会社が所有している限り、他の者に当該株式が流出し利用されることはありません。
そこで、第三者に流出する前に(あるいは流出先の第三者から)、会社が株式を買い取ることが考えられます。
前述のとおり、会社が自社株を買うこと(自己株式の取得)は平成13年の商法改正 において一般的に許容されました。ここでは、自己株式を取得する手続の代表的な例と して、(イ)譲渡制限会社の買取りの通知による自己株式の取得の場合、(ロ)それ以外の 一般的場合、の2つをご説明します。
株主からの株式譲渡承認請求があった場合、取締役会(取締役会非設置会社においては株主総会)は請求の日から2週間以内に、この譲渡を承認するか否かの決定をし、株主に決定内容を通知します。
譲渡を承認しない場合、会社による株式買取りについて、株主総会の特別決議を受けます。この特別決議においては、株式の譲渡承認を請求した株主は議決権行使 ができず、行使することができない議決権の数は出席した株主の議決権の数に算入しないこととされています。
なお、上記2週間の通知期限内に、譲渡承認の可否についての通知をしない場合および株主の請求から40日以内に会社から株主に対して下記の買取りの通知をしない場合には、株式の譲渡について取締役会の承認があったとみなされるので、注意が必要です。
会社は、譲渡承認請求をした株主に対し、買取りの通知をします。この通知にあたって、会社は、最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額を発行済み株式 総数で割った数(1株あたりの株式の簿価)に譲渡しようとする株式の数を乗じた 金額を供託しなければなりません。そして、この供託すべき額は、最終の貸借対照 表の純資産額から配当可能利益算出のための控除項目等の合計額を控除した金額を超えてはならないとされています。もしこれを超える場合には、会社は供託をする ことができず、結局、当初株主が承認請求した株式譲渡について会社の承認があったものとみなされることになります。
会社が適法な供託を伴う買取りの通知をしたときは、買受人請求をした株主と会 社との間で当該株式の売買契約が成立します。この売買契約では、売買価格については白紙のままなので、売買契約当事者間で売買価格の決定について協議することになります。つまり、売買価格については特別決議で決議しなくてよいわけです。
この協議が整わない場合は、裁判所に価格の決定をゆだねることになります。
まず、株主総会の普通決議により決定し、市場取引または公開買付で取得する 方法があります。なお、会社法上の公開会社においては、市場取引または公開買 付の場合に限り、会社は定款で定めれば取締役会の決議で自己株式を取得することができます(会社法165条第2項)。
また、会社法制定に伴い、株主総会の授権の範囲において、取締役会(取締役 会非設置会社においては取締役)が、広く株主への通知又は公告をなし、株主か らの譲渡を募る方法が認められるようになりました(会社法156条ないし15 9条)。
なお、この取得価額の総額は、配当可能利益を超えることができません。つまり、配当可能利益のある定時総会に限って自社株取得の決議ができるわけですが、 定時総会で法定準備金の減少又は資本減少の決議をする等の方法で配当可能利益 を大きくすることもできます。また、その営業年度末に資本の欠損が生じるおそれがある場合も、自己株式を取得することができません。
特定の相手方から相対取引で自己株式を取得する場合については、株主総会の 特別決議が必要となります(会社法160条1項、309条2項2号)。特別決議の対象は、「株式の種類・総数、取得価額総額、特定の者から買い受けるときはそ の者」です。買取りの通知の場合と違い、売買価格についても特別決議の対象と なることに注意が必要です。この特別決議については、他の株主は事前に一定の 手続で自分も売主に加えるよう請求する権利があります(会社法160条2項、 3項)。もっとも、この請求権は定款で定めることにより排除することが可能です (会社法164条1項)。