製品安全対策(PS)-警告・表示

製造物責任マニュアル

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製品安全対策(PS)-警告・表示

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警告・表示についての製品安全対策はどうあるべきか。

警告・表示上の欠陥

製造物の欠陥は、(a)設計上の欠陥、(b)製造上の欠陥、(c)警告・表示上の欠陥に分類されます。
欠陥の分類のうち、警告・表示上の欠陥は、設計上の欠陥、製造上の欠陥に比較して、消費者にとって訴訟手続において主張、立証しやすいという傾向があります。したがって、製品に関する事故が起きた場合、製造業者はその警告・表示上の欠陥を問われるケースが激増することが予想されます。そうした場合に備えて、警告・表示上の欠陥があるとして製造物責任を負担しないように製品の安全対策を行う必要があります。

警告・表示上の欠陥の内容

警告・表示の欠陥は次の三つの形態に分けられます。
(イ)
警告・表示が欠けている場合
製品の安全な使用に必要な警告や指示、説明がない場合です。
(ロ)
警告が不充分な場合
製品に(a)どのような危険が潜んでいるか。(b)その危険からどのような(程度の)被害が生じるか、(c)その危険を回避するためにはどのような行動、手段をとるべきかについての警告が不充分である場合です。
(ハ)
指示、説明の不充分
製品を安全に使用するために必要な行動、手段についての指示、説明が不充分な場合です。

上記の「警告」と「指示、説明」の相違は、「警告」が、製品が潜在的に有している危険そのものに対する警告であるのに対し、「指示、説明」は、製品そのものには危険はないが、製品の使用方法によっては、危険が生じ、その危険を回避するための指示、説明である点です。

