運用供用者責任の要件

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償責任Q&A1

(1)

運行供用者責任

(イ)

運行供用者責任とは

Q:
運行供用者責任とは何ですか?
A:
1.
運行供用者責任とは
自動車を自己のために運行の用に供する者(運行供用者)は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償しなければなりません(自動車損害賠償保障法3条)。これを運行供用者責任といいます。
ただし、
(1)
自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、
(2)
被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、ならびに、
(3)
自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明すれば、この責任を免れることができます。
これは、人身事故について、加害者は、上記 (1) から (3) の全てを立証しない限り、事故によって被害者に生じた損害を賠償しなければならないとするもので、被害者救済の観点から、被害者の立証の負担を軽くしたものです。
2.
「運行供用者」とは
「運行供用者」とは、自動車の運行を支配し、運行による利益を享受する者をいいます。すなわち、自動車を自ら運転し、自動車を直接支配する場合のみならず、他人に運転させて、他人の運転を通じて自動車を間接的に支配する場合を含みます。
(ロ)

運行供用者責任の要件

Q:
運行供用者責任の要件である「『運行によって』人の生命または身体を害した」とはどのような場合ですか?
A:
1.
「運行」とは
自動車損害賠償保障法上、「運行」とは、「人または物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」とされています(同法2条2項)。
2.
「当該装置」とは
「当該装置」は、
(1)
走行装置としての原動機、
(2)
ドア等の自動車を構成する各部分、
(3)
特殊自動車の装置、例えば、クレーン、フォーク、ショベル、ミキサー等が含まれるとされています。
3.
「用い方に従い用いる」とは
学説上争いはありますが、判例上、上記の「装置」の全部または一部をその目的に従って操作することをいうものとされています。したがって、原動機による移動走行のみならず、停車中のドアの開閉やクレーンの操作なども「用い方に従い用いる」にあたることとなります。
「運行によって人の生命または身体を害した」とは
学説上争いがありますが、上記のような「運行」による、「人の生命または身体」に対する被害の発生が通常あり得ないことではないという程度の因果関係(相当因果関係)があることをいうとされています(判例)。
4.
「運行によって他人の生命または身体を害した」にあたるか否かの具体例
(1)
積載していた荷物が、走行中に落下して、歩行者に命中した場合について、「運行によって他人の生命または身体を害した」にあたるとした裁判例があります。
(2)
エンジン故障のために、ロープで牽引されている貨物自動車の荷台から8歳の児童が飛び降りて死亡した事故について、「運行によって他人の生命または身体を害した」にあたるとした判例があります。
(3)
クレーンを操縦中に、クレーンが高圧電線に接触したため、作業員が感電死した事故について、「運行によって他人の生命または身体を害した」にあたるとした裁判例があります。
(4)
貨物自動車が駐車した状態で、フォークリフトによる荷降ろし作業を開始したところ、走行中の自動車がフォークリフトのフォークに衝突した事故について、貨物自動車の「運行によって他人の生命または身体を害した」にあたらないとした判例があります。

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