運転供用者が複数いる場合1

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

2

損害賠償責任Q&A2

(1)

運行供用者責任

(ハ)

保有者とは

Q:
自動車損害賠償保障法における、「保有者」とはどういう人のことをいいますか?
A:
「保有者」とは、「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう」とされています(自動車損害賠償保障法2条3項)。
「使用する権利」とは、所有権、賃貸借、使用貸借その他いかなる法律関係であるかを問わず、法律上の正当な使用権をいいます。
保有者が運行供用者責任を負う場合、その保有者の損害は自動車損害賠償責任保険によって填補されます(同法11条1項)。
(ニ)

運転助手の責任

Q:
運転助手は、自動車の助手席に乗車中、運転者が交通事故を起こした場合、事故の相手方に損害賠償責任を負うことはありますか?
A:
1.
運転助手とは
運転助手とは、自動車の助手席に同乗して、安全確認等により運転手の運転を補助する者をいいます。自動車損害賠償保障法上、このような者も「運転者」とされています(同法2条4項)。
2.
運転助手が責任を負う場合
運転助手は運行供用者にはあたりませんので、運行供用者責任(同法3条)を負うことはありませんが、運転助手が安全確認を怠る等、事故の発生および被害の発生につき運転助手にも過失があれば、民法上の一般不法行為責任(民法709条)に基づく損害賠償責任を負うことになります。運転助手が一般不法行為責任を負うかどうかは、事案ごとに個別具体的事情によって判断されることになります。
3.
自動車損害賠償責任保険は、保有者の運行供用者責任が発生した場合には、保有者のみならず、運転者にも適用されます(自動車損害賠償保障法11条1項)。したがって、運転助手が被害者に対して損害賠償を支払った限度で、保険会社に対して保険金の支払いを請求することができます(同法15条)。
(ホ)

運行供用者が複数いる場合の責任関係の3類型

Q:
イ 自分(A)の自動車を友人(B)に運転させていたところ、その友人(B)が事故を起こして、同乗していた自分(A)が怪我をした場合、ロ 会社(B)所有の自動車を取締役(A)が従業員(C)に運転させていたところ、その従業員(C)が事故を起こして、同乗していた取締役(A)が怪我をした場合、ハ 父親(B)所有の自動車を友人(C)に運転させていたところ、その友人(C)が事故を起こして、同乗していた自分(A)が怪我を負った場合、AはBに対して((3)の場合はCに対しても)責任を追及することはできますか?
A:
1.
運行供用者責任
自分のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償しなければなりません(自動車損害賠償保障法3条)。
そして、「他人」とは、運行供用者、運転者、運転補助者以外の者をいいます。これらの者は自ら事故を生じさせた者であるため、損害賠償請求権を取得できる立場にはないからです。したがって、運行供用者、運転者、運転補助者に該当しなければ、これらの者の同乗の家族、好意で(無償で)同乗させてもらった人、会社の使用人も「他人」といえることになります。
2.
共同運行供用者
運行供用者が複数いる場合の運行供用者を「共同運行供用者」といいます。この共同運行供用者は、当然に「他人」にはあたらないことになりそうです。しかし、共同運行供用者相互の間では、一方の共同運行供用者(A)が他の共同運行供用者(B)との関係では「他人」であるとして、Bに対して運行供用者責任を追及できないかという問題があります。以下のように3類型に分けて考察されますが、要は、共同運行供用者間で自動車の運行に対する支配が同等の場合には「他人」性を否定し、責任を追及する側よりも追及される側の方が自動車の運行に対する支配が直接的・顕在的・具体的である場合には「他人」性を肯定する傾向にあります。
(1)
同乗型
共同運行供用者が2人いる場合、2人ともが事故を起こした自動車に同乗している場合です。この場合に、一方(A)が他方(B)に対して運行供用者責任を追及できるかにつき、判例は、「BがAの指示を守らなかった等の特段の事情がある場合でない限り、BにとってAは他人とはいえない」として、否定しています。
(2)
非同乗型
共同運行共用者が2人いる場合に、1人が事故を起こした自動車に同乗していない場合です。例えば、会社所有の自動車を会社の取締役が、会社の従業員に運転させていたところ、その従業員が運転を誤って事故を起こし、その取締役が怪我をした場合、会社とその取締役が共同運行共用者になります。この場合に、取締役(A)が会社(B)に対して運行共用者責任を追及できるかにつき、判例は、「Bによる運行支配が間接的、潜在的、抽象的であるのに対し、Aによる運行支配ははるかに直接的、顕在的、具体的である」として、これを否定しています。
(3)
混在型
共同運行供用者が3人いる場合に、そのうちの2人は事故を起こした自動車に同乗していますが、残りの1人は同乗していない場合です。例えば、Aの父であるBが所有する自動車を、AがCに運転させていたところ、Cが事故を起こしてAが怪我をした場合です。この場合、AのBに対する関係では上記(1)と、AのCに対する関係では上記(2)と同様の結論となります。

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