警告、表示の欠陥に対する対策

(イ)
概 説
製造業者等は、警告・表示の欠陥による製造物責任を回避するために、製品の危険性について警告し、かつ事故が発生する可能性のある方法で製品を使用しないように指示、説明する必要があります。具体的には、製造業者は上記の趣旨を満たす「取扱説明書」を作成し、かつ、必要に応じて製品に「警告ラベル」をつける必要があります。
日本では、取扱説明書、警告ラベルについての議論が不充分ですので、以下では米国での議論をもとに対策について具体的に説明します。
(ロ)
基本的考え方
警告は、あくまでも二次的な安全対策ととられるべきです。製品の安全対策は、第一に製品自体の安全性を確保することに求め、さらには安全装置を取り付ける等の方法によるべきです。そのうえで、やむを得ず製品に危険性が伴う場合に「警告」を行うべきです。
(ハ)
取扱説明書、警告ラベル作成のための会社組織上の留意点
取扱説明書、警告ラベルを作成するための会社組織上の留意点として以下のものがあげられます。
(a)
取扱説明書、警告ラベルの重要性について十分に理解し、社内の共通認識をつくり出す。特に設計部門に対し、取扱説明書や警告ラベルの重要性は、設計、製造と同等であることを認識させる。
(b)
取扱説明書、警告ラベルを作成する専門部署を設ける。
(c)
取扱説明書、警告ラベルの基本的部分については、設計者自身が作成する。
(d)
取扱説明書、警告ラベルについて製造物責任に詳しい弁護士のチェックを受ける。
(e)
取扱説明書、警告ラベルを、発行年度、改定年度が分かるように、かつ、いつでも使用可能な状態で保管する。
(f)
取扱説明書、警告ラベルが確実に消費者に届くシステムを作る。
(g)
取扱説明書、警告ラベルが確実に製品につけられていたことを立証できる記録を残す。
(h)
取扱説明書、警告ラベルの内容について、他社製品との比較、消費者からの苦情の分析等を常に行い、それらをとりこむ体制をつくる。
(ニ)
取扱説明書の作成の必要性及び留意点
(a)
必要性
製造業者が、消費者に対して、製品の潜在的な危険性を警告し、事故の発生する可能性のある方法で製品を使用しないように指示、説明する手段は、製品の取扱説明書しかありません。製品の取扱説明書は、製造物責任の有無を判断する上で極めて重要な機能をもつことになります。つまり、取扱説明書の内容が不備であったために、製造業者が製造物責任を負担することもあれば、取扱説明書の内容が適切であったために、製造業者が製造物責任を免れることがあり得るわけです(警告上の欠陥が否定された事例として、東京地判平12.5.22 判時1718号3頁)。
(b)
留意点
取扱説明書を作成するにあたっての留意点として、以下の諸点があげられます。
1)
製品についての「警告」事項は、取扱説明書の冒頭で、目立つ形で簡潔にまとめる。
製品の潜在的な危険性については、製造物責任を追及されるリスクが最も高いと言えますから、まずこの点について、冒頭で「警告」をしておく必要があります。
この「警告」の仕方については、「目立つこと」(印字の大きさ、字体、色等を工夫する)、「簡潔であること」、「分かりやすいこと」が求められています。
2)
警告サインの内容について説明しておく。
警告サインを危険度に応じて分類する必要がありますが、その内容に ついて説明しておく必要があります。
米国では、危険度の大小に応じて警告文言を分類して使用する基準があります。いくつかの基準がありますが、代表的なものは、以下のとおりです。
DANGER :
回避されなければ、死亡又は重大事故を生じるであろう切迫した危険状態を示す。
WARNING:
回避されなければ、死亡又は重傷を生じることがありうる潜在的な危険状態を示す。
CAUTION:
回避されなければ、軽傷又は中程度の傷害が発生するかもしれない潜在的な危険状態を示す。
3)
アラート・シンボル・マーク使用について、説明しておく。
アラート・シンボル・マークとは、アメリカ自動車技術会(SAE)      の基準J284aで“Safety Alert Symbol”と呼んでいるものです。この基準では、アラート・シンボル・マークは単独では使わず、警告サインとセットで用いること及び人身傷害危険に対してのみ用いると定めています。
取扱説明書では、このアラート・シンボル・マークをどのように使用するかを説明しておく必要があります。
4)
取扱説明書の製品の使用方法の説明等の各項目に警告事項を、通常の説明と区分して表示する。
5)
警告事項を独立して項立てし、目次上明記する。
6)
製品につけられた警告ラベルと関連する警告を取扱説明書に明記し、かつ、両者の関連を指示する。
7)
誤用や不適切な使用等による危険について警告し、そのような使用をしないように指示する。
8)
安全装置を無効にした場合の危険性について警告する。
9)
製品の改造、再生に伴う危険性について警告する。
10)
消費者の使用年令、知識に配慮する。
11)
消費者にとって容易に遵守できる内容にする。
12)
必要に応じて複数の言語で警告する。
(ホ)
警告ラベルの作成の必要性及び留意点
(a)
必要性
製造業者は、取扱説明書で製品についての危険性を警告、説明しますが、取扱説明書は、絶えず製品とともに存在することは期待できません。そこで、製造業者は、製品自体に製品の危険性を消費者に警告するために、「警告ラベル」をつけることが必要とされるのです。
(b)
留意点
警告ラベルを作成するにあたっての留意点として、以下の諸点があげられます。
1)
製品自体につける。
2)
警告が解りやすい簡潔な表現にする。
3)
イ.
目につきやすいところにつける。
ロ.
汚損、摩耗を受けにくい箇所につける。
ハ.
「危険」に近く、かつ、「危険を回避できる箇所」につける。
4)
イ.
文字のスタイル、大きさ、配列、文字数等を工夫してわかりやすくする
ロ.
絵表示を併用する。
ハ.
配色を工夫する。
5)
絵表示を併用し、一見して警告内容が分かるようにする。
6)
耐用年数は、製品の耐用年数と一致させる。
7)
改造、再生が可能な製品については、改造、再生後も製品本体へ「警告ラベル」が残るようにする。
8)
「安全装置を外すな」という警告ラベルも場合によっては必要となる。
9)
「警告ラベルを外すな」という警告も場合によっては必要となる。

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