様々な関係者の責任5

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

2

損害賠償責任のQ&A

(2)

様々な関係者の責任5

(ヲ)

自動車事故と医療過誤が競合する場合

Q:
自動車で追突されて怪我をしたため、病院に運ばれて医師の治療を受けたところ、担当医師の医療過誤により症状が悪化した場合、被害者は自動車事故の加害者と担当医師に対して損害賠償を請求することはできますか?
A:
1.
共同不法行為責任
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うとされています(共同不法行為責任。民法719条1項)。
本件のような場合、自動車事故の加害者と担当医師に共同不法行為責任が成立し、両者は被害者に対し、連帯して損害を賠償する責任を負います。
この連帯責任とは、生じた損害に対する責任の割合が共同不法行為者間で異なる場合であっても、被害者は両者のいずれかに対して全額の請求をすることができるということです。
したがって、例えば、損害額が100万円という場合で、共同不法行為者の一方(A)が1割の責任、他方(B)が9割の責任というような場合であっても、被害者はAに対して100万円全額の請求をすることができますし、または、Aに対して70万円、Bに対して30万円を請求することもできます。そして、自分の責任割合を超えて賠償した共同不法行為者の一方は、他方に対して自分の責任割合を超える部分を請求することができます(共同不法行為者間の求償の問題)。
2.
被害者から損害全額の賠償を請求された共同不法行為者の一方は、自分の責任割合に応じた金額だけを支払えばよいかどうかが議論されますが、判例はこれを否定しました。したがって、例えば、自分の責任割合が3割だったとしても、被害者から損害全額の請求をされれば、あくまで全額を支払わなければなりません。
(ワ)

共同不法行為者間の求償

Q:
私は、友人を乗せて自動車を運転中、私の不注意により他の自動車と衝突し、友人に怪我を負わせてしまったので、友人の損害を全額賠償しました。ところが、この事故の原因は私だけではなく、他の自動車の運転者の不注意でもあるので、私は、友人に支払った賠償金をその運転者に支払うよう請求することはできますか?
A:
1.
共同不法行為
(1)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うとされています(共同不法行為責任。民法719条1項)。
(2)
そして、共同不法行為責任の成立要件は、複数人の意図的な行為または不注意による行為が客観的にみて一体となって損害を生じさせたといえることで足ります。全員で共謀または共同して損害を生じさせることまでは必要ありません。
(3)
共同不法行為者は、それぞれの責任割合にかかわらず、それぞれ損害の全額を賠償する義務を負います。また、共同不法行為者の一方に損害の3割を請求し、他方に残り7割を請求するということもできます。そして、共同不法行為者の一方が損害の全部を賠償した場合、被害者はもはや誰に対しても損害賠償を請求することができなくなり、一部のみ賠償した場合は、残額についてのみ共同不法行為者のいずれかに賠償を請求することができます。
(4)
そして、この共同不法行為責任は、直接の加害者同士だけに限らず、直接の加害者と運行供用者責任(自動車損害賠償補償法3条)が成立する運行供用者や使用者責任(民法715条1項)が成立する使用者との間にも成立します。
2.
共同不法行為者間の求償
(1)
共同不法行為者の一方が損害の全額を賠償したときは、自分の責任割合を超える部分については、他方に対して求償することができます。例えば、損害額が100万円である場合で、一方(A)が7割の、他方(B)が3割の責任割合を負担するときに、Aが損害の全額を賠償したときは、AはBに対して30万円を求償することができることになります。
(2)
また、共同不法行為者の一方が損害の一部のみを賠償したときは、賠償した金額が自分の責任割合を超えている場合にのみ、その超える部分を他方に対して求償することができます。例えば、損害額が100万円である場合で、一方(A)が7割の、他方(B)が3割の責任割合を負担するときに、Aが50万円しか賠償しないときは、Bに対して求償することはできません。Aが80万円を賠償したときは、AはBに対して10万円を求償することができます。
(3)
使用者責任が成立し、使用者が損害を全額賠償した場合、使用者は直接加害行為をした従業員に対して求償することができますが、この場合に求償できる範囲は、事業の性格、規模、施設の状況、従業員の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他の諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度とされています。したがって、使用者から従業員に対する求償は、かなり限定的にしか認められません。

目次