死亡事故の場合、物損事故の場合

交通事故損害賠償請求ガイド

第1

交通事故の被害者の損害賠償請求

3

損害賠償請求の内容

(3)

死亡事故の場合

(イ)
葬儀費用や仏壇・墓碑の購入費用
死亡事故の際は実務上、火葬・埋葬費用、読経・法名料、御布施・供物料、葬儀業者の費用、花代、弔問客に提供する食事代、遺族自身の葬儀参列のための交通費、49日忌までの法要費等は、現実に支出した金額のうち、130万円~170万円の範囲で賠償が認められています。なお、遺体搬送費用はこれとは別に実費が認められています。
一方、死亡した方の遺族以外の関係者の葬儀参列のための交通費、香典返し、引出物代、49日忌を超える法要費等の賠償請求は認められていません。
仏壇・墓碑の購入費用については、葬儀費用とは別に賠償を認めた裁判例と、葬儀費用に含まれるとして別個に認めない裁判例とがあります。もっとも、葬儀費用とは別に賠償が認められる死亡事故のケースでも、支出した全額は認められず、社会通念上相当と認められる金額に限られます。
(ロ)
逸失利益死亡
事故の際の逸失利益は、後遺症逸失利益と同じく、交通事故に遭わなければ、本来得られるはずだった収入であり、死亡事故によって失われた収入です。例えば、年収700万円の人が、交通事故で死亡しなければあと10年は働けるはずだったケースでは、7000万円の損失となります。
しかし、ここから2つのものが差し引かれます。一つは金利です。実際には10年間にわたって毎月その収入が支払われる訳ではなく、一括して支払いを受けるため、前もって受け取る分に対する利息分(年5%とされています)を控除されます。
もう一つは生存時に発生する生活費です。被害者が死亡事故で亡くなったことで本来生存していればかかっていた生活費が発生しなくなるのでこれが控除されます。生活費の控除率は一般的には、死亡事故の被害者が一家の支柱で、被扶養者が一名のときは40%、二名以上のときは30%、女子は30%、扶養のいない男子は50%という大まかな目安がありますが、常にその数字によるわけではありません。たとえば、年金は生活費に費消される可能性が高いとの理由で、一般の死亡事故例よりも高い割合で生活費控除がなされる場合が多くあります。
このように、交通事故死の損害賠償請求額は以下の計算式で算出されることになります。
(亡くなった方の基礎年収)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
死亡事故の逸失利益の計算は、後遺症の生じたときと同様の考え方を基礎としています(基礎年収等についての考え方は(2)「後遺症が生じた場合」の(ホ)逸失利益の項目を参照ください)。
(ハ)
慰謝料
(a)
弁護士会基準
死亡事故の際の慰謝料も死亡慰謝料として、一定の基準が存在します。日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準」によれば、死亡慰謝料は、
【一家の支柱】2600万円~3000万円
【一家の支柱に準ずる】2300万円~2600万円
【その他】2000万円~2400万円
とされています。なお、「一家の支柱」とは、その死亡事故の被害者の世帯が、主として被害者の収入によって維持されているケースをいい、「一家の支柱に準ずる」とは、例えば、家事の中心をなす主婦、養育を必要とする子を持つ母親、独身者であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養しあるいはこれらの人に仕送りをしている方などをいいます。
なお、この基準額は死亡した人1名の基準値であり、遺族固有の慰謝料(民法711条)も含んだ数値です。
(b)
任意保険基準
任意保険による死亡慰謝料は推定ですが、次のとおりです。
一家の支柱
1500万円~2000万円
高齢者(65歳以上)
1200万円~1500万円
上記以外
1100万円~1400万円
18歳未満(幼児・児童・学生)
1300万円~1600万円
(c)
自賠責保険基準
自賠責保険による死亡慰謝料は、死亡本人の慰謝料が350万円とされています。また、遺族として死亡慰謝料を請求できるのは、被害者の父母(養父母を含む)配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む)です。
死亡事故の慰謝料の額は、請求権者の数に応じて、
1人なら550万円、2人なら650万円、3人以上なら750万円とされており、被害者に被扶養者がいるケースでは、上記金額に200万円加算されます。
(4)

