金庫株を活用する承継

事業承継マニュアル

第4章

事業財産の承継と税

集合写真
第1

事業財産の承継にかかる課税のしくみ

7

金庫株を活用する承継

(1)
金庫株の課税方法
(イ)
発行会社について
発行会社にとっては、金庫株の売買は資本等取引とされるため、適正な時価で取引されていれば、金庫株の譲渡損益について課税されることはありません(資本積立金の増減となります)。
(ロ)
売却側について
株式を金庫株として売却した場合には、収入の種類を配当収入と株式譲渡損益に分けて考える必要があります。
〈事例〉
売買金額(適正時価)
50,000 円
取得価額
10,000 円
売却株式に対応する資本等の金額
20,000 円
(a)
個人の場合
1)
みなし配当の金額
売買金額が売却株式に対応する資本等の金額(資本金+資本積立金)を超える部分の金額がみなし配当の金額です。売主が個人の場合には、配当所得として総合課税の対象となり、配当控除の適用を受けることができます(「(3)金庫株による承継のデメリット」参照)。
50,000 円 – 20,000 円 = 30,000 円(みなし配当)
2)
株式譲渡損益の金額
売買金額から取得価額と上記みなし配当額を控除した金額が譲渡益となります(マイナスの場合は譲渡損です)。株式の譲渡損益は分離課税です。
50,000 円 – 10,000 円- 30,000 円= 10,000 円(譲渡益)
(b)
法人の場合
1)
配当収入の金額
個人の場合と同様です。
法人の場合には受取配当等の益金不算入の適用により、配当収入に対する通常の法人税の課税が軽減されます。
50,000 円 – 20,000 円 = 30,000 円
2)
株式譲渡損益の金額
個人の場合と同様です。
50、000 円 – 10、000 円- 30、000 円= 10、000 円(譲渡益)
(2)
金庫株の場合の課税での自社株の評価
(イ)
個人が売却する場合
所得税法基本通達 59-6 に定める価額が適正価額の基準となります。
詳細は章末<参考>2、(2)を参照して下さい。
(ロ)
法人が売却する場合
法人税法基本通達 9-1-13 及び 9-1-14 に定める価額が適正価額の基準となります。
詳細は<参考>2、(3)を参照して下さい。
(3)
金庫株による承継のメリット・デメリット
(イ)
金庫株による承継のメリット
流動性のない非公開の自社株を換金することができます。また、オーナーと後継者が主な株主となっている会社においては、オーナーの保有株式を金庫株として売却した場合には、相対的に後継者の持株割合が増加し、オーナーの持株を移転したのと同様の効果が得られます。この場合、後継者には資金負担が生じません。
(ロ)
金庫株による承継のデメリット
現行の税制では、株式の売却収入の多くが総合課税の対象となる配当所得となり、課税負担が大きくなる可能性があります(注)。また、買取時期や買取可能価額等に制限があり、会社の資金繰りも考慮する必要があります。
(注)
以下の条件による金庫株の売却の場合に限り、みなし配当の金額は株式等の譲渡所得等の収入金額として課税されます。
(a)
相続又は遺贈により取得した非上場株式の、その発行会社に対する譲渡であること
(b)
相続税の申告期限の翌日以後3年以内の譲渡であること
(c)
その相続又は遺贈につき相続税があること
この規定は平成 16 年 4 月 1 日以後の相続等により取得した非上場株式を同日以後に譲渡する場合に適用されます。

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