事業後継者が存在する場合

事業承継マニュアル

第7章

M&Aと事業承継

集合写真
第2

事業承継におけるM&Aの活用

1

事業後継者が存在する場合

(1)
複数の後継者(兄弟姉妹など)に各々単独で会社を承継させる場合
(イ)
概要
例えば、経営者である父の会社に息子である兄弟2人が共に勤務しているケースがあります。このように事業後継者として複数の候補が考えられる場合には、将来相続発生後において当該会社の経営権を巡り、兄弟間の熾烈な争いに発展していく可能性が考えられます。順調に会社が成長していても、経営権争いが発生し会社内が分裂してしまうと事業そのものにも重大な影響を与えかねません。したがって、このような場合には、事業承継対策として複数の後継者に各々どのように事業を承継していくかという点ついて十分検討しておく必要があります。
(ロ)
方法
経営者である父が生前に予め2人の後継者のために会社を分割しておきます。相続発生後においては、2人の後継者に対し、それぞれの会社の株式を各々相続により承継させます。
(ハ)
留意点
この対策は、あくまでも経営者である父親が生前に会社分割を行っておくことが極めて重要となります。これは、主に以下の2つの理由に基づいております。
(a)
税制適格要件の充足
会社分割制度については、法人税法の規定の中で企業再編税制として「適格分割」要件が定められております。税法上の適格分割要件を充足する会社分割については、当該分割に伴う資産等の移転に対し、いわゆる含み益課税等は行わないこととされています。
この適格分割要件の中に「按分型」会社分割要件が定められております。「按分型」会社分割とは、分割法人の株主の持株比率に応じて分割新会社の株式を割り当てる会社分割をいいます。したがって、分割法人と分割新会社(分割承継法人)の株主構成及び持株比率が全く同じになる訳です。このことが意味するのは、経営者である父の相続が発生した後に、その承継した会社を各々100%単独所有の会社として兄弟2人で分割しようとする場合には、当初の株主構成・持株比率と違う株主構成・持株比率の分割新会社を設立することになり、いわゆる「按分型」ではない「非按分型」の会社分割に該当します。したがって、適格分割に基づく税法上の特例は適用されず、当該分割について含み益課税等が発生してしまうことになります。
この課税関係を回避するには、経営者である父が生前に予め会社を分割しておき、その分割した各々会社の株式をそれぞれの兄弟に相続させることが重要となる訳です。
(b)
相続時の株式承継の争い及び分割を巡る争いの発生
経営者である父の相続発生までに会社分割が行われなければ、当然、当該株式の遺産分割を巡り兄弟間で熾烈な争いになることは容易に予想され、また、仮に遺産分割が完了したとしてもその後当該会社の分割においては株主総会決議が必要となることから、再度分割を巡る争いが発生する可能性が考えられます。

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