紛争処理機関

製造物責任マニュアル

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紛争処理機関

集合写真
製造物責任についての紛争処理機関として、現在どのようなものがあるか。
将来的にどのような紛争処理機関が求められているか。

従前の紛争処理機関とその問題点

(イ)
従前の紛争処理機関
製品の欠陥により被害を受けた被害者が、製造業者等に対して法的責任を追及するための方法には、従前から大別して裁判上の手続と裁判外の手続がありました。
裁判上の手続とは、裁判所における手続であり、以下の二つがあります。
(a)
調停
(b)
訴訟

このうち、調停とは、当事者間での話し合いによる解決を求める裁判上の手続です。訴訟とは、原告が、裁判所に対し判決を求める手続です。訴訟においては、判決に至る前に原告と被告の間で合意により解決する場合(和解)もあります。
裁判外の従前からの紛争処理機関としては、以下のものがあります。
(a)
国民生活センター
(b)
消費生活センター
(c)
苦情処理委員会

国民生活センターは、昭和45年、国民生活センター法に基づき設立されたものです。同センターは、「国民生活の安定及び向上に寄与するため、総合的見地から国民生活に関する情報提供及び調査研究を行う」ことを目的としています。同センターにおいては、昭和50年以降、全国各地の消費生活センターに寄せられた苦情、相談から、製品に関連した人身事故及びそのおそれのあるものを危害情報として収集しています。(「危害情報システム」)
また、同センターは、昭和59年以降、コンピューターによるネットワークシステム(「消費生活情報ネットワークシステム」の整備が進められ、苦情処理等の効率化を図っています。
加えて、同センターには、平成21年度から、消費者トラブル解決のためのADR機関として「紛争解決委員会」が設置されており、製品事故に関する紛争を含む消費者紛争全般にわたって、和解の仲介・仲裁を申請することができます。
消費生活センターは、地方の消費者からの苦情相談等を目的とするものです。
同センターは、昭和40年に兵庫県で設置されて以来、各地で設置され、現在、全国約300か所の都道府県・政令指定都市のすべてに設置されています。このうち、約50か所の都道府県立センターでは、商品テスト施設を有しています。
苦情処理委員会は、都道府県などの地方自治体により設置され、消費者紛争の処理を行っていますが、製品事故に関してはあまり取り扱われてはいません。
これらの裁判外の紛争処理機関での処理手続は、当事者間での話し合いにより解決を図るものです。
(ロ)
問題点
裁判上の手続、特に訴訟手続は、被害者側に厳格な主張、立証責任を負わせているため、手続が長期化しがちで、かつ、弁護士費用等のコストが大きくなる等の問題点がありました。
裁判外の手続は、専門的知識をもった人材の確保が困難であり、事故の原因を究明し、かつ法的に妥当な解決を行うのに万全な状況にないこと等の問題点がありました。

製造物責任法の制定と新たな紛争処理機関の整備問題

従来からの裁判上及び裁判外の紛争処理機関(方法)には、前記のとおりの問題点があることから、特に少額の被害に関する紛争について処理する機関を設置すべきであるとの議論がなされてきました。
具体的には、新たな紛争処理機関として、行政型の紛争処理機関と、民間型の紛争処理機関が検討されました。
行政型の紛争処理機関とは、前記の国民生活センター、消費生活センター及び苦情処理委員会を想定するものです。
この制度の長所としては、あらゆる製品についての窓口を一本化できること、したがって、消費者側は利用しやすいことがあげられます。反面、短所としては、製品についての専門知識をもった人材の確保が困難なこと、製造物責任法他の法律についての専門的知識をもった人材の確保が困難なことが挙げられています。
次に民間型の紛争処理機関とは、例えば、業界団体ごとに設置する紛争処理機関です。この制度は、製品についての技術知識は十分であるとの長所がある反面、企業側サイドに判断が偏るおそれがあるといわれています。
以上のとおり、行政型の紛争処理機関と民間型の紛争処理機関いずれにも、短所があるため、製造物責任法の制定の段階では、新たな紛争解決機関は設置されませんでした。
但し、製造物責任法の制定時において、政府は施行時までには紛争処理機関を整備する方針を有しておりました。
そして、製造物責任法の可決に伴う衆議院の商工委員会の附帯決議では、「裁判によらない迅速公正な被害救済システムの有効性にかんがみ、裁判外の紛争処理体制を充実強化する」と決議されています。
また、製造物責任法の可決に伴う参議院の商工委員会の附帯決議では、「被害の迅速かつ簡便な救済を図るため、裁判外の紛争処理体制の整備を図ること」と決議されています。
このように、平成7年7月1日の製造物責任法の施行日までには、裁判外の紛争処理機関が整備されることになり、法律施行日の前後に次々と誕生し、現在では多くの製品分野別の紛争処理機関(製品別PLセンター)があります(住宅部品PLセンター、家電製品PLセンター、自動車製造物責任相談センター、ガス石油機器PLセンター、消費生活用製品PLセンター、化学製品PL相談センター、生活用品PLセンター、医薬品PLセンター、防災製品PLセンター、玩具PLセンター、日本化粧品工業連合会・PL相談室、プレジャーボート製品相談室、インテリアPLセンターなど)。
また、全国の各弁護士会が設立運営している紛争解決センターでは、紛争となっている分野の事件処理経験がある弁護士が仲裁人となるため、双方当事者にとって妥当な解決を図ることが可能となっています。
なお、平成21年に消費者庁が創設され、消費者安全法が施行されたことにより、製品事故に関する情報の集積はかなり進んだといえます。

求められる紛争処理機関像

(a)
被害者にとってのコストが低廉であること
(b)
その存在が消費者に周知されていること
(c)
公正中立な機関であること
(d)
製品についての専門的知識を有すること
(e)
製造物責任についての専門的知識を有すること
(f)
手続のなかで、当事者の対等の原則が貫かれていること
(g)
場合によっては、当事者の双方又は一方を一定の限度拘束する権限を有すること

今後、これらの諸点をできる限り満たす紛争処理機関が整備されると予想されます。

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