刑事責任3

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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刑事責任

(ホ)

過労、病気、薬物の影響下にある場合の運転と道路交通法上の責任

Q:
過労や病気、薬物の影響で正常な運転ができない状態で自動車を運転していたため、または、させていたため、自動車事故を起こした場合,道路交通法上どのような刑事責任を負いますか?
A:
1.
自ら運転した者の責任
(1)
麻薬、大麻、あへん、覚せい剤その他法令で定める薬物の影響により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転した場合、1か月以上5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(道路交通法117条の2第3号)。
(2)
過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で自動車を運転した場合、1か月以上3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(同法117条の2の2第5号)。
2.
運転をさせた者の責任
(1)
自動車の使用者、安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者が、その業務に関し、自動車の運転者に対し、上記1 (1) の状態で自動車を運転することを命じ、または、容認した場合、1か月以上5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(同法117条の2第5号)。
(2)
上記 (1) の者が、その業務に関し、自動車の運転者に対し、上記1 (2) の状態で自動車を運転することを命じ、または、容認した場合、1か月以上3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(同法117条の2の2第7号)。
(ヘ)

ひき逃げ

Q:
いわゆるひき逃げをした場合、どのような刑事責任を負うことになりますか?
A:
1.
交通事故を起こした運転者は、直ちに車両の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(道路交通法72条1項)。
2.
そして、交通事故を起こした運転者が、その交通事故により死傷者が出た場合に、これらの義務を怠った場合(いわゆるひき逃げ)、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(同法72条)。
3.
この刑事責任が成立するためには、死傷者が出たことを確定的に認識するまでの必要はなく、死傷者が出たかもしれないという程度の認識(未必的認識といいます)があれば足りるとされています。
4.
また、運転者独自の判断で救護の必要はないとして被害者を放置して立ち去った場合、被害者が負傷していないことが明らかであるとか、負傷が軽微であるため被害者自身が医師の診察を受けることを拒否したような場合を除き、この刑事責任を免れません。
(ト)

酒酔い、酒気帯び、過労等運転により人身事故を起こした場合の責任

Q:
酒酔い運転、酒気帯び運転、過労運転等により自動車事故を起こし、他人を死傷させてしまった場合、どのような刑罰が科せられることになりますか?
A:
1.
犯罪の成立
酒酔い運転により自動車事故を起こし、他人を負傷させてしまった場合、危険運転致傷罪(刑法208条の2第1項)または自動車運転致傷罪(同法211条2項)、および、道路交通法違反(酒酔い運転)の罪(道路交通法117条の2第1号)の2罪が成立することになります。
2.
刑罰
(1)
これらの罪単独で成立した場合の刑罰(法定刑)は、
危険運転致傷罪が1年以上20年以下の有期懲役
自動車運転致傷罪が1か月以上7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
酒酔い運転の罪が1か月以上5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
(2)
そして、危険運転致傷罪または自動車運転致傷罪と酒酔い運転の罪は併合罪関係にあるものとされます(刑法45条)。
(3)
併合罪関係にある2個以上の罪について有期懲役に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできないものとされます(同法47条)。
(4)
また、併合罪関係にある2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断されます(同法48条2項)。
(5)
したがって、
危険運転致傷罪と酒酔い運転の罪について有期懲役に処するときは、1か月以上25年以下の範囲内
自動車運転致傷罪と酒酔い運転の罪について有期懲役に処するときは、1か月以上10年6か月以下の範囲内
で処せられることになります。
(6)
また、
危険運転致傷罪と酒酔い運転の罪について罰金に処するときは、100万円以下で、
自動車運転致傷罪と酒酔い運転の罪について罰金に処するときは、200万円以下で、
処せられることになります。
(7)
酒気帯び運転や過労運転の場合も、同様の方法で刑罰(の範囲)を決することになります。

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