示談2

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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紛争の解決方法Q&A

(2)

示談

(ニ)

示談書作成上の注意点

Q:
示談書を作成する際に注意すべき事項について教えてください。
A:
1.
示談書作成の必要性
示談自体は契約の一種ですから、口約束だけでも成立しますが、後日争いが生じたときに備えて示談書として書面に残しておく必要があります。この示談書の書式には決まったものはありません。実際上は、保険会社の書式に従った示談書を作成することが多いでしょうが、そこに記載された内容が示談の趣旨に沿うものであるかどうかを十分に確認しなければなりません。
2.
示談書の必要事項
示談書には最低限、次の事項を明記しておく必要があります。
(1)
当事者(示談金の請求権者と支払義務者)の住所、氏名
示談交渉をした者だけではなく、損害賠償請求権を有する者と損害賠償義務を負担する者をすべて記載しておくべきです。記載されていない者には示談の効力が及ばないことになるからです。例えば、示談書には運転者のみを損害賠償義務者と記載していたために、その運転者の使用者が後で被告として訴えられ、損害賠償を命じられることがあります。この場合、逆に、被害者はその使用者に対し、示談書に記載のとおりの示談金の支払いを請求することはできないことになります。
(2)
自動車事故の発生日時、場所
(3)
加害車両を特定するための情報(登録番号等)
(4)
被害状況(死亡・傷害の区別、傷害の部位、程度等)
(5)
示談内容(示談金額、支払日、支払方法等)
(6)
示談書作成年月日
3.
違約金条項
示談書には、加害者側が示談書に定めた支払期限までに支払わない場合には、年率○%の遅延損害金を支払わなければならない旨の違約金条項を定めることが多いです。
4.
清算条項
示談書、特に保険会社の示談書書式には、「本件事故については、示談金の支払いにより、当事者間で示談により円満解決したこと及び本示談書に記載したもの以外、当事者間に何ら債権債務のないことを相互に確認する。」という趣旨の清算条項が書かれるのが通常です。
この清算条項により、示談成立後は、示談金の追加請求が認められなくなるのが原則です。
例外的に、後遺症の発現等被害者の症状が示談当時に予期された以上に悪化する等の著しい事情の変更があった場合には、清算条項にかかわらず、損害賠償の追加請求が認められることがあります。
(ホ)

示談の効力を争う方法

Q:
いったん成立した示談の効力を争う方法について教えてください。
A:
1.
示談の無効
(1)
示談の内容が公序良俗に反する場合(民法90条)
例えば、被害者側の無知に乗じて、被害の程度に比べて、著しく低い額で示談を成立させたような場合には、このような示談は無効とされるでしょう。
(2)
示談の一方の当事者が真意でないことを知りながら示談をし、その相手方もその真意を知り、または、知ることができた場合(民法93条)
例えば、警察から示談書の提出を求められ、その時点の被害者の症状に鑑みて一応の金額を記入した示談書を作成したような場合には、相手方もこのような示談書を作成した事情は知りうるでしょうから、この示談書は無効とされるでしょう。
(3)
示談の当事者が通謀して虚偽の示談を成立させた場合(民法94条)
例えば、真に示談を成立させるつもりはなく、ただ保険金の請求手続に利用するためや、捜査機関に提出するためという理由で示談書を作成するような場合です。
(4)
示談を成立させるにつき重大な錯誤があった場合(民法95条)
例えば、被害者の傷害が全治することを前提に示談を成立させた後に、後遺症が発現したり、死亡した場合に、この示談は錯誤により無効とされることがあります。
2.
示談の取消し
相手方から脅迫されたり、だまされて示談を成立させられた場合には、その示談を取り消すことができます(民法96条)。
(ヘ)

損害賠償金の仮払いまたは内払い

Q:
自動車事故の当事者間で損害賠償につき争いが決着する前に、被害者が損害賠償金の仮払い、または、内払いを受けることはできませんか?
A:
1.
仮渡金・内払
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)会社から、死亡事故の場合で290万円、傷害事故の場合、程度に応じて40万円、20万円、5万円の仮渡金の支払を受けられる制度があります。
また、傷害による損害に限り、自賠責保険会社に対し、治療費等の既に発生した損害について、保険金ないし損害賠償額の内払を受けられる制度もあります。
2.
仮払い仮処分
以上の方法によっては十分でなく、また、加害者からも内払を受けられないときに利用されるのが、加害者等損害賠償責任を負担する者または保険会社に対する損害賠償金または保険金の「仮払い仮処分」です(民事保全法23条2項)。これは、訴訟によっていたのでは、時間がかかりすぎてしまうので、訴訟で決着がつくまでの間、訴訟よりも簡易迅速な手続で、目的を仮に達成しようとする手続です。これにより訴訟よりもかなり短期間で一応の決着がつくことになります。仮処分決定が出され、相手方が決定に従えば目的は達成されますし、相手方が決定に従わなければ、強制執行を申し立てて、目的を達成することができます。実務上は、裁判所の勧告により和解が成立することがよくあります。

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