様々な関係者の責任2

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償責任のQ&A

(2)

様々な関係者の責任2

(ハ)

レンタカー会社の責任

Q:
レンタカーで事故を起こした場合、レンタカー会社は事故の相手方に対して責任を負うのでしょうか?
A:
1.
レンタカーで事故を起こした場合、一般に、レンタカー会社は「運行供用者」にあたるとされているため、生じた人身損害について運行供用者責任を負い、その損害を賠償しなければなりません(自動車損害賠償補償法3条)。
なお、物損については、同法の適用はないため、レンタカー会社が責任を負うことはないと考えられます。
2.
ただし、レンタカー会社であれば、いかなる場合であっても、人身事故について運行供用者責任を負わなければならないというわけではありません。
裁判例では、返還期限の経過の程度や、レンタカー会社が借り主からレンタカーを回収するためにどのような手段を講じたか、警察に被害届を出していたか等の事情を考慮して、もはやレンタカーが盗まれたといいうる状態になった場合には、レンタカー会社は「運行供用者」にあたらず、運行供用者責任を負わないとする傾向にあります。
3.
この点、裁判例では、返還時期を25日経過しており、レンタカー会社が警察に連絡していた場合に、借り主からの転借人が起こした事故につき、レンタカー会社の運行供用者責任が否定されています。
(ニ)

リース会社の責任

Q:
リース車両が事故を起こした場合、リース会社が事故の相手方に対して責任を負うことはありますか?
A:
1.
まず、リース車両が人身事故を起こした場合に、その損害についてリース会社が運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)を負うかどうかが問題となります。この点、通常のリース契約の場合には、リース会社は「運行供用者」にあたらず、運行供用者責任を負うことはないとされています。
2.
また、リース会社が運行供用者責任を負わない場合や、物損事故について、リース会社がその損害につき民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を負うことも、通常はありません。
3.
したがって、特段の事情のない限り通常の場合、リース車両が起こした事故につき、リース会社が責任を負うことはないといえます。
(ホ)

運転代行者による交通事故と依頼者本人の責任

Q:
運転代行業者に運転の代行を依頼したところ、運転代行業者が人身事故を起こした場合、依頼者本人も事故の相手方に対して責任を負いますか?
A:
運転代行業者が人身事故を起こした場合、一般に、依頼者本人も事故の相手方に対して運行供用者責任を負うものとされています(自動車損害賠償保障法3条)。
ただし、運転代行業者は、平成14年の道路交通法改正により、都道府県公安委員会の認可を受けること、安全運転管理者の設置、料金を営業所に掲示し利用者に説明すること、保険に加入すること等が義務づけられ、さらに、平成16年の道路交通法改正により、運転を代行するには2種免許が必要となり、タクシーと同様の法的規制が及びつつあるといえます。
そのため、今後は、タクシーの乗客がタクシー運転手の起こした事故について運行供用者責任を負わないとされているのと同様に、運転代行業者が起こした事故について依頼者本人は運行供用者責任を負わないようになるかもしれません。
(ヘ)

運転代行者の責任

Q:
運転代行業者に運転の代行を依頼したところ、運転代行業者が事故を起こし、依頼者本人が怪我をした場合、依頼者本人は運転代行業者にその責任を追及できますか?
A:
1.
契約責任
運転代行業者は依頼者に対して、自動車を安全に運転するという契約上の義務を負っています。したがって、運転代行業者が不注意により事故を起こして、依頼者が怪我を負った場合、依頼者は運転代行業者に対して安全運転義務違反により損害賠償責任を追及することができます。
2.
運行供用者責任
さらに進んで、依頼者本人が運転代行業者に対して、運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)を追及できるでしょうか。依頼者本人も事故の相手方に責任を負ういわゆる共同運行供用者でありながら、運転代行業者との関係では同法同条の「他人」といえるのかが問題となります。
この点、飲酒により安全に自動車を運転する能力、適正を欠く依頼者は、自ら自動車を運転することによる交通事故の危険を回避するために、運転代行業者に運転代行を依頼したのであるから、自動車の運行による事故の発生を防止する中心的な責任は代行業者が負うとして、依頼者が運転代行業者に運行供用者責任を追及することを認めた判例があります。
(ト)

自動車ローン会社の責任

Q:
ローンで自動車を購入し、まだローンを完済しないうちに人身事故を起こした場合、ローン会社も事故の相手方に対して責任を負いますか?
A:
1.
所有権留保
自動車を売買する場合、自動車を先にユーザーに引き渡し、販売代金を長期の分割払いで支払うローン契約がなされることはよくあります。この場合、通常、代金が支払われなくなった場合に備えて、代金が完済されるまで自動車の所有名義をローン会社にしておき、ユーザーが代金の支払を怠れば、ローン会社が自動車の所有者として自動車を処分して、未払いの残代金に充てるという特約がなされています。このように、実際にはユーザーが使用しつつ、名義上・形式上ローン会社のもとに所有権を留めておくことを所有権留保(特約)といいます。
2.
ローン会社の運行供用者責任
所有権留保がなされている自動車でユーザーが人身事故を起こした場合に、ユーザーが事故の相手方に対して運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)を負うことに争いはありません。
他方、判例上、ローン会社は事故の相手方に対して「特段の事情がない限り」運行供用者責任を負わないとされています。
この「特段の事情」とは、売主がその従業員に所有権留保特約付で自動車を売却した場合において、その自動車を売主の業務に必要不可欠な手段として使用させていた場合等、売主が自動車の運行を管理しうる立場にあり、その運行から利益を得ていたような場合をいいます。

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