、瑕疵の立証責任について、「被告らが債務不履行又は不法行為を理由として責任を負うためには、少なくとも前提事実として本件温風機自体に瑕疵があることが認められることを要すると解すべきであり、右瑕疵の存在に関する立証責任については、通常どおり原告が負担すべきものと解される。」と判示した上、原告主張の事実を認定できないとして、請求を排斥した。
ロ.
廃食用油から軽油代替燃料(BDF)を精製する装置
東京地判平20.4.24 判時2023号77頁
本件装置により精製された軽油代替燃料自体が通常有すべき安全性を欠いているとはいえず、本件装置も欠陥があるとはいえないなどとして、請求を棄却した。
(g)
その他の製造物
1)
「欠陥」ありと解されるケース
イ.
高度さらし粉
東京地判昭62.3.3 判時1258号83頁
貨物船にて荷役作業中、甲板内に積み付けられていた高度さらし粉のドラム缶が突然爆発し、作業員6名が死亡し、貨物船および積荷等に損害が生じたというケース。
本判決は、高度さらし粉は、不純物を含有すると分解温度が著しく低下し、水の混入により水和反応を起こして発熱し、油脂類や硫黄化合物等の還元性物質と接触すると酸化発熱し、また、熱により急激に分解して爆発的に発火するだけでなく、衝撃摩擦によっても容易に反応するなど危険な特性を有する物質であるとしたうえ、製造者としては、高度さらし粉の性質、特に発火の危険性について最もよく認識していたのであるから、流通経路に関与する各業者に対し、その取扱いの万全が期されるよう、火気に接触させないこと、有機物、還元剤、酸等と接触混合させないこと、直射日光を避けること、人工熱源から遠ざけること及び高度さらし粉が急激に分解した場合災害を引き起こすおそれのあることを理解させるなどその危険性についての周知徹底を十分に尽くすべきであったのに、これをしていなかったと判示。
ロ.
スプレー式カビ取剤(カビキラー)
東京地判平3.3.28 判時1381号21頁
カビキラーの使用の度に、同剤に含まれていた化学物質を継続して吸引したため、その使用直後に、痰、咳、呼吸困難等の症状を伴う急性気管支炎に陥った。
本判決は、製造者はカビキラーの製造、販売に際し、カビキラーが人の気道に対して傷害を与えるなどの健康被害を与えるおそれのあることを予見することは可能であり、製造、販売を開始した当時、その容器として泡式のものを用いることも十分可能であったとしたうえ、本件製品の外箱に呼吸に影響を及ぼした場合の処理や慢性呼吸器傷害等の人は使用してはならないことなどに関する記載はなかったと判示。
ハ.
強化耐熱ガラス製食器の破片による受傷
奈良地判平15.10.8 判時1840号49頁
強化耐熱ガラス製食器の欠陥について、「破壊した場合の態様等について、取扱説明書等に十分な表示をしなかったことにより、その表示において通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法3条にいう欠陥があるというべきである。」と判示して、欠陥を認めた。
ニ.
ピアノ用防虫防錆剤
東京地判平16.3.23 判時1908号143頁
本件錠剤について、「本件錠剤は、水に極めて溶けやすく、吸湿性があるソルビットという蒸散安定補助剤の特性により、一般家庭でアップライトピアノ内部に吊り下げて使用されている間に、空気中の湿気を吸い、溶けて液状化するという性質を有するものであったと認められる。そして、ピアノ内部において液状化すれば、これがピアノ内部を汚損するだけでなく、ピアノの部品に付着するなどして故障の原因になったり、流れ出して床を汚損する恐れが十分あったと認められる。にもかかわらず、被告が、その設計段階において、本件錠剤の液状化を防止するための工夫等を施した形跡は窺われないから、本件錠剤は、設計上、ピアノ用防虫防錆剤が通常有すべき安全性を欠いた製品であったと認めるのが相当である。」と判示して、設計上の欠陥を認め、その上、指示警告上の欠陥があったことも認定した。
ホ.
幼児用自転車
広島地判平16.7.6 判タ1175号301頁、判時1868号101頁
本件製品については、10ミリメートルのばりが発生する可能性があるとしても、設計、製造上の欠陥があったとはいえないとしてこれを否定したが、「製造物の使用方法によっては当該製造物の特性から通常有すべき安全性を欠き、人の生命、身体又は財産を侵害する可能性があり、かつ製造者がそのような危険性を予見することが可能である場合には、製造者はその危険の内容及び被害発生を防止するための注意事項を指示・警告する義務を負い、この指示・警告を欠くことは、製造物責任法3条にいう欠陥に当たると解するのが相当である」として、欠陥を認めた。
ヘ.
カプセル入り玩具のカプセルの誤飲
鹿児島地判平20.5.20 判時2015号116頁
カプセル入り玩具のカプセルで遊んでいた乳幼児がの口腔内に同カプセルが入り喉を詰まらせた事案で、「本件カプセルは、3歳未満の幼児が玩具として使用することが通常予見される使用形態であるにもかかわらず、3歳未満の幼児の口腔内に入る危険、さらに一度口腔内にはいると除去や気道確保が困難になり、窒息を引き起こす危険を有しており、本件カプセルは設計上通常有すべき安全性を欠いていたというべきである。すると、表示上の欠陥について判断するまでもなく、本件カプセルには欠陥があったと認められる。」と判示した。
2)
「欠陥」なしと解されるケース
イ.
ラムネびん
東京地判昭60.2.26 判時1184号79頁
ラムネ6ケースを購入し、自動車で運搬した後、倉庫へ搬入するためにラムネ入りケースを手押し車の上に置いた瞬間、数本のラムネびんが破裂してその破片が左眼に衝突し、角膜裂傷等の傷害を受けたというケース。ラムネびんケースを手押し車に置いた時にラムネびんどうしが衝突し、その衝撃が複合的に作用したと認定。
ロ.
パーマ液
東京地判昭63.2.5 判時1292号98頁
被害者側の主張によると、被害者は、美容室で二浴式コールドパーマ液により髪にパーマをかけてもらった帰途、呼吸が苦しくなって歩行困難になり、その後手足のしびれ等を生じて入院し、8か月後に貧血症及び肝硬変症により死亡。本件パーマ液の施術過程、特に標準的な施術過程ではシアン化水素の発生は認められないと判示。
ハ.
ポテトチップスの袋
東京地判平7.7.24 判タ903号168頁
幼児が手にしたポテトチップスの袋の角が目に当たり、受傷したのは、袋に欠陥があったためであると主張した事案に対し、「菓子袋本来の用法とは無関係の本件事故のような事態をも予想して包装の材質・形状を工夫したものでなければ、その製品には安全性を欠いた欠陥があるというべきでもない。」と判示して、欠陥を否定した。
ニ.
化粧品
東京地判平12.5.22 判時1718号3頁
化粧品の使用と顔面の皮膚障害との因果関係を認めたものの、指示・警告上の欠陥を否定した。
ホ.
児童施設のドア
東京地判平23.2.9 判時2113号110頁
児童が吊り元側の隙間に手指を入れる行為は本来の用法ではなく、通常予見される使用形態ではないことから、通常有すべき安全性を欠くとはいえないとして欠陥を否定した。

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