会社は誰のものか

企業買収と企業防衛マニュアル

第2章

敵対的買収

集合写真
第2

企業防衛

会社は誰のものか

(1)
買収者と防衛者の利害衝突
敵対的買収は、対象会社の経営者の同意を得ていない買収ですから、対象会社の経営者が防衛を考える理由は単純なことと思われます。要するに、会社を勝手に支配しようという勢力が現れたのですから、現に経営にタッチしている者が抵抗するのは当然ということでしょう。となれば問題は、防衛が理由のあるものかどうかということになります。
対象会社の経営者は「オレの会社を乗っ取るのか」と怒ります。これに対して買収者の側は「会社を私物化するな」と叫びます。その結果として、「会社は誰のものか」という議論に花が咲くのです。
(2)
「会社は誰のものか」という質問の意味
「会社は誰のものか」という問いかけに対して答えを探すときは、質問自体の意味を確認することが必要です。
妻が夫に対して「貴男は私のもの」というのと同じような情緒的な質問であれば、「会社は誰のものか」はそれぞれの人によって答えは異なります。その場合に「私のもの」であるといったとしても、妻が夫を所有しているということにはなりません。先生が「私のクラスの生徒」というのも同じで、決して先生が生徒を所有しているということを意味していません。そういう場合にも「私のもの」という表現を使うのです。
問題は「会社は誰のものか」という問いかけが、「会社を法律的な意味で所有している者は誰か」という問いかけである場合です。もし、ある人がある物の所有者であるならば、その人は、その物を売って対価を自分で取得することができなければおかしいでしょう。会社を売って対価を取得できる人は誰ですか? 社長は、会社を売って代金を着服することができますか? 従業員は会社を売って代金を持って帰れますか? 答えは否です。
(3)
会社は株主のもの
株主はどうでしょうか。株主は自分が保有している株式を売って、代金を堂々と自分のものにすることができます。会社の100%の株式を所有している株主ならば、それをまとめて誰かに売って、代金を自分のものにすることができます。買主は売主の地位を承継して会社の次のオーナーになります。この意味では、会社は株主のものであることは明白です。
通常は会社が発行している全ての株式のうちの一部分の株式が譲渡されるだけですから、会社全体が売られたことになりません。しかし、株主全体で会社を所有する構造になっているからそうなるのであって、会社の何分の一かが売却されたことに変わりはありません。会社法は、株主が会社を分有しているという考え方を基礎においています。
もっとも、会社は株主のものであるからといって、株主は何でもできるということにはなりません。会社をめぐる取締役、従業員、債権者、取引先、他の株主、周辺地域などと適切に協調して営業活動を展開してゆくことが求められます。

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