損益相殺の範囲2

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償の範囲のQ&A

(6)

損益相殺

(ニ)

遺族扶助料・遺族年金

Q:
自動車事故の被害者が死亡した場合で、被害者が国家公務員であった場合に、遺族扶助料や遺族年金は損害賠償額から控除されますか?
A:
1.
恩給と遺族扶助料の損益相殺
国家公務員は、退職後、恩給が支給されますが、国家公務員が死亡した場合、その遺族に対して遺族扶助料が支給されます。
そして、被害者の遺族は、事故がなければ被害者本人が得るはずであった恩給相当額について逸失利益として加害者に損害賠償を請求できますが、実務上、その損害賠償額から遺族に支給される扶助料額が控除される取扱いとなっています。
2.
恩給と退職手当・遺族年金・遺族補償金
国家公務員が死亡した場合に支給される退職手当、遺族年金、遺族補償金については、配偶者と子が遺族のときは、これらの受給権者は配偶者と定められていることから、これらの受給額は配偶者の損害賠償額からのみ控除(損益相殺)すべきであり、子の損害賠償額からは控除すべきでないとした判例があります。
3.
将来の給付と損益相殺
支給を受けることが確定した遺族共済年金については、損害賠償額から控除し、支給を受けることが確定していない将来の遺族共済年金については損害賠償額から控除しないとした裁判例があります。
4.
損益相殺の対象
以上による損益相殺の対象は恩給の逸失利益のみであり、その他の逸失利益を対象として損益相殺することはできません。たとえば、元国家公務員であり恩給の受給権者であった者が、民間企業に再就職し、民間企業における給与の逸失利益についてのみ損害賠償を請求している場合には、遺族扶助料等による損益相殺は認められません。
(ホ)

搭乗者傷害保険金

Q:
自動車に同乗中に事故に遭ったため、搭乗者傷害保険金を受給した場合、搭乗者傷害保険金相当額は加害者の損害賠償額から控除されるのですか?
A:
1.
搭乗者傷害保険金相当額を加害者の損害賠償額から全額控除した裁判例、
2.
搭乗者傷害保険金を受給したことが、慰謝料の算定にあたって斟酌され、結果的に加害者の損害賠償額をいくらか減額した裁判例、
3.
搭乗者傷害保険金を加害者の損害賠償額から一切控除しなかった裁判例、
があり、実務の取扱いは統一されていません。したがって、具体的な事例においては、裁判所の判断に委ねるほかないということになります。
加害者にとっては、被害者が搭乗者傷害給付金の支給を受けていれば、損害賠償額が減額されるかもしれないため、被害者が搭乗者傷害給付金の支給を受けたかどうかを確認しておくべきでしょう。

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