物損事故の場合

(イ)
自動車の買替費用
(a)
原則
自動車に損傷を受けた場合の損害賠償額は、修理費とその車両の時価(中古車価格)のいずれか低い方とされています。したがって、被害車両の修理が可能であって、しかも、中古車価格より低い場合には、原則として、修理費を賠償請求のみが認められることになります。
(b)
例外
例外的に、修理が物理的または経済的に不可能であるか、または、買替えをすることが社会通念上相当である場合には、事故時の被害車両の時価相当額と下取り代金またはスクラップ代金との差額(買替差額費)を請求できるとされています。
「経済的に修理が不可能」とは、修理費見積額が被害車両の時価を越える場合をいうものとされています。
また、「被害車両の時価」とは、原則として、被害車両と同一の車種・年式・型・同程度の仕様状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するのに要する価額によって定められます。なお、中古車価格は自動車公正取引協議会認定『中古車価格ガイドブック』(「レッドブック」)などが参考になります。
「買替えをすることが社会通念上相当である場合」とは、フレームやエンジン等車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められる場合のことをいいます。
なお、特別の事情がある場合には、買替え差額を超える修理費用の賠償が認められることがあります。特別の事情とは、被害車両と同種同等の車両を中古車市場で取得することが困難な場合や、市場価格より高い修理費を投じても修理して引き続き使用したいと希望することが社会通念上是認するに足りる相当の理由がある場合などです。
(ロ)
自動車の評価損
事故歴がある場合、一般に、自動車の評価は下落するため、その評価下落分(評価損・格落ち損)の賠償は認められる場合が多いようです。
しかし、修理の部分や程度によって評価損の賠償を否定した裁判例(修理部分は左側ドアミラー下部のみ)や、評価損の賠償を認めることは、通常は認められない車両の買替えを認めるに等しいとして、評価損の賠償を否定した裁判例もあり、必ずしも、実務の立場は統一されていません。
また、評価損の賠償額の算定方法も一定しておらず、修理費の一定割合を基準とするものが多いようですが、修理費の10%から100%まで様々です。修理の内容や修理額にもよりますが、修理費の30%程度とするものが多いようです。
(ハ)
代車費用
(a)
代車費用の賠償が認められる場合
営業や通勤、通学等のために日常的に自動車を使用していた場合であって、公共交通機関で代替することが困難な場合には、レンタカー等の代車費用の賠償が認められます。他方、被害車両を休日に使用していた程度であったような場合には、代車費用の賠償は認められません。
(b)
代車費用の賠償額
代車費用の賠償が認められる場合、原則として、被害車両と同一の車種・年式・同程度の使用状態・走行距離の車両の使用料が基準となります。ただし、被害車両が高級外車の場合は、特別な事情がない限り、国産の高級車の限度で賠償が認められるにすぎません。
賠償が認められる代車の使用期間は、客観的に修理に必要な期間とされます。破損の程度によりますが、1週間から2週間程度が通常です。しかし、必要な部品の取寄せのために修理期間が延びた場合には、この期間中の代車費用の賠償も認められます(ロールスロイスにつき80日間の代車使用が認められた例)。
買替費用の賠償が認められる場合には、通常車両を取得するのに必要な期間(1か月程度)の代車費用の賠償が認められます。
(ニ)
休車損
(a)
休車損の賠償が認められる場合
タクシーや営業用トラック等の営業用車両が、事故により修理または買替えが必要になった場合、修理または買替えに通常必要な期間中に、その車両を運行して営業をしていれば得られたであろう営業利益(休車損)の賠償を求めることができます。
(b)
休車損の算定方法
事故前数か月ないし1年程度の収入ないし売上の平均から、同じ期間のガソリン代等諸経費・支出を除いた1日当たりの利益に、修理または買替えに通常必要な期間を乗じて算出します。
(ホ)
その他
替えが必要になった場合の自動車取得税、新車の車検手数料、車庫証明費用、レッカー代、破損車両の処分費用、時価査定費用、などの損害賠償が認められています。

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