製造物責任の主体-販売業者、賃貸業者

製造物責任マニュアル

製造物責任の主体-販売業者、賃貸業者

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製造物を販売する者は製造物責任を負うか。
また製造物を賃貸する者はどうか。

製造物責任法による責任主体からの除外

製造物責任法は製造物の販売業者、賃貸業者、リース業者を製造物責任法の責任主体から除外しました。これは、販売業者、賃貸業者、リース業者は製品の設計、製造に直接関与しているわけではなく、一方でこれらの者は、直接の買主、借主に対して契約上の責任を負っており、契約上の責任と別個に無過失責任である製造物責任を負わせる必要はないとの理由によるものと解されます(販売会社は製造業者ではないとの判断を示した事例として、札幌地判平14.11.22 判時1824・90。なお、輸入業者には製造物責任が認められ、販売会社には債務不履行責任が認められた事例として、東京地判平15.5.28 判時1835・94)。
製造物責任法成立に至るまでの段階では、販売業者、賃貸業者、リース業者等の供給者も製造物責任の責任主体に加えるべきであるとの意見もありました。この立場は、被害者において真の製造者等を確知できない場合に、被害者救済のためにこれらの者に対しても、責任を追及できる余地を開いておくべきであること、供給者を補完的に責任主体に含めることにより、供給者が製造業者等ないし製品の前供給者を被害者に通告する動機づけとなり、被害者救済の可能性が高くなることを主たる根拠としていましたが、この考え方は製造物責任法には採用されませんでした。

諸外国の立法例と実務

欧米諸国では、我国の製造物責任法と異なり、製造業者でない販売業者や賃貸業者が製造物責任法の主体となる余地を残しています。
(イ)
アメリカ合衆国
大多数の州において、多くの判決例は販売業者や賃貸業者が製造物責任法の主体となり得ることを肯定しています。これらの判決例が、製造物の製造に関与していない販売業者や賃貸業者に無過失責任である製造物責任法を負わせている根拠には次のようなものがあると解されます。
(a)
まず販売業者については、
1)
販売業者は、消費者への製造物の供給を業とすることによって、製造物の流通過程の一部を形成しているとみられる。
2)
製造業者が誰であるかが判明しない場合を考えると、被害者に販売業者に対する責任追及の途を残しておく必要がある。
3)
販売業者は、消費者に比して製造物の欠陥をより容易に知ることができ、かつ契約関係を通して製造業者に対し、安全な製品を製造するよう働きかけ得る立場にあるとみられる。
(b)
賃貸業者についても、
賃貸業者は、一般消費者に対し製造物を反復して引き渡し、これによって利益を得ている点で販売業者と実質的に異なるところはなく、製造物を流通過程に置いたものとみることができる。
等の根拠が考えられます。
なお、第2次不法行為法リステイトメント402A条は、不合理に危険な欠陥状態にある製造物を販売した者に対して、厳格責任たる製造物責任法を課すと定めています。
(ロ)
イギリス
イギリスの「消費者保護法」は、「供給者」という概念を置き(販売業者、賃貸業者はこれに該当します)、供給者は一定の限定された局面においてのみ製造物責任法を負うと定めてきます。具体的には、下記のとおりです。
「供給者」とは、製造物を供給した者をいい(同法2条(3))、供給者は次の場合に限って責任を負います。
(a)
損害を被った者が、供給者に対して、当該製造物に関して製造業者等1人又は数人の者を特定するように要請し、
(b)
その要請が、損害発生後、要請を行った者にとって、上記(a)のすべての者を特定することが合理的には不可能であるような期間内になされ、
(c)
その供給者が、その要請を受けた後、合理的期間内にその要請に従わず、自己に製造物を供給した者を特定しなかった場合。
(ハ)
ドイツ
ドイツ製造物責任法は、「製造業者」は製造物責任を負うと定めたうえ、「製造物の供給者」(販売業者、賃貸業者はこれに該当します)も一定の限定された局面では、「製造業者」に含まれるという定め方をしています。
具体的には、次のとおりです。
(a)
製造物の製造業者が特定できない場合には、製造物の各供給者も製造者とされます。ただし、供給者が、製造者または自己に製造物を供給した者を特定することを求める請求が到達してから1か月以内にそれらの者を被害者に対して明らかにした場合には、この供給者は製造者には含まれません(同法4条(3))。
(b)
輸入された製造物について、製造業者の名前が明らかである場合であっても、その製造物を輸入した者を特定することができない場合には、上記(a)と同様に取り扱われます(同法4条(3))。

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