消極損害の範囲5

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償の範囲のQ&A

(3)

消極損害

(ワ)

学生等の逸失利益またはアルバイトの休業損害

Q:
自動車事故の被害者が幼児・生徒・学生の場合で、死亡しまたは後遺症が残った場合、逸失利益の賠償は認められますか?また、アルバイトをしていた場合の休業損害の賠償は認められますか?
A:
1.
判例の立場
幼児・生徒・学生は現実の収入がなく、また、将来の職業や収入等につき予測が困難ですが、判例は、死亡または後遺症による逸失利益や休業損害の賠償を認めています。
3.
基礎収入
逸失利益、休業損害を算定する際の基礎収入は、原則として、賃金センサスにおける産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均賃金を基礎としますが、大学(短大)生や、大学(短大)への進学が確実視される者の場合は、賃金センサスの大学(短大)卒の平均賃金を採用する場合もあります。また、男女別平均賃金によると、男女間で最大数百万円の格差が生じることから、このような格差をなくすため、女子につき全労働者の平均賃金を基礎とすることも認められています。
4.
就労可能年数
逸失利益の算定における就労可能年数は、原則として、18歳から67歳までの49年間ですが、大学(短大)在学中の場合または大学(短大)への進学が確実な場合は、大学(短大)卒業予定年齢から67歳までの年数となります。
5.
生活費の控除割合
逸失利益の算定における生活費の控除割合は、男子は50%、女子は30%とされることが多いようですが、女子の基礎収入を全労働者平均賃金とする場合は、女子の生活費控除割合は45%とされた例があります。
6.
休業損害
(1)
休業損害は、現に労働の対価としての収入を得ていない場合には認められませんが、アルバイトの収入を得ている場合には、休業損害は認められます。この場合、アルバイトの継続を予定していた期間につき、認められることになります。
(2)
学校の卒業・就職が遅れた場合は、その期間の給料相当額の休業損害が認められます。この場合、賃金センサスの男女別大卒20歳から24歳の平均賃金を基礎とすることになります。
(カ)

外国人の逸失利益

Q:
自動車事故で外国人に怪我を負わせてしまった場合、損害賠償額はどのようにして算定するのでしょうか?
A:
1.
法律の適用
外国人に自動車で怪我を負わせた場合は、日本法が適用されるので、損害賠償額の算定も日本人の場合と全く同じです。外国人を死亡させた場合には、その遺族が損害賠償を請求しうるかどうか、および、請求しうるとした場合の賠償額については、その外国人の本国の法律および判例に従います。
2.
外国人の分類
(1)
外国人は、大きく、(イ)永住者、(ロ)一時的滞在者、(ハ)密入国者のように何ら在留資格を有しない者に分類されます。そして、(ロ)の一時的滞在者は、さらに、(a)就労可能な在留資格を有する者、(b)就労可能な在留資格を有するものの、在留期間を経過してしまっている者、(c)就労可能な在留資格を有しない者、(d)就労可能な在留資格を有しない上に、在留期間を経過してしまっている者に分類することができます。
(2)
治療費等の現実に支出した、または、支出を要する積極損害については、実費相当額が損害となるため、外国人の分類によって損害額の算定に差異が生ずることはありません。
(3)
他方、逸失利益や休業損害については、日本国において就労可能であるかどうか、就労可能であるとした場合のその期間によって、それぞれ差異が生ずるため、外国人の分類によって損害額の算定が異なります。
3.
外国人の逸失利益、休業損害
(1)
永住者については、日本人と全く同様に損害額を算定します。
(2)
就労可能な在留資格を有する外国人については、原則として、日本で得ていた収入を基礎として算定しますが、在留期間経過後は、在留期間の更新の可能性を考慮して、日本国における就労可能期間を定め、就労可能期間経過後は、本国における賃金水準を基礎として算定することになります。
(3)
就労可能な在留資格を有していない外国人であって、実際に日本で就労していない外国人については、本国の賃金センサスや収入により算定することになります。
(4)
就労可能な在留資格を有しない外国人であって、不法に日本で就労していた外国人(もともと就労資格を有しない場合、在留期間の経過により就労資格が失われた場合)については、就労内容が公序良俗に反しなければ、逸失利益は認められますが、その算定方法については争いがあります。実務上、死亡後または症状固定後3年程度は日本国における実収入を基礎に算定し、その後は本国における収入額や賃金センサスを基礎に算定される傾向にあるようです。
(5)
密入国者についても、(4) と同様に考えることになると思われます。
(6)
結局、日本国において在留期間が更新され、就労資格が継続することが予測される場合には、日本国での収入額を基礎として算定し、もともと就労資格がない場合や就労資格の継続が見込めない場合には、本国あるいは日本国からの出国先での収入額や賃金センサスにより算定されるということです。
4.
慰謝料
慰謝料額の算定については、日本の所得水準、物価水準、貨幣価値等を考慮して定額化されていますが、外国人にもそのまま適用すべきかは問題となっています。

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