買収をしたら何ができるか

企業買収と企業防衛マニュアル

第2章

敵対的買収

集合写真
第1

企業買収

買収をしたら何ができるか

(1)
相対的優位性
会社を買収するという行為は多数の株式を取得する行為ですから、取得した株式数に応じて会社支配の程度が異なります。100%の株式を取得すれば、その会社の完全な支配権を取得したことになりますが、通常は買収者が取得した株式の割合に応じて、他の株主と比較して相対的に優位な立場に立つことになるにすぎません。
(2)
3分の1という割合の意味
買収者が全体の3分の1を超える株式を取得したかどうかが話題になりますが、これは買収者を迎え撃つ会社が、買収者以外の株主の議決権を全て結集しても、全体の3分の2以上の多数を取得することができなくなるという点が重要だからです。
会社法は、会社が合併、事業譲渡、定款変更などの重要な行為をするときは、株主総会の特別決議で賛成してもらうことが必要であると規定しています。これらの行為が成立するためには、全ての株式が議決権のある株式で、全ての株主が株主総会に出席したことを前提にしますと、全株式の3分の2以上の株式を有する株主の賛成が必要となります。
例えば、買収に遭遇して苦しんでいる会社は、味方となる株主の有する株式数を増やして買収者の持株割合を相対的に低下させたいと考えます。そのためには懇意の他社を吸収合併して、その会社の株主に自社の株式を交付することによって自社の全体の株式数を増加させるという方法がありますが、そうしようと思っても、会社側が全体の3分の2以上の議決権を取りまとめていませんから、株主総会で合併の提案が否決されることが自明になるのです。
買収者が3分の1を超える株式を取得するということは、会社に大型の勝手をさせないというハドメをかける意味があります。
(3)
過半数という割合の意味
さらに進んで、買収者の株式保有割合が2分の1を超えれば、すなわち買収者が過半数の株式を取得すれば、株主総会の普通決議(議決権による単純多数決)で決められる事項を思うまま支配することができるようになります。
この事項の代表的なものが取締役の選任で、買収者は自派の者を取締役に送り込むことができるようになります。従来の取締役はいずれ任期満了で退任しますし、そのときに再選してもらえなければ辞めてゆくだけです。
(4)
友好的買収への転化
買収がある程度進みますと、買収会社と対象会社がいつまでも対立していないで、話し合って業務などの提携をする段階に進む余地が出てきます。
対象会社にとって、完全に買収されるよりは買収会社と提携する方が合理的なことがありますし、買収会社にとっても、特に徹底的な買収に対して従業員や取引先のアレルギーが強い場合には、余計に資本を投下して買収するよりも、提携関係を築く方が良い場合があるからです。
提携の方法は多々あります。取引的な提携、株式発行も絡めた提携以外にも、後述する合併、株式交換、共同株式移転などの企業組織再編行為も利用されます。最初は敵対的買収であったものが、友好的な買収に転化するわけです。

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