様々な関係者の責任3

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償責任のQ&A

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様々な関係者の責任3

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元請人の責任

Q:
下請人が自動車事故を起こした場合、元請人にも責任追及することはできますか?
A:
1.
元請人の責任
下請人が起こした自動車事故についての元請人の責任としては、民法上の使用者責任(民法715条、716条)と、さらに、人身事故の場合には運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)が考えられます。
2.
使用者責任
元請人は、下請人に対する注文または指図に不注意があったときは、下請人がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条、716条)。この場合、被害者は、元請人の下請人に対する注文または指図に不注意があったことを立証しなければなりません。
3.
運行供用者責任
(1)
下請人が作業を行うにあたって、元請人が配車の指図をし、随時現場作業の状況を見回り、運搬途中の監督をするなどして、下請人の運転を監督していた場合や、
(2)
下請人が元請人の指示するコース、スケジュールに従い、必ず元請人の係員の立会いと荷物の確認を受けて、荷積み・荷下しを行うなど、専ら元請人の指揮監督に服して業務に従事していた場合に、元請人の運行供用者責任を認める判例があります。
(2)
他方、元請人が下請人に自動車を売却した後も、自動車検査証の使用者や自賠責保険の契約者が元請人の名義のままとなっていたものの、下請人が代金を完済すると同時にこれらの名義を変更する予定であったこと、下請人が専ら元請人の指揮監督に服するというような関係がなく、出資・役員派遣・事務所などの営業財産の貸与・自動車保管場所の提供等の事実がなく、両者間に密接な一体性がない場合に、元請人の運行供用者責任を否定した判例があります。
(3)
要するに、下請人が元請人の従業員と同様の立場にあると見られるような関係にあるとか、出資・役員派遣・営業財産の貸与・自動車保管場所の提供等の両者間の密接な一体性があるような場合であって、下請人による自動車の運行を元請人が間接的に支配管理しているといえる場合に、元請人の運行供用者責任が認められる傾向にあるといえます。
(リ)

未成年者による交通事故と親の責任

Q:
未成年者が自動車で人身事故を起こした場合、その親が被害者に対して損害賠償責任を負うことはありますか?
A:
1.
責任能力
(1)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないとされています(民法712条)。
(2)
そして、未成年者が責任能力を備えていなかったために、その責任を負わない場合は、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(監督義務者。典型的には、親)は、監督義務を怠らなかったこと、または、監督義務を怠らなくても損害が避けられなかったことを証明しない限り、未成年者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとされています(同法714条)。
(3)
この民法714条の監督義務者責任は、未成年者の親であれば常に負う責任ではなく、未成年者に責任能力がない場合にのみ発生するものですので、注意してください。
(4)
責任能力は、何歳になれば認められるというような一定の基準が定められておらず、ケースバイケースで判断されます。大正時代の裁判例では、11歳1か月の少年につき責任能力を肯定したケース、12歳2か月の少年につき責任能力を否定したケースがあります。平成に入ってからの裁判例では、12歳3か月の少年の責任能力を肯定したケース、11歳7か月の少女の責任能力を否定したケースがあります。これらの裁判例からすると、実務上、概ね12歳前後が基準となっていることがわかります。
2.
未成年者に責任能力がある場合の親の責任
(1)
未成年者に責任能力があれば、親は一切責任を負わないというわけではなく、親(監督義務者)の監督義務違反と未成年者の起こした人身事故との間に、通常あり得ないことではないという程度の因果関係(相当因果関係)があれば、未成年者の親は民法709条の一般不法行為責任を負うとされています。
(2)
そして、親の監督義務違反が認められるためには、未成年者が事故を起こす具体的な危険性があるにもかかわらず、これを放置した結果、事故が発生した場合であることが必要とされています。
具体的には、
(a)
未成年者が危険な運転をしているのを親が現認しながら、これを制止しなかった等、監督が現実に可能な場合、
(b)
未成年者に事故歴、スピード違反・飲酒運転等の前科・補導歴があるにもかかわらず、未成年者の運転を制止する等の配慮に欠けた場合、
(c)
高熱、飲酒、過労等、運転するには適切でない未成年者の肉体的または精神的状態を認識できたにもかかわらず、その運転を制止する等の配慮に欠けた場合です。
3.
運行供用者責任
以上の民法上の損害賠償責任とは別に、自動車が親の名義で、保険契約も親が締結している場合、親もその自動車を使用していた場合、ガソリン代等の維持費を親が負担していた等の場合は、親が被害者に対して運行供用者責任を負うことになります(自動車損害賠償保障法3条)。